今中慎二「根尾よ、このままでは終わってしまうぞ」大先輩の言葉とドラゴンズ根尾昂の覚悟
ドラゴンズ根尾昂選手は、周囲からの熱視線を受け続け、ずっと、頑張っている。
沖縄Agreスタジアム北谷での早出特打は、全体スタートよりはるかに早く、早朝7時台から続けている。そもそも3年前の新人入寮から、昇竜館での朝食前のマシン打撃は5時起床で頑張っている、と聞く。
しかし、頑張るとは、『頑(かたく)なに、張る』とも受け取れる。いくら己を貫けても、プロは結果だ。
気づけば早やプロ3度目の沖縄春季キャンプ。そんな根尾選手を、同じ大阪桐蔭高校の大先輩、今中慎二さんはこう語った。
「このままでは、終わってしまうぞ。今年やらないことには、先が危うくなる。終わってしまうぞというほどの覚悟で変えないと。高卒プロ入りといっても、あっという間。どんどん新しい選手が入ってくる。石川昂に今年のルーキー達。周りの目移りは早く、存在感は薄れていくよ。だから、今年に期待している」
理屈ではない、現実の姿
もちろん、これまでの根尾選手が、聞く耳を持っていなかったわけでは、決してない。しかし、今季は明らかに、周囲からの眼以上に、彼自身に変革が起きている。
昨年まで、一軍では内角への厳しめの球を“受けて“しまっていた。一軍のスピードとパワーについていけなかった原因は、理屈ではない。
1月の大島洋平選手に教えを求めた自主トレ。チームリーダーに呟かれたひと言が、頭から離れない。
「体、弱いな」と。
確かに、負荷をかけたトレーニングで、これまでハーフスクワットは何度でもできた。しかし、周平先輩たちが黙々とこなすフルスクワットになると、ハーフと同じ重さをしっかり上げ続けることができない現実。
根尾昂の変革
ただ、根尾選手は、受けた言葉を引きずるだけの男ではない。彼自身の言葉に、具体性が伴ってきたのだ。
「全ての“1”を大事にします。普段の打撃練習での1球目。つかんだ1度目のチャンス。そして、すべての実戦チャンス、第1打席の1球目から」
これは一朝一夕にはできない。ただし、対外試合初戦のベイスターズ戦、1番ショートスタメンの根尾選手は、マルチヒットで迎えた四打席目、見事に相手投手の代わりばな、一球目をセンターへ運び、3安打“猛打ショー”とした。
本人は「結果は良かったですが、打席での状況判断がまだ。こんなもんじゃありません」と語るも、試合直後の与田監督は、「か‘‘‘‘‘‘ねてからの(課題だった)初球を一発で仕留められた」と高評価。指揮官は、この日に限らず、彼の必死のもがきをしっかりと見ており、こんな言葉でも語っている。
「根尾の良さが出てきている。あまり考えすぎて、持ち味をなくしてしまわないように。チーム全体としては、根尾の成長が、他の選手たちに危機感を生んでいる」
大先輩からの期待
そして、冒頭の今中さんの思い。高校の先輩後輩というのは、本当にいい。ドラゴンズブルーのユニフォームを着る時代こそ違えども、変わることのない、後輩への愛情。
「あいつは、試合で使われるとなれば、結果は残せるよ。良い意味での安心は、成長を生むから。ただ、競争、また競争、となると苦しいからね」
もちろん、そんな手形は無いと分かっている、かつての同じ高卒ドライチ、孤高のサウスポーの本音。
でもね、と今中さんは続ける。
「京田の守備は越えられんよ。だからこそ、争えば、チーム全体のレベルが上がる。そこそこのAクラス争いではなく、優勝のために、必要なこと。そもそも、レギュラーと言ったって、サード周平ですら、完全にはどうなのと。固定の意識では、チーム力は上がっていかないよ」
守備は確かに越えられないかもしれない。ただしそれはあくまで「現時点」のことであり、未来は誰にもわからない。さあ、沖縄キャンプも打ち上げへのカウントダウンが近づいた。チームと根尾選手自身のために、そして応援してくれる多くの人達のためにも、この男をこのまま終わらせてはいけない。燃えよ!ドラゴンズ!!
【CBCアナウンサー 宮部和裕 CBCラジオ「ドラ魂キング」水曜午後4時放送他、テレビ・ラジオのスポーツ中継担当。生粋の元少年ドラゴンズ会員。早大アナウンス研究会仕込の体当たりで、6度目の優勝ビール掛け中継を願う。】