その数450種類以上!日本製「キットカット」魅力たっぷりの誕生と歩み
受験シーズンになると、赤いパッケージが目に浮かぶ。「キット、サクラサクよ。」書かれたエールに多くの受験生が励まされることだろう。「キットカット」英国生まれのチョコレート菓子は、日本で飛躍的な成長を遂げた。
「キットカット」は、1935年に英国で生まれた。工場で働く人たちが休憩時間に手軽に食べられるようにと、ロントリー社がウエハースをチョコレートで包み込んだ菓子を作った。最初の商品名は「チョコレートクリスプ」、2年後に「キットカット」を名乗ることになる。日本には1973年(昭和48年)にやって来た。菓子メーカーの不二家が輸入品として発売したのが最初だった。1988年にスイスにあるネスレ社が英国ロントリー社を吸収合併したことから「キットカット」はネスレの商品となった。
翌1989年から、ネスレ日本が国産「キットカット」の製造をスタート。輸入した商品は甘さが濃かったため、日本人の味覚に合うようにそれを抑える工夫から“日本製キットカット”は歩み始めた。最初の大きな節目は2000年(平成12年)、従来のチョコ味だけでなく、日本人が好むフレーバー(風味)を加えることになった、第1号に選ばれた味は「ストロベリー(イチゴ)」。市場規模が程よい北海道に限定して、反応を見たところ好評だったため、全国一斉に発売となった。「キットカット」を置くコンビニエンスストアが2か月ごとに棚の商品を入れ替えるため、そのペースに合わせて期間限定の「キットカット」を開発した。ストロベリーから始まった味は、ぶどう、マンゴー、すいか、レモン、ゆず、きなこ。さらに、味噌、日本酒、唐辛子の一味など続々とユニークな商品が生まれ、その数は450種類にもなった。
日本各地の名産品の味を入れた「ご当地キットカット」も登場した。最初の商品は「夕張メロン」。フレーバーの「ストロベリー」が好評だったため、今回も北海道から始まった。日本を訪れる海外からの観光客も意識しながら、京都の宇治抹茶、静岡のわさび、東海北陸のあずきサンド、そして九州のあまおう苺など、現在は約20種類。広島もみぢ饅頭の味では、しっとりと湿った饅頭を、サクサクとした「キットカット」にどう活かすか、風味や食感を徹底研究したと言う。日本を訪れる外国人観光客にもお土産として人気である。
日本人の口に合うように特別に工夫した「キットカット」も生まれた。海外では4フィンガー(4切れ)のバーの数を、小さなサイズを好む日本人向けに2フィンガーにした。誕生日、バレンタインデー、結婚式など特別な日に贈り物をすることが好きな日本の習慣に合わせて、写真やメッセージを入れた“オリジナル”「キットカット」も作るサービスも始めた。受験シーズンに人気の「キットカット」。九州の方言で「きっと勝つ」を「きっと勝っとお」と言うことから“縁起物”として口コミで広がった。ネスレ日本によると、受験生の5人に1人が試験会場に持参するそうで、「夢は叶う」「キット、サクラサクよ。」などと書かれた商品も登場。さらにパッケージに激励メッセージを書く白い余白が設けられるなど、いかにも日本らしい心遣いもお目見えした。
その他、素材や作り方にこだわった「プレミアム キットカット」も登場した。ウイスキー樽で熟成させたカカオを使ったビターチョコ味など「キットカット」の進化は続く。そこには「チョコレートの既成概念にとらわれない新しい発見と驚き」という、日本での「キットカット」作りのコンセプトが脈々と息づいている。
英国生まれのチョコレート菓子を、独自のアイデアと開発力で、世界が認めるブランドに成長させたニッポン。「キットカットはじめて物語」のページには、日本の文化の歩み、その確かな1ページが“サクサクっと”刻まれている。
【東西南北論説風(319) by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】
※CBCラジオ『多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N』内のコーナー「北辻利寿の日本はじめて物語」(毎週水曜日)で紹介したテーマをコラムとして執筆しました。