吉田輝星がうらやましい!根尾昂を待望するドラファンからの熱き眼差し
2018年に夏の甲子園を沸かせた吉田輝星投手が1軍デビューを果たした。
プロ入り初登板にして初先発そして初勝利。全国のプロ野球ファンが注目する中での初陣を飾った。北海道日本ハムファイターズ、栗山英樹監督の演出、見事的中である。
用意周到な吉田デビュー
甲子園の秋田県代表・金足農業高校エース吉田輝星をドラフト1位で獲得して、エースナンバー「18」の背番号を与えた栗山監督。沖縄での春季キャンプでは、紅白戦に吉田投手を先発させて、その相手に甲子園決勝で投げ合った同じくルーキーの柿木蓮投手を登板させた。記憶に新しい2018年夏の甲子園決勝の再現は、紅白戦にもかかわらず大きな話題になった。そんな栗山監督と日本ハム球団は吉田投手のデビューについても緻密な戦略を立てたことだろう。
見事にデビュー戦を飾った!
セ・パ交流戦最中の6月12日、本拠地の札幌ドーム。相手はセ・リーグ3連覇中の広島東洋カープ。吉田投手の先発は、予告先発が発表される試合前日よりもさらに早い時期に公表され、ドームには3万3,563人という大勢のファンが詰めかけた。
吉田投手はいきなり先頭打者の長野久義選手にヒットを打たれるなど一死満塁のピンチを招くも1回を無失点で切り抜ける。5回を投げて4安打4三振2四球、84球での1失点でデビュー登板を終えた。
6回以降、2-1の1点リードを日本ハム救援陣の投手4人が守って、ゲームはそのまま終了。吉田投手は「プロ初登板・初先発・初勝利」という称号を得た。
根尾選手への熱き思い
ドラゴンズファンのひとりとして、北の大地から報じられる18歳の勇姿に「うらやましい」と思った。そして背番号「7」のドラゴンズ選手に思いを馳せた。根尾昂選手である。現在、2軍に身を置きながら、毎試合ゲームに出続けて研鑽を積んでいる。
決して忘れたくないことが2つある。
ひとつは、夏の甲子園で吉田投手から当時は大阪桐蔭高校のスターだった根尾選手がバックスクリーンに放ったホームラン。甲子園の春夏連覇を決めた素晴らしい弾道だった。
もうひとつはその秋のドラフト会議である。ドラゴンズの与田剛監督が見事根尾選手の指名権を獲得した1位指名の抽選で、日本ハムも根尾選手に入札している。吉田投手は根尾選手を外した後の“次の1位”なのである。
それだけに、吉田投手が交流戦で根尾選手との対戦を熱望しているという報には心がざわめく。ファンとしても根尾には負けてほしくない。
一流には一流の舞台を
選手の起用、すなわちゲームでの「用兵」は難しい。特に若手の登用は監督の腕の見せ所であろう。
吉田投手のイースタンリーグでの成績は、9試合投げて0勝3敗、防御率4.15。投球回数26にして三振22は評価できるかもしれないが、全体に特筆すべき成績ではない。それでも栗山監督は1軍に上げて、デビューを演出した。
一流には一流の舞台が似合う、そんな言葉が頭に浮かんだ。根尾選手にも、彼に相応しいデビューの舞台が与えられますようにと心から願う。
お手本は目の前にある
今回の吉田輝星デビューに関して、さらにうらやましかったことが2つある。
ひとつは、札幌ドームで来場した観客に配られた「プロ初登板観戦証明書」。裏面には三振を表す「K」の文字と吉田投手の写真があり、応援ボードとして使用できる。球団では事前にこのプレゼントを告知して集客につなげた。こうした演出は、さすがファイターズだ。
もうひとつは、1点のリードを守り切って後輩ルーキーに記念すべき白星を贈った4人の先輩投手たち。素晴らしかった。1点でも取られたら吉田の初勝利は消えていた。こういう勝利はチームとして絶対に逃してはいけない・・・それを理解した上できちんと実行した、まさにプロらしい“見習いたいゲーム”だった。我らがドラゴンズも頼むよ!
【CBCテレビ論説室長・北辻利寿】
※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲 愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。