カフェ内の小さな商店街「街箱」 シャッター街を盛り上げる新たな取り組みとは
名古屋市に2022年1月にオープンしたばかりのカフェ「街と珈琲」。
一見普通のオシャレなカフェなのですが、店の奥には大きな棚が設置されていて、お菓子や野菜、アクセサリーなど様々なものが入っているたくさんの「箱」が置かれています。その箱は「街箱」と名付けられた小さな箱のお店でした。
街箱を集めて、小さな商店街を作った店主の思いと集う人たちについて取材しました。
カフェの壁に箱を取り付けた店主の思い
大きな棚に箱を設置した、店主の服部浩太郎(はっとり・こうたろう)さん(43歳)。箱の用途について説明します。
服部さん「これは『街箱』と言って、小さな商店街になっています。たくさんの夢が詰まった箱だと思います」
棚の正体は「小さな商店街・街箱」。箱1つを毎月定額で貸し出し、利用者は箱の中に好きなものを置いて販売することができます。
43個あったお店「街箱」は、オープンして1か月半で全て埋まりました。
店を訪れたお客さんは、棚にある街箱から好きな商品を選び、その場で料金を支払い、コーヒーを飲みながらゆったり過ごします。
服部さんは、生まれも育ちも呼続(よびつぎ)というエリア。幼い頃から人とのつながりが生まれる地元の商店街が大好きで、よく通っていました。しかし、大型ショッピングセンターの誕生などで多くの店が閉店。今はシャッター街となってしまいました。もう一度、大好きだった街の賑わいを取り戻したいという思いから、利用者とお客をつなぐ小さな箱の商店街「街箱」を作ったのです。
服部さん「この街箱を使っている人が、お店をもつことを経験することで、大変だけど楽しいことなんだ、ということを実感してほしいと思っています。」
一体どんな人が利用しているのでしょうか?
箱の中に小さなパン屋を開いた理由
街箱にパンの模型を置いている、尾関章子(おぜき・しょうこ)さん。街を盛り上げたいと話す服部さんの思いに共感し、街箱を利用しています。
10年前までパン教室の講師をしていましたが、今は自宅でパンを作り、金曜と土曜の週2日、そのまま自宅で販売。そして街箱の利用料を払うことで月に1度、自家製パンをカフェの店頭でも販売しています。5歳の娘を育てる傍ら、20種類およそ100個のパンを1人で焼き上げています。
尾関さんの夢は、呼続にイートインができるパン屋さんを開くこと。
尾関さん「お茶や美味しい珈琲を飲みながらパンを食べて、ちょっとゆっくりできる空間が作れたらいいなと思っています。いつか、呼続の街でパン屋さんをやりたいです」
意外と人気!種の販売を始めた思い
街箱に「大豆の種」を置いている市川翼(いちかわ・つばさ)さん。
市川さんは、産婦人科や福祉施設の看護師として働く中で、コロナ禍による「人とのつながりの希薄化」を感じていました。種を通して、人と人がつながることができるのではないかと考え街箱を利用しています。
娘に「サツマイモ掘りがしたい」と言われ始めた家庭菜園がきっかけで、種から始まる人とのコミュニティができることを知り、いつか、呼続に種を通じて地域の人たちが気軽に集まれる「菜園」を作りたいと考えています。
市川さん「みんなが集えるコミュニティ菜園を作って、コミュニティナースの立場で街のお節介役になりたい。こどもから大人、お年寄りまで楽しめる場所を通して、みんなを元気にしていきたいです」
地域の人たちの夢が詰まった小さな商店街「街箱」は、思っていたよりも早くお客さんが増えていると話す服部さん。夢である「呼続商店街」の芽が出る日はそう遠くないかもしれません。
CBCテレビ「チャント!」3月9日の放送より。