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被災した際の仮設住宅の新形態 移動できる 「モバイル建築」とは?

被災した際の仮設住宅の新形態 移動できる 「モバイル建築」とは?

地震や津波、様々な災害で被災した際、住宅の用意は大きな課題の一つです。その対策になると注目されているのが、「移動できる仮設住宅」モバイル建築です。企業版ふるさと納税を活用して、モバイル建築を導入した自治体を取材しました。

移動できる住宅 モバイル建築とは?

CBCテレビ/「チャント!」

モバイル建築で全国から注目されているのは、住宅メーカー「一条工務店」。静岡県の浜松工場で、モバイル建築を実際に取材しました。一見、キャンピングカーやコンテナのようにも見える木造の建物。外の壁も通常の住宅と同じ外壁のタイルが使われていますが、家の下部にはタイヤが付いています。このタイヤがあることで、トレーラーで引っ張って遠くまで移動させることが可能。災害時には被災地に移動させて、避難所施設や仮設住宅として使えます。

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通常の家と同様に電気を引くことができます。照明はもちろん、エアコンも使えます。キッチンでは、温かいお湯を沸かすことも、電子レンジで弁当を温めることも可能です。住宅の屋根にはソーラー発電が設置されているので、発電した電気を住宅で使うことも可能です。トイレと風呂も完備。バイオトイレは、微生物が排泄物を分解し、被災地の衛生環境を保てます。お風呂は簡単に水道を通すことができるため、災害時にも使うことができます。

一条工務店グループ商品企画部の高橋武宏さんは「モバイル建築は木造で、壁の取り外しが容易です。用途に合わせて、ユニットを連結するなどして、さまざまな間取りに対応することが可能です」と特徴を話します。

通常の住宅と同じように作られ、必要な設備が整っているモバイル建築。災害時に備え、すでに多数保持している自治体もあります。

災害に備え、多数導入している自治体も

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茨城県境町。境町では、町の西側を流れる利根川が仮に氾濫すれば、町の95%が浸水すると言われています。これまでたびたび水害に見舞われてきたこともあり、目を付けたのが、災害時、すぐに避難所などに活用できる「モバイル建築」でした。

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境町のあちこちにあるモバイル建築の数は、71ユニット。木造のモバイル建築を32個組み合わせて作られたホテルや、小学校でもモバイル建築を活用。小学校では子どもたちが自由に行き来できるよう、間仕切りを全て取り除いています。横に並べて壁を抜き、大きなスペースにして放課後の学童保育に使っています。

モバイル建築を導入する仕組みは、「企業版ふるさと納税」

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 問題は1基数百万円かかるコスト。境町は、民間企業が「モバイル建築」を町に寄付すれば、費用分、法人税が控除される「企業版ふるさと納税」の制度を活用。4つの住宅メーカーから計39基、約3億8600万円分の「モバイル建築」を物納してもらいました。

境町危機管理部の野村静喜部長は、
「企業側からの物納という形で納めていただいたので、町としては経費の持ち出しがなかった」と話します。財政規模の小さい町でも導入が可能に。普段はホテルやホッケーチームのクラブハウスに使いながら、4年前の「西日本豪雨」や「北海道胆振東部地震」では、実際に被災地まで運んで、避難所施設などに活用しました。

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境町の住民に聞くと「水害が多い町なので、水没してしまったら意味がない。(モバイル建築は)すごくいい取り組みだと思います」「無駄になるという人もいるが、無駄ではないと思います」と好意的な意見が聞かれました。

三重県南部の南伊勢町も「モバイル建築」を導入している自治体です。南海トラフ巨大地震で最大22メートルもの大津波の発生が想定されている同町では、高台に移転された町立病院のすぐそばに、新しいモバイル建築を14個設置しました。境町と同じく「企業版ふるさと納税」での導入。普段はテレワークなどに使う予定で、災害時の活用も目指します。南伊勢町の上村久仁町長は「(津波からの)避難場所、二次避難場所をもう少し整備していくので、それにも使っていきたい。寄付した業者が納得するような使い方をしていきたい」と話します。

モバイル建築を作った想いとこれからの展望

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一条工務店の高橋さんは、「(モバイル建築は)通常の住宅に使用する建材を作っている海外の協力工場で作っています。通常の住宅とまったく同じ建て方で作った建物を、日本に運んでいます。いざ有事になれば、海外で作って日本に運ぶことができます」と供給体制を説明。

モバイル建築を作った理由として高橋さんは「大災害に対する社会的な備蓄の一環として開発しました。東日本大震災では5~6万戸の仮設住宅の建設に、1年以上かかりました。南海トラフ地震では約205万戸が必要と予想されています。それを地震が起こってから一つ一つ作っていくと、日本の半分が被災している中、人材不足、資材不足が起こり、長い時間がかかることが予想されます。震災が起こる前に一つでも多く、移動可能な住居空間を全国に作っていきたいと思っています」と話します。

今後については「有事の前に、『何か別の用途』『平常使用が可能な建物』として、企業版ふるさと納税の制度を利用しながら、多くの自治体に勧めたいと思います」と展望を語りました。

動く仮設住宅、「モバイル建築」。今後も活用の動きが広がっていきそうです。

CBCテレビ「チャント!」3月11日の放送より。

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