大野と柳による魂の“喝!”でも浮上できない、井上ドラゴンズ“開幕不振”の深刻さ
一体どうしたのか?開幕早々から低迷が続く2026年(令和8年)のドラゴンズ。大野雄大と柳裕也、ベテラン2投手による完投勝ちと完封勝ちにもかかわらず、チームはなかなか波に乗れない。(敬称略)
大野雄大が仁王立ち

それは渾身の投球だった。開幕から5連敗中のチーム、4月2日の讀賣ジャイアンツ戦の先発マウンドに立った大野雄大への期待はただひとつ、「連敗を止めること」だった。前のシーズン、連敗を8度も止めた大野だが、一方で「好調だった翌シーズンは今ひとつ」という過去の不安もあった。しかし、それは杞憂だった。背番号「22」の背中は、本拠地バンテリンドームのマウンドでとても大きく見えた。完封こそ逃したものの、2対1で巨人に勝った。チームは今季初勝利、球団ワーストの開幕6連敗を免れた。
球団史上ワーストの年
もし6連敗だったら、それは1980年(昭和55年)以来、46年ぶりという屈辱だった。忘れたいにもかかわらず、当時の記憶は鮮明である。中利夫監督の3年目だった。ドラゴンズは開幕から6連敗、結局、そのまま浮上できず、シーズンの最初から最後まで最下位だった。
勝率3割7分2厘は、今年90周年を迎えた球団史の中で、今なお史上最低記録である。中監督は辞任、明るい話題は、谷沢健一がアキレス腱のけがから復活して、2度目の首位打者を獲得したくらいの、散々な年だった。幸いそこに並ぶことはなかった。
柳裕也の力強き復活

大野が見せた気迫は、翌日に先発した柳裕也にも引き継がれた。舞台を神宮球場に移しての東京ヤクルトスワローズ戦、ドラゴンズを横目に開幕5連勝中と波に乗る相手だった。立ち上がりが課題の柳だが、初回を三者凡退に抑えると、その後の投球にはまったく危なげがなかった。
竜打線は、細川成也のタイムリーで1点を先取、その後は沈黙したものの、柳にはこの1点だけで十分だった。120球を投げて、打たれた安打はわずか3本、自身4年ぶりの完封勝利だった。「大野さんは完投、でも自分は完封」と胸を張った姿が頼もしい。大野と柳、この連勝でチームは一気に浮上すると信じた夜だった。
高橋宏斗がバトンを繋げず

しかし、翌日のデーゲームでは、1週間前に大好投のプロデビューを果たしたドラフト2位ルーキー、櫻井頼之介が3回途中、6失点でノックアウトされた。さらに、4月5日の日曜日は、自らタイムリーも打つなど投打に躍動し、大野と柳に続くかと思われた高橋宏斗(※「高」は「はしごだか」)が5点のリードを守り切れない。替わったリリーフ陣も打ち込まれた。1イニングに7失点を喫して、まさかの大逆転負けとなった。大野と柳の2勝を消し去る2連敗で、借金は5に逆戻りした。
ベンチ采配への疑問は多い
ここまでの3カード、2勝7敗となった9試合をふり返ると、ファンの立場から見ても「なぜ?」という疑問があまりに多い。
「なぜ、シーズン開幕戦で、ぎっくり腰を発症したアルベルト・アブレウを早めに交代させなかったのか?」
「なぜ、本拠地の開幕ゲームでいきなり石川昂弥を5番に起用して、すぐ翌日に登録抹消したのか?」
「なぜ、開幕メンバーの山本泰寛を1試合も使わずに2軍に落としたのか?」
「なぜ、板山祐太郎を石川と同じように1試合だけスタメン5番に据えたのか?」
「なぜ、オープン戦から好調で、一度だけ失敗した櫻井頼之介が、翌日の登録抹消なのか?」
「なぜ、故障上がりの斎藤綱記が無死満塁の厳しい場面で初登板となったのか?」
当然、井上一樹監督率いるベンチに答はあるはずだが、それが“正答”になっていないところに、現状の深刻さがある。
中継ぎ投手陣の強化を!
5つの負け越し、この借金を返すことは、よほど頑張らなければならない。「5連勝すればいい」のだが、そんな連勝ができるチーム状況でないからこそ、負け数が増えるのである。いよいよ抑えの松山晋也が戻ってくる。しかし、中継ぎ陣の不振はどうするのか?
涌井秀章、松葉貴大、そして、カイル・マラーら好調ながら開幕ローテーションから外れた先発陣がいる。投手陣の再編をして中継ぎを強化するなど、迅速な対応が望まれる。時も、ゲームも、そして、当然ライバルチームも、井上ドラゴンズを待っていてはくれない。
あえて嫌な思い出を書く。開幕6連敗でシーズン最下位だった1980年、9試合を終えた時点での勝敗は2勝7敗で、実は今季とまったく同じなのだ。46年前は次のゲームも落として2勝8敗となった。そうならないためにも、横浜での2連戦は、今季の竜にとって、とても大きな試練となることは間違いない。
【東西南北論説風(679) by CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】
※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲 愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)ほか。











