立浪ドラゴンズ首位進撃中!ピンク色に染まった本拠地ドームでその強さに遭遇
8年ぶりの単独首位である。3年目を迎えた立浪ドラゴンズは、リーグ各チームとの戦いを一巡して8勝4敗2分、4つの貯金で2位の讀賣ジャイアンツと僅差ながらもトップに立っている。ペナントレースはまだ10分の1しか過ぎていないものの、2年連続最下位で“負け癖”がついた選手にとっても、私たちファンにとっても「首位」という言葉は何よりの妙薬である。(敬称略)
ピンク色に染まったスタンド
バンテリンドームのスタンドは、まるで芝桜の絨毯を敷き詰めたようなピンク色だった。2024年4月13日は、今年初の昇竜デー。選手も特別ユニホームを着て試合に臨み、同じ色のユニホームが来場者にも無料で配布される。球団創設88年を迎えたチームで、桜の柄のピンク色ユニホームは初めてのことだ。
5階のパノラマ席に座って、スタメン紹介を見ながら、この色は中田翔には少し違和感があるかなとか、一番似合う選手はケガからの調整で1軍ベンチにいない岡林勇希かなとか、好き勝手に考えを巡らせていた。そして、この日のスタメンに、今季ここまでの竜の姿が投影されていた。
移籍組が大活躍のゲーム
先発投手のウンベルト・メヒア以外の8人の野手、三好大倫と田中幹也という若手を除けば“チーム生え抜き”は、3番サードに入った高橋周平だけである。4番の中田以下、細川成也、上林誠知、宇佐見真吾、そして山本泰寛と、この5人はすべて他球団からの移籍組である。上林と山本は所属チームを“戦力外”になって、竜の一員となった。
そんな彼らはこの試合でも活躍した。2点をリードされての6回裏、追撃のタイムリーは中田、同点の押し出し四球は、これも“戦力外”から入団の代打・中島宏之。逆転の一打は宇佐見であり、8回裏のダメ押しは山本のタイムリーだった。
立浪和義監督が就任以来、度々口にしてきた「チームを変える」、まさに目の前にはその具現化があった。負けじと“生え抜き”高橋も3安打の活躍、試合は5対2で逆転勝ちして6連勝を飾った。
これぞ4番!中田翔の存在感
今季の好調な戦いの象徴は、讀賣ジャイアンツから移籍した中田翔である。ここまで14試合の内、休養した1試合以外はすべて4番に座り、開幕戦ではいきなりホームランも打った。中田の凄さは、ホームランという“大物打ち”だけではない。横浜スタジアムで見せたような、バットに軽く当ててライト前に落とすタイムリーヒットなど、大技小技が自由自在なのである。ここという時に犠牲フライも打てる。「こうすれば打点が稼げる」まさにお手本のようなバッティングなのである。
チームが14試合で先制点を取ったのは10試合、これも十分に頷けよう。6連勝中、この6試合の先発投手すべてに勝ち星がついたが、先制点がいかに効果的かを如実に表している。「中田翔」という軸ができたことによって、チーム全体が機能し始めた印象だ。
出てこい!岡林、石川そして宏斗
ゲームの前に、バンテリンドームの大型ビジョンに流れる映像の中では、将来を背負う若竜たちが躍動している。今年から背番号「1」を背負う岡林勇希をはじめ、石川昂弥そして高橋宏斗(※「高」は「はしごだか」)、おそらく1軍での活躍を想定していたはずでのスクリーン登場であろう。
この他、野手では龍空や石橋康太、投手では根尾昂に仲地礼亜、そんな期待の若手たちが1軍ベンチにいないのである。スタンドのファンが着るユニホームやかざすタオルにも、彼らの名前は多い。単独首位に喜びながらも一抹の淋しさを感じるのは、そんな理由なのかもしれない。長いペナントレースでは、いつか必ず彼らの存在が必要になる。1軍が好調な内に、しっかりと“竜の爪”を研いでいてほしいと願う。
かくのごとく、2024年のドラゴンズは、投打共に選手の層は厚くなった。1軍と同じように2年連続最下位だった2軍も、井上一樹新監督の下で好調だ。この総合力を、どのように把握して、どう活かしていくか、まさにリーダーたる立浪監督の采配力が問われることになる。ピンク色のユニホームに身を包みながら、シーズン143試合が終わった時に、桃色の夢を見られたらいいと、この日スタンドで応援した多くの竜党も思ったはずである。
【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】
※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲 愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。