ドラゴンズは変わったのか?井上竜“試行錯誤”のハマスタ開幕3連戦を斬る!

横浜の地で、2025年(令和7年)3月28日にシーズン開幕を迎えた新生・井上ドラゴンズ。3年連続最下位からの脱出を、新監督に託した逆襲のペナントレースは1勝2敗のスタートとなった。ファンとしての“つぶやき”と共に、始まったばかりの戦いをふり返る。(敬称略)
「去年と同じじゃん!」
開幕スタメンを見た時に、思わず口にしたのは「あれ?去年とほとんど変わっていない」新監督としての真新しさは「4番・石川昂弥」くらいで、初の開幕スタメンとなった村松開人以外は、最下位だった昨季までのお馴染みの顔ぶれだった。開幕を前に、新外国人ジェイソン・ボスラーと背番号「7」に変わった福永裕基をケガなどで欠いたことはあったが、キャンプから元気だった辻本倫太郎や、ルーキー捕手の石伊雄太もベンチスタート。プロ初の開幕投手マウンドに上がった高橋宏斗(※「高」は「はしごだか」)も小刻みに5失点と、期待に応えられなかった。打線も4安打で無得点と、相変わらず点が取れない。ファンはため息をついた「去年と同じじゃん」
「松葉、“残業”OKだったね」

2戦目は、ベテラン左腕の松葉貴大が先発した。8月に35歳になる松葉は、春季キャンプを2軍の読谷で送ったが、シーズンに向けて松葉らしく、きっちり仕上げてきていた。初回に横浜DeNAベイスターズの強力打線を三者凡退で抑えると、その後もエラーなどでピンチを迎えても、飄々と投げ続けた。なぜか6イニング目になると点を取られることが多かったため、昨季までの立浪和義監督は「ドーム球場限定で5回まで」という起用だった。“残業をしない松葉課長”と竜党の間でも揶揄したりしたが、どうしてどうして、この日は7イニングを投げて2安打無失点の見事なピッチング。井上新監督に嬉しい初勝利をプレゼントした。「5回まで」という“縛り”が今では何だったのかと思う。ファンは大拍手する「松葉、“残業”OKだったね」
「お前が打たなきゃ誰が打つ」

1勝1敗で迎えた第3戦は、来日3年目を迎えたパナマ出身のウンベルト・メヒアが先発した。オフに去就が注目されたが、井上監督が「メヒアは必要な選手」と残留を決断し、それに応えるように、この日のメヒアは安定した投球を見せた。ホームラン2本を被弾したものの、7回を2失点に抑えたのは立派だった。しかし、打線はその好投を見殺しにした。象徴的だったのが8回表の攻撃だった。中田翔のヒットと上林誠知の2ベースで作った1死2、3塁の同点そして逆転のチャンス、4番の石川は空振り三振に倒れた。最低でも内野ゴロで1点を取りたかった。この3連戦、石川は12打数1安打だった。23歳の若き4番、まだまだこれからと信じながらもファンは言いたい「お前が打たなきゃ誰が打つ」
「やっぱりあと1本が出ない」
横浜スタジアムでの3試合、ドラゴンズの得点は合わせて2点だった。特に、第2戦は10安打を重ねながらも、わずか1点にとどまった。ここ数年、時に立浪監督が率いた3年間は「あと1本」に泣き続けた日々だった。井上新監督は、打線の強化のために“平成の三冠王”松中信彦コーチを打撃統括として招き、今では忘れ去られた言葉「強竜打線」の復活をめざしている。きっと、いつかは新コーチの指導が実る日々が来ると信じたい。しかし開幕3連戦に関して言えば、ファンとしては思ってしまう「やっぱりあと1本が出ない」
「これがボジティブ・バトルだ」

井上監督は発する言葉の種類が豊富で、魅力的でもある。選手たちの競争を煽る「ポジティブ・バトル」もそのひとつであり、春季キャンプからの象徴的な言葉でもある。それには“結果を出した選手にはチャンスを与える”という姿勢を、ベンチも貫かねばならない。ここ数年のドラゴンズは、好投した投手、打った打者、いずれも次の試合でチャンスを与えられなかったケースが多々あった。第2戦にスタメン起用されてそれぞれ2安打だった上林と板山祐太郎が、第3戦も続いてスタメンだったことは納得である。さらに代打でヒットを打った駿太(後藤駿太)が細川成也に替わって「2番ライト」でスタメン出場した。こうした起用は、選手にとっても嬉しく、逆にベンチに下がった選手にとっては火が点くだろう。ファンはそこに光明を見た「これがポジティブ・バトルだ」
スタメンは毎試合変わり、まさに“試行錯誤”の開幕3連戦だった。ただ、井上新監督を中心にチームのムードは明るく元気だ。次はいよいよ本拠地バンテリンドームで、開幕3連勝と波に乗る讀賣ジャイアンツを迎え撃つ。新監督によるドラゴンズの再建、ファンとしてはそれを信じて全力応援するが、これだけは見せてほしい。それは「ドラゴンズは変わった」という姿と、魂こもったプロとしての戦いぶりである。
【CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】
※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲 愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。CBCラジオ『ドラ魂キング』『#プラス!』出演中。