CBC web | 中部日本放送株式会社 / CBCテレビ / CBCラジオ

MENU

「どう働くか」より「どう生きていくか」。女性技術者が語る、働き続けるヒント

「どう働くか」より「どう生きていくか」。女性技術者が語る、働き続けるヒント
CBCテレビ me:tone編集部 大有建設で働く石川智子さん(写真左)・山田翔子さん(写真右)

「仕事は好き。でも将来のことを考えると、なんとなく不安になる」。そんな感覚はないでしょうか。

関連リンク

【画像一覧】建設会社で活躍する女性社員の本音は?現場や働き方の工夫を紹介

大有建設株式会社(以下、大有建設)の山田翔子さんは、現場監督としてやりがいを感じながら働いています。一方で、結婚や出産、子育てと仕事の両立については、まだ具体的に想像できないといいます。

何が不安なのか、はっきり言葉にできるわけではない。それでも、将来を考えたときに、今の働き方を続けられるのかと考えてしまう。キャリアを積み上げたいと思うほど、この「漠然とした不安」を感じる女性は少なくないのかもしれません。

同社の石川智子さんは、現場監督として働くなかで産休・育休を取得。復帰後は本社へ異動し、短時間勤務制度を活用しながら、その時々に合う働き方を探してきました。

CBCテレビ me:tone編集部 大有建設提供写真:建設現場で活躍する山田翔子さん

現場が好き。でも、同じ働き方を続けるのは難しかった

身近な「隣の女性」が持つリアルな本音を伝え、「今」を生きる女性たちを応援したい—— そんな思いからCBCテレビが立ち上げたのが「me:tone編集部」です。

石川さんは、中学生のころから「橋を造ってみたい」という憧れがあり、高校・大学と土木を学んできました。

就職活動では、現場監督を目指して土木系の会社に複数応募しましたが、当時は女性の現場監督がまだ珍しい時代。会社側から「難しい」と言われたことも少なくなかったといいます。

そのなかで、大有建設では希望どおり現場監督として採用されました。入社後は、公共工事などの現場を多数経験。その一つが、飛島ふ頭の工事です。コンテナの出入りがない時間帯に工事を行う必要があったため、夜間に作業を行いました。

大きな現場の経験を重ねていくなかで、石川さんは第1子を妊娠。当時は、現場監督として働く女性が妊娠することは、社内でも前例がない時期でした。周囲からは「現場に出ても大丈夫なのか」と心配する声もあったといいます。石川さん自身も、体調を見ながら、目の前の仕事に向き合っていました。

石川さん:「当時は、とにかく必死でしたね。体調が悪い時は車で少し休むなどしながら、妊娠7カ月ころまで現場に立っていました」

目の前の仕事に一生懸命取り組む一方で、今後の働き方について迷いが生まれたといいます。

me:tone編集部:「ライフステージが変わるにあたり、仕事への向き合い方も変わりましたか?」

石川さん:「現場は好きだけど、子育てしながら続けるのは難しいなと思いました」

夫や両親など、周囲の支えの状況を考えたとき、ずっと現場に出続けるのは難しいと感じたそうです。
産後も仕事を続けるため、現場仕事ではなく、現場をサポートする部署への異動を会社に相談しました。その後本社へ異動し、約1年間の産休・育休を取得したのち、本社勤務で現場を支える仕事に復帰しました。

CBCテレビ me:tone編集部 現場監督として活躍したのちに産休育休取得した石川智子さん

暮らしに合わせて働き方を変えていく

石川さんは、第1子、第2子の出産時に、それぞれ約1年の産休・育休を取得しています。復帰後は、短時間勤務制度を利用してきました。

大有建設では、短時間勤務制度の使い方を、社員の状況に合わせて相談しながら決めています。制度としては、子どもが小学校を卒業するまで利用可能。基本は1日6時間勤務とされていますが、家庭環境や業務内容に応じて、開始時間や終了時間を調整しています。

たとえば、保育園の送迎時間に合わせて、「9時30分に出社し、16時30分まで働く」など、本人の希望を聞きながら決めているそうです。

石川さんは制度を利用して勤務時間を30分間短縮。部署の始業時間は8時30分ですが、石川さんは9時に出勤し、17時30分まで働いています。ただ、用事があって16時に帰らなければならない日は、割り切って帰るそうです。その分、前日までに準備や引き継ぎを済ませ、後日フォローするようにしているといいます。

制度を利用しながら周囲と調整することと、自分にできる範囲で責任を果たすこと。石川さんはその両方を大切にしています。

石川さん:「仮に私が無理に残業して、それが職場の『当たり前』になってはいけないですしね」

決められた時間内で仕事を終わらせるのは、後輩への配慮でもありました。子育てをしながら働いていると、「自分が頑張らなくては会社に迷惑がかかる」という責任感が湧き上がることもあります。しかし、無理をし続けることで、後輩に「自分もそこまで頑張らないといけない」と感じさせてしまうかもしれません。石川さんは、そうした空気を作ることは避けたいと考えていました。

山田さん:「後輩のためにそのように思ってくれるのが、とてもうれしいです」

CBCテレビ me:tone編集部 大有建設で働く石川智子さん(写真左)・山田翔子さん(写真右)

どんな暮らしをしたいかが、働き方にもつながっていく

一方で、山田さんは将来への不安もあるといいます。

山田さん:「将来のことが想像できないので、漠然とした不安があります」

その言葉に、石川さんは自身の経験を重ねながら答えます。

石川さん:「大切なのは『どう生きていきたいか』だと思います」

パートナーが定時で帰れる仕事なのか、転勤があるのか。両親が近くに住んでいるのか。子育てや家事をどのように分担できるのか。仕事を続けるハードルは、その人を取り巻く環境によって大きく変わります。

だからこそ、「どう働きたいか」だけでなく、「どう生きていきたいか」を考えることが大切になるといいます。こうやって働くべき、という正解はありません。パートナー、両親、義両親など、支えてくれる人たちとどう折り合っていくかも関わってきます。

石川さん自身も、生活のなかで「自分がどうしたいか」を決めることを大切にしてきました。
石川さん:「私は部屋をきれいにする時間よりも、家族と落ち着いてご飯を食べる時間を大切にしています」

家族と笑顔で食卓を囲む時間を優先するため、食洗機やドラム式洗濯機などの時短家電も活用し、時間を作っています。たとえ部屋が片付いていなくても、自分を責めすぎないといいます。

仕事も家庭も、すべてを完璧に整えるのは難しいものです。だからこそ、何を大切にしたいのかを自分で決める。その視点は、忙しい毎日を少し軽くするヒントになるのかもしれません。

「困っていること、声にしていいんだ」と思える場所

大有建設では、社員の困りごとをもとに制度を見直してきました。総務部の青木さんは、社員との何気ない会話の中で、小さな困りごとを耳にすることがあったといいます。

青木さん:「社員の声を拾っていく目的で、社内にワーキンググループを設置しました」
ワーキンググループでは、育児や介護などテーマごとに、当事者に近い社員が集まり、実際にどのような困りごとがあるのかを話し合っています。

育児のグループには、育休を経験した社員だけでなく、これから結婚や出産を迎える可能性のある若手社員や男性社員も参加。さまざまな立場から意見を出し合ってきました。
その声は、制度の見直しにもつながっています。

たとえば、短時間勤務制度の利用期間は、以前は子どもが小学校に上がる前まででしたが、現在は小学校卒業まで利用できるようになりました。
石川さん:「下の子は小学校3年生になりましたが、今も制度を利用できています」

介護に関する制度も見直されました。介護に直面した社員の「要介護認定を受ける前の段階が一番大変だった」「1日休むほどではないけれど、役所や関係機関との面談が何度もあり、時間単位で細かく仕事を調整したい場面が多くあった」という声を受け、介護に関する休暇を時間単位で取得できるように変更しました。

制度は、一度作れば終わりではありません。使う人の声を聞きながら、少しずつ実情に合う形へ変えていくものでもあります。「困った」を受け止める場があることは、いざというときに相談しやすい雰囲気にもつながっているようです。

CBCテレビ me:tone編集部 大有建設で働く石川智子さん(写真左)・山田翔子さん(写真右)

辞めたい日があっても、続けてきた先に見えるもの

石川さんは、現場で働く女性としていち早く産休・育休を取得し、勤務時間を調整しながら仕事を続けてきました。しかし、順風満帆に歩んできたわけではありません。

仕事を辞めたいと思ったことも、一度や二度ではなかったといいます。それでも、工事をやり遂げたときの達成感や、周囲に支えられた経験が、次へ進む力になってきました。

me:tone編集部:「今後の目標を教えてください」
石川さん:「良いものづくりに携わることです。現場がより良く働けるように、サポートしていきたいですね」

石川さんは、山田さんをはじめとした若手女性社員にとって、今後の働き方を考える手がかりとなっています。しかし、決して完璧なロールモデルではなく、迷いながら、一つひとつ山を乗り越えてきました。

山田さんが感じる将来の不安が、今すぐ消えるほど明確な答えが出たわけではありません。けれど、石川さんの話から「働き方は一度決めたら終わりではなく、その時々の暮らしに合わせて変えていけるものだ」ということが見えてきました。

現場に立ち続けることも、現場を支える側に回ることも、勤務時間を調整することも、どれか一つが正解なわけではありません。

周りに相談しながら、自分に合う形を探していく。その積み重ねが、長く仕事を続けていく力になっていくのかもしれません。

CBCテレビ me:tone編集部 大有建設提供写真:建設現場で活躍する山田翔子さん
この記事の画像を見る

オススメ関連コンテンツ

PAGE TOP