中日・吉見の195分もの独演会!尽きないトークの引き出しと野球への貪欲さ
12月1日、吉見一起はダブルヘッダーをこなした。
まず、14時30分から16時15分までCBCラジオ「若狭敬一のスポ音」にゲスト出演。その後、17時から18時30分までCBC1スタホールでトークライブを開催。実に195分もの間、しゃべり続けた。
「最初は不安でしたが、意外と話せるものですね」
吉見は全てが終わった後、控え室で笑顔を浮かべた。私は聞き手として時間を共にしたが、驚くのは話の内容がラジオとライブで重複していないこと。きっと彼の引き出しにはまだ無数のネタが入っている。
とにかく質問攻めだった。FA権を行使せずに中日残留を決めた理由、社会人時代から親交のある金子千尋の去就など次々にリスナーと観客から質問が飛んだ。吉見はまるで自身のピッチングのように1つ1つ丁寧に答えた。
その中から3つを紹介する。テーマは「見る」だ。
11月17日、ナゴヤドームのファンフェスタで紅白戦が行われた。試合中、吉見は主将の福田永将に「キャッチャーをさせてくれ」と頼んだ。原則、投手は禁止だが、熱意に押されて許可。吉見はマスクを被った。
「経験ないですよ。福田には『右手だけは気を付けて下さい』と言われました。どうしても反対側から投球を見たくて」
そこで吉見は改めてコントロールの重要さを学んだという。
「ボール1つ甘くなると、打たれることを痛感しました。外に構えたミットを内側に動かす時は『あぁ!』と思う。ピッチャーよりキャッチャーの方が制球ミスをリアルに感じられました」
遊びからも収穫を得る吉見。その貪欲さに敬服だ。
「3日前に川上憲伸さんと食事をした時、『放送席からだと、打者の仕草や構えがよく見えて、狙いが分かる。俺も現役中に見れば良かった』と言われたんです。だから、僕も投げない日はネット裏から野球を見たいなと」
食事中の会話からもヒントを掴んだ吉見。来季はナゴヤドームの観客席にベテラン右腕がいるかもしれない。「ただ、ビールは飲まないですよ」と笑わせた。
見ることの重要性に気付かされた金メダリストの言葉
吉見はかつてソフトボールの日本代表・上野由岐子と自主トレをしていた。
「印象に残っているのが『人間の能力には限界がある。能力の足りない部分は観察力で補える』という上野さんの言葉です」
それ以来、吉見はある選手の一挙手一投足を凝視するようになった。
「谷繁(元信)さんです。球場入りして何をしているか、練習はどう取り組んでいるのか、試合中の動きも試合後のケアも観察しました。分かったことは地道なことをやり続ける大切さ。岩瀬(仁紀)さんもそうですが、一流の方はひたすら毎日同じことを繰り返せる。積み重ねが大事なんです」
吉見は見る。捕手から投手を、ネット裏から野球を、横から一流を。多くの視点を持ち合わせた背番号19はどんな活躍を見せるのか。期待は膨らむばかりだ。そして、また来年も彼の引き出しを開けるのが楽しみでならない。