冬に危険な事故・病気
サマリーSummary
ドクター:日本医科大学付属病院 高度救命救急センター 講師 医学博士 五十嵐豊
身近な健康問題とその改善法を、様々なテーマで紹介する番組『健康カプセル!ゲンキの時間』。
メインMCに石丸幹二さん、サブMCは坂下千里子さんです。
今回のテーマは「~緊急警報!年末年始に急増~冬に危険な事故・病気」
寒さが増すこの時期に増えているのが不慮の事故や病気。しかも、多くの事故は家の中で起きているのだとか。命を救うカギになるのは、救急車が到着するまでに正確な救命活動を行う事。そこで今回は、冬の危険な事故・病気を徹底リサーチ!誰もが知っておくべき救命方法を専門医に教えてもらいました。
冬に危険な事故・病気(1)餅を喉に詰まらせる事故
喉には、口から胃に繋がる「食道」と肺に繋がる「気管」の2つが存在しており、気管にものが詰まった時に呼吸困難に陥ります。高齢者になると、咳き込み吐き出す「咳反射」という機能が衰えるため、気管にものが詰まったままになり最悪の場合死に至るのだとか。窒息から5分経過すると死亡率は6%、6分を経過すると20%に急上昇するというデータもあるそうです。
<餅による窒息の対策法>
餅による窒息を防ぐためには、調理の際の対策も大事です。なるべく小さくカットし、よく噛んでから飲み込むよう心がけましょう。
<知っておきたい!餅による窒息の救命活動(1)背部こう打法>
背部こう打法は、喉に餅が詰まった時最初にやるべき救命活動だそうです。
▼窒息している人の身体を前傾に傾け 顎を支える
▼そのまま肩甲骨と肩甲骨の間を手の付け根の部分で勢いよく叩く
▼餅を吐き出すまで力強く叩き続ける
<知っておきたい!餅による窒息の救命活動(2)腹部突き上げ法>
腹部突き上げ法は、背部こう打法で吐き出せない場合に行う救命活動だそうです。
▼みぞおちとヘソの間を握り拳で押さえ 上向きに5回突き上げる
<喉にものを詰まらせた時のNG行動>
先生によると、喉にものが詰まった時に水を飲ませるのは危ないとの事。水が気管に入ったり、さらに奥に行ってしまったりする恐れがあるそうです。
<掃除機で吸い出す対処法について>
掃除機のノズルでものを吸い出す対処法は、背部こう打法・腹部突き上げ法を実践した後でどうしても取れない場合に試してみるのが良いそうです。
<魚の骨が喉に詰まった時の対処法>
魚の骨が喉に刺さった場合は、一旦食事をやめて唾液をゆっくり飲み込み、喉を動かすようにすると良いそうです。(※時間が経っても取れない場合は耳鼻咽喉科などを受診しましょう)
冬に危険な事故・病気(2)コンロで起こる不慮の事故
冬のキッチンで起こりやすいのが「着衣着火」。着衣着火とは、コンロなどから熱が移って引火し、服や髪の毛などに燃え広がる事故の事。火に直接触れていなくても、服の温度が発火点に達すると、勝手に燃え出してしまう事もあるのだとか。綿やレーヨンなど、この時期によく着るネルシャツやフリースなどの素材は燃えやすく、着衣着火が原因で毎年100人近くが亡くなっているといわれています。特に起毛している服は火がついてから全身に燃え広がるスピードが速いため注意が必要だそうです。
<コンロによる着衣着火の対策法>
コンロで料理をする場合は、ネルシャツやフリースなどの燃えやすい服は避け、長袖の場合は袖をめくるようにしましょう。
<知っておきたい!コンロによる着衣着火の救命活動>
まずはシンクに行って水をかけて消火。他には、服を脱ぐ、服を脱げない場合は頭から水を被ると良いとの事。慌ててバタバタすると火の回りが早くなって危険なので、周りの人が落ち着いて消火活動をする事が大事だそうです。
冬に危険な事故・病気(3)ヒートショックによるお風呂での溺死
ヒートショックとは急激な温度変化で身体に異常が生じる事。そのヒートショックが原因で起こる怖い事故がお風呂での溺死だそうです。冬場はリビングなどの暖かい部屋から、寒い脱衣所や浴室に移動する事で血圧が急上昇。そして、その状態で浴槽に入り身体が暖まる事で上昇していた血圧が急降下し意識を失う事があります。実際、高齢者の不慮の溺死・溺水のうち約7割は浴槽内で起きているそうです。
<お風呂での溺死の対策法>
お風呂に入る前にひと声かけるなど、家族とのコミュニーケーションが大切だそうです。他にも、脱衣所や浴室を暖めておき、お風呂のお湯を40℃以下に設定するなどヒートショック対策をとりましょう。
<知っておきたい!お風呂での溺死の救命活動>
まずは顔を水面から上げて呼吸を確保する事が大切。引き上げる力がない場合は、お風呂の栓を抜いて直ちに救急車を呼びましょう。
冬に危険な事故・病気(4)ストーブによる一酸化炭素中毒
先生曰く、一酸化炭素は色がなくてニオイもないので非常に危険との事。頭痛や吐き気がする場合は、早めに病院を受診した方が良いそうです。
冬に危険な事故・病気(5)こたつでの脱水症状
こたつは下半身が常に40度程度の温度環境に置かれており、長時間入っていると身体が体温調節を行うために汗をかき続けます。すると、身体から大量の水分が失われ、血液がドロドロになり、脳梗塞などを引き起こす事もあるのだとか。特に眠ってしまうと喉の渇きに気づかず、水分補給もできないので脱水が進行しやすいそうです。
<知っておきたい!こたつでの脱水症状の救命活動>
こたつで寝てしまい脱水症状を起こしたら、直ちに水分補給を行いましょう。さらに、薄手の服に着替えさせて体温調節を行う事も大事だそうです。
冬に危険な事故・病気(6)家の中での転倒
家の中での転倒は、滑りやすそうなお風呂や階段よりも居間での割合が高いといわれています。冬は特に、こたつ布団や床に敷いてあるマット、電気ストーブなどのコードが原因で転倒する恐れがあるそうです。
<家の中での転倒の対策法>
散らかっていると転倒しやすいため部屋を整理しましょう。動線に物を置かないようにすると良いそうです。
救命救急に必要不可欠!AEDの使い方
救急救命のポイントとAEDの使い方をご紹介します。AEDを使用すると、119番通報のみを行った場合と比べて生存率がおよそ6倍以上にもなるそうです。目の前で人が倒れていたら、勇気を出して人命救助を行いましょう。(※AEDは心停止状態の患者さんに使用できます)
<目の前で人が倒れている場合の救命救急のポイント>
・ポイント(1)声かけ
声をかけて意識があるかどうか確認を行います。
・ポイント(2)周囲の人を巻き込む
反応がない場合は、周りの人を指名して119番通報とAEDの調達をお願いします。(※AEDは全国に約67万台、主にコンビニや駅などに置いてあります)
・ポイント(3)胸骨圧迫
救急車やAEDが届くまでの間、発見者は胸骨圧迫を行います。
・ポイント(4)手の握り方
胸骨圧迫を行う時は、手の上にもう片方の手を乗せしっかりと握ります。
・ポイント(5)胸骨圧迫を行う場所
手を握ったら乳頭と乳頭の間を手の付け根部分で力強く押します。1分間に100回以上のペースでテンポ良く押してください。
・ポイント(6)AED
AEDが届いたら音声に従って行動します。
・ポイント(7)電極パッド
AEDには患者さんの心臓にショックを与えるための電極パッドが付属されています。この電極パッドを右胸と左脇腹に装着しコネクターを接続すると準備完了。後はAEDが心電図を解析し、ショックが必要かを判断してくれます。(※素肌に貼る事ができれば良いため、女性の場合は下着のワイヤー部分に触れない場所に取り付けましょう。
・ポイント(8)ショック後
AEDのショックが終わったらパッドを外さずに再度胸骨圧迫を行います。1度目のショックで心臓が回復しない時はAEDが再度、心電図を解析しショックの準備を行います。胸骨圧迫→AED→再度胸骨圧迫。この一連の流れを救急車が到着するまで続ける事で救命率が大きく上がるそうです。
(2022年12月25日(日)放送 CBCテレビ『健康カプセル!ゲンキの時間』より)