「喜んでほしかったのに…」子どもの誕生日に“ど叱ってしまった”と涙 働く女性アナの葛藤

子育てと仕事の両立は、子どもを持つ働く女性にとって永遠のテーマ。今回は、そんな日々の中で感じる悩みや葛藤、周囲との向き合い方、そして乗り越えてきたエピソードについて、リアルな本音を伺いました。
インタビューに登場してくれたのは、入社19年目の夏目みな美アナウンサーと、16年目の柳沢彩美アナウンサー。ともにCBCテレビの夕方の情報番組『チャント!』のキャスターを務め、2024年春まで、それぞれの立場を変えながら支え合ってきた先輩後輩でもあります。
どちらも家庭では子育て中のママ。アナウンサーとしての顔と、母としての顔。それぞれの立場から語られる”等身大のワーク&ライフバランス”に迫ります。
理想と現実のギャップに苦しんだ「子どもの誕生日」

仕事、家事、育児、キャリア。ライフステージに応じて女性の悩みや葛藤は、ひとつの“正解”では語れません。だからこそ私たちは、ロールモデルではなく、身近にいる「隣の女性」のリアルな本音を伝え「今」を生きる女性たちを応援したい――。そんな思いから、CBCテレビは「me:tone編集部」を立ち上げました。
今回は「ライフ編」。同じCBCという職場で立場は違うものの女性として働くme:tone編集部員が同僚として、女性アナウンサー2人にインタビュー。働きながら子育てをする中で感じてきたリアルな悩みと、乗り越えてきた道のりについて、等身大の言葉で語ってくれました。
me:tone編集部:子どもが生まれる前には、誕生日などのイベントは「こういうことしてあげたいな」とを理想を抱くと思うのですが、実際に生まれた後の現実はどうでしたか?
柳沢アナ:目標達成率は10〜30%くらい。仕事と育児の両立が、予想をはるかに超えるくらい大変とは知りませんでした。
子どもの誕生日には、「よし!お休みを取ってレゴランドに連れて行ってあげよう!」と1週間前から意気込んでいたものの、当日は柳沢アナの疲労が蓄積していて2時間くらいで帰宅することに。「やりたいことの10%もできなかった」と悔やみました。
「ちゃんとしなくていい」背伸びしない子育て

夏目アナも出産前は、「誕生日は“あなたが生まれてきてくれて、こんなに幸せなんだよ”と伝える日。だからこそ盛大にお祝いしてあげるんだ」と心に決めていました。
ところが現実は、仕事のスケジュールに追われる日々。「ケーキ、いつ買いに行く?」「ご飯は何作る?仕事終わりに作れる?」など、次々と問題が浮上し、誕生日当日にしっかりお祝いすることの難しさを痛感することに。
夏目:本当は、気合を入れてちゃんとやればできるのかもしれない。でも、それをやりすぎて自分がパンクしてしまうよりは、笑顔でいることの方が大切だなって思うんです。粗末なご飯でもいい。笑っていられる日を大切にしたい。
夏目アナと柳沢アナは「いい意味で自分の都合のいい解釈かも」と目を合わせて笑いあいました。
子どもに“笑っていてほしい”だけなのに――仕事と育児に悩む母の涙

柳沢:お祝いしてあげたいという気持ちで、親が一生懸命準備しているのに、うまくいかなくて怒ってしまったりすると、「私はなんのためにやってるんだろう」って思うんです。子どもがそれで本当に喜ぶのかを考えると、それって親のエゴなのかもしれないって、すごく思う。
そう語る柳沢アナの目から、そっと一筋の涙がこぼれ落ちました。
たとえば、先に触れたレゴランドへのおでかけもそうでした。出発前、準備が遅れた子どもに「早くして!」と怒ってしまい、行き道の社内は険悪なムードに。子どもが家でレゴを楽しそうに作っている姿を見て、「きっと喜んでくれる」と思って連れて行ったのに……。自分の余裕のなさが空気を台無しにしてしまったことに、深く反省したといいます。
柳沢:“子どものために頑張っている”という空気って、親がイライラしていたら、自然と伝わってしまうと思うんです。だからこそ、そういう気持ちは出さないようにしたい。
そんなふうに、子どもに向き合うときの“親の在り方”について、真剣に、そして自分を見つめながら語ってくれました。

母として感じる、子どもと過ごす時間の足りなさ

me:tone編集部:夕方の家事育児が忙しい時間に、柳沢さんは「チャント!」や「newsX」といった番組を担当されています。そうした中で、子どもとしっかり向き合えていると感じますか?
柳沢:子どもが限界なんじゃないかくらい、一緒に過ごす時間が足りていないと感じます。
柳沢アナの場合、担当番組の都合上、祝日であっても出勤しなければならない日が多々あります。祝日は保育園もお休みなので、一般的には親と子どもが一緒に過ごせる時間でもあります。日常的に帰宅が遅くなりがちなのに、せっかくの連休ですら一緒に過ごせない――。そういう状況がかなり辛いと吐露します。
家庭も仕事も、人それぞれ。「違いを認め合う」ことが育児の味方に

夏目:同じように子供のいる家庭でも、親の職業や働き方は様々で、だからこそお互いの立場や都合、休み方の違いを認め合える社会になったらいいなと思います。
たとえば、愛知県が県政150周年を記念してスタートした「県民の日学校ホリデー」(11月の平日1日を学校の休業日とする制度)についても、保護者の間では賛否両論があったそう。
「家族の時間が持ててありがたい」という声がある一方で、「会社を休まなくちゃいけないの?」「どうせ学童に行かせるから意味がない」といった反対する親もいたそうです。
しかし、土日に働く人たちにとって、平日に「堂々と休める日」があるというのは大きな救いになります。「うちには合わないけど、そっちにはいいよね」と、それぞれの働き方・休み方を認め合う社会が広がればいい、と夏目アナは語ります。
育児休暇を取得する際、「周りに迷惑をかけてしまうのでは…」という後ろめたさを感じていた夏目アナ。しかし本当は、未婚・既婚、子供の有無に関わらず、誰もが自分のために、堂々と自由に休みを取れる社会であるべきです。介護などの家庭の事情がある場合も含めて、人ひとりが自分にとって必要なタイミングで、柔軟に休めるような環境になってほしいと思います。
柳沢:1人の働き方が、いろんな人の生き方とか働き方を変えるきっかけに。
世の中で「多様性」がもっと広く認められるようになれば、雇用の形もより柔軟で多様になっていくのではないか――柳沢アナはそう語ります。
今から10年以上前の放送業界には「放送に全力投球してこそ」「仕事に穴をあけるなんてありえない」といった空気が強く、自身もその価値観に染まっていたと振り返ります。
しかし、結婚・出産を機に「必要な休みを選択して取得することは、自分の人生のために大切な選択で、会社の中で他の人の生き方も尊重する」と考えを改めました。そして、「みんな休んでいいんだよ」ということを誰かがやらないと動かないんだと実感しました。夏目アナも「それは自分だけじゃなくて、後輩へのちょっとした道なんじゃないか」と後輩への影響を付言しました。

働く女性ならではの子どもとの向き合い方と、日々の仕事との両立、そして職場の後輩への影響まで、様々な現実に向き合い乗り越えてきた両アナウンサー。それでもまだ子育てへの力の足りなさに涙する姿に、真摯に向き合う心がみえました。
(文・野村)