「騒音」の許容時間は?…原因は生活の中にあり!「難聴」を進行させる悪習慣と予防法
身近な健康問題とその改善法を、様々なテーマで紹介する番組『健康カプセル!ゲンキの時間』。
メインMCに石丸幹二さん、サブMCは坂下千里子さんです。
ドクターは、埼玉医科大学総合医療センター 耳鼻咽喉科 客員教授
川越耳科学クリニック 院長 医学博士 坂田英明先生です。
今回のテーマは「〜原因は生活の中にあり〜難聴を進行させる悪習慣」
50歳を超えた辺りから徐々に増え始め、65歳を過ぎると急激に増加する「難聴」。国内の患者数は推定1200万人以上と言われています。一度難聴になると改善が期待できないため、予防する事がとても大事なのだとか。そこで今回は、難聴を進行させる生活習慣や予防法などを専門医に教えてもらいました。
難聴の基礎知識
<なぜ難聴になる?>
音は空気の震えによって伝わり、それが耳の中の鼓膜を振動させ、さらに奥の「蝸牛(かぎゅう)」という器官に伝わります。そこにあるのが、音の振動を電気信号に変えて脳に伝える、毛のような形が特徴の「有毛細胞」。しかし、それが抜け落ちたり傷ついたりすると、電気信号を脳へ正確に伝えられなくなり難聴になってしまうそうです。先生によると、有毛細胞は一度失うと元に戻らないため、これ以上悪化しないよう予防することが大切なのだとか。その原因は、加齢だけではなく生活習慣にもあるそうです。
<高い音から聞こえが悪くなる!?>
有毛細胞は、場所によって認識する音の高さが異なり、高い音は蝸牛の入り口で認識します。常に音が入ってくる蝸牛の入り口は有毛細胞が傷つきやすく、脱毛しやすいので高い音から聞こえが悪くなってしまうのだとか。そのため、加齢などの影響を受けると、体温計の音やチャイム、呼び鈴などの音が聴こえにくくなってしまうそうです。
<難聴が認知症のリスクを高める!?>
耳が遠くなると人とのコミュニケーションが億劫になり、社会的に孤立することで認知症になるリスクが上がってしまうそうです。耳が健康な人と比べ、軽度の難聴で約2倍、重度の難聴では約5倍にもなるというデータもあります。
<難聴は遺伝する?>
先生によると、難聴は遺伝と関係があるとの事。そのため、家族の中に若い時から聞こえが悪くなったという人がいる場合は、予防を心がける事が大切だそうです。
難聴チェックリスト
難聴に早く気づくためのチェックリストをご紹介します。問題ない場合も多いそうですが、心配な場合は1つでも当てはまったら一度検査を受けると良いそうです。
<難聴チェックリスト>
□数人で会話をしている時に聞き返す
□後ろからの呼びかけに気づかないことがある
□聞き間違いが多い
□話し声が大きいと言われる
□耳鳴りがある
原因は生活の中にあり!難聴を進行させる「騒音」
世界保健機関WHOが発表している騒音の1日の許容時間は以下の通りです。先生によると、聴力に負担をかけないためには、うるさい環境にいる時間を短時間にする事とイヤーマフや耳栓などで音を可能な限り遮断すると良いそうです。
<騒音の1日の許容時間>
静かな図書館(40dB)制限なし
通常の会話(60dB)制限なし
掃除機(75dB)制限なし
大声で会話(90dB) 4時間
芝刈り機(90dB)2時間30分
オートバイ(95dB) 1時間15分
ドライヤー(100dB)20分
耳元で大声を出す (110dB) 2分30秒
サイレンの近くに立つ(120dB) 12秒
離陸する飛行機(140dB )0秒
<イヤホンの使用にも注意!>
騒音以外にも注意したいのが、イヤホンなどで音楽を聴く事。先生によると、イヤホンで聴く場合は最大音量の60%くらいにすると約60dBになるので、耳への負担が軽減されるそうです。さらに、音量にもよりますが1時間に1回、10分程度の休憩を入れると良いとの事。また、骨伝導イヤホンの使用も耳への負担が軽いそうです。(※長時間・大音量の場合 聴力に負荷をかける可能性があります)
難聴を進行させる生活習慣「乱れた食生活」
乱れた食生活は動脈硬化につながってしまうため要注意だそうです。耳の中には、多くの血管が通っています。そこに動脈硬化が起きると、有毛細胞へ酸素や栄養を十分に届けられず、健康な人より早く衰える可能性があるのだとか。そのため、食事はバランスよく3食しっかり摂る事が大切。なかでも、先生のオススメは「すりごま(特に黒)」。オススメの理由は、亜鉛が多く含まれている事。亜鉛には炎症を抑える働きがあり、食事に亜鉛を含む食材をプラスする事で難聴予防につながるそうです。亜鉛を多く含む食材は、他にも「ナッツ類」「牡蠣」「牛赤身肉」などがあります(※疾患がある方は主治医と相談してください)。
睡眠中に難聴が進行!?原因は「睡眠時無呼吸症候群」
睡眠時無呼吸症候群とは、主に空気の通り道である気道が塞がってしまい、平均して1時間に5回以上、睡眠中に10秒以上息が止まる状態の事。呼吸が止まると低酸素状態になるため、自律神経の乱れにつながるそうです。内耳の中は一定量のリンパ液で満たされていますが、自律神経が乱れると内耳のリンパ液が過剰に溜まってしまいます。すると、内耳全体がむくみ、有毛細胞が脳に電気信号を伝えにくくなってしまうのだとか。そのため、いびきや無呼吸の兆候がある方は早めに検査を受けましょう。
難聴を進行させる生活習慣「カフェイン」
先生によると、1日1杯程度なら問題ないそうですが、カフェインを摂ると有毛細胞が過剰に興奮し耳鳴りを助長させるとの事。オススメは、リラックス効果のあるノンカフェインのコーヒーやハーブティだそうです。
空いた時間にできる難聴予防
難聴を予防するには、適度な運動やカロリー制限を心がける事が大事だそうです。また、空いた時間にマッサージをするのもオススメ。後頭部の髪の生え際、そこから少し下のくぼみの外側に「天柱」というツボがあります。そのツボを1日3回程度、約10秒マッサージすると有毛細胞への血流が良くなり、血流障害を予防する効果が期待できるそうです。
聞こえだけではない 「補聴器」の重要性
すでに難聴が進行している場合は、補聴器を試す事が大事だそうです。補聴器で聞こえを補うと、コミュニケーションが円滑に行えるようになり、認知症リスクの低下が期待できるのだとか。「大きい」などのイメージで敬遠されがちですが、今の補聴器はかなり小さく、軽いものもあるそうなので、検査を受けて必要な方は試してみましょう。
聞き取りやすい話し方を練習できるアプリ
難聴の人への話し方をトレーニングするために開発されたアプリがあります。それが「想いやりトーク」(無料アプリ)。耳の遠い高齢者がどのように聞こえ、どう話せば聞き取りやすいかを学び・練習できるそうです。
年齢・性別は関係なし!突然襲ってくる「突発性難聴」
その名の通り、ある日突然発症する「突発性難聴」。芸能界でも発症した人が多数おり、年齢や性別など関係なく誰にでもなる身近な病気だそうです。
<突発性難聴の原因>
突発性難聴は、通常V字型に並んでいる有毛細胞が、倒れたり絡まったりする事で急速に衰え難聴につながってしまうといいます。その原因として多いのが、風邪などの「ウイルス」や「アレルギー」「ストレス」だそうです。
<突発性難聴の治療法>
突発性難聴になった際は「鼓室内注入」という治療法があるそうです。鼓室内注入とは、鼓膜に特殊な針を刺して直接内耳に薬を注入するという治療法(※自治体によって保険適用外の場合もあります)。治療により、約6割の人に改善が見込めると言われています。しかし、重度の場合は治療しても聴力が戻らない事があるのだとか。そのため、聴力を守るには一刻も早く気付いて病院に行くことが重要。先生によると、ゴールデンタイムは発症から72時間(3日以内)。2週間以上過ぎると改善率が低いと言われているそうです。
<突発性難聴の兆候>
突発性難聴の兆候は下記の通り。少しでも違和感を感じたら耳鼻科を受診しましょう。
・耳が突然聞こえにくくなった
・片耳だけこもる感じがする(閉塞感)
・片耳だけ耳鳴りがする
・音が二重に聞こえる(響く)
・めまいがする
・気圧がかかったような違和感がある
(2024年9月8日(日)放送 CBCテレビ『健康カプセル!ゲンキの時間』より)