昇竜復活の先陣を切る! 中日・笠原、新たなる2つの変化球を武器に初の開幕マウンドへ!
「【ドラゴンズライター竹内茂喜の『野球のドテ煮』】
CBCテレビ「サンデードラゴンズ」(毎週日曜日午後12時54分から東海エリアで生放送)を見たコラム」
開幕戦は特別な一戦
開幕投手
開幕投手はペナントレースの最初の試合に登板する先発投手。開幕試合は143試合中の1試合と捉えるか、それとも特別なる大事な試合と捉えるか、意見は分かれよう。ただ、過去その舞台のマウンドに立ったドラゴンズのエースたちはただならぬ思いで開幕戦を迎えたという。
強心臓で知られた今中慎二さんでさえ『最初は周りが見えなかった』ほど緊張したという。また球団最多となる7度の大役を担った川上憲伸さんは『“やりたいけど投げたくない”というのが適切な表現だったと思う』とインタビューに答えている。
それほど他の試合と比べ、神経を尖らせ、重圧のかかる特別な一戦が開幕戦なのである。
開幕投手はコンディション不良、ケガ等なければ決まってそのチームのエースが投げる。対戦相手もエースが登板する。そのままローテーションを守っていけば、開幕に登板できるとい名誉と引き換えに各球団のエース級とぶつかり続けるという、心身ともに毎試合タフなゲームが待ち続けている。川上さんの本音はここにあるのかもしれない。
与田監督、開幕投手を任せる条件とは
そんな開幕戦のマウンドを与田監督はどのような思いで、また誰に投げてもらいたいと考えているのか。開幕投手の条件はふたつだという。
しっかりと開幕を任せる“準備”ができ、一年間ローテを守れる投手が開幕投手に抜擢。言い換えれば、監督自身が投げさせたいと心底思える投手ということだ。
キャンプ、オープン戦通じて、監督のお目にかかる投手は誰か?と探してみれば、ドラゴンズファンであれば誰もが彼の名を答えるはずだ。今年の開幕は笠原祥太郎しかあるまいと。
川上さんも彼の開幕戦起用に太鼓判を押す一人。
『(笠原の投球には)ヒジから先の柔らかさを感じる。腕の力みがないということは、下半身・体幹で投球動作を引っ張っている。見た感じ問題なし!』
課題克服に新たなる武器ふたつ
彼の持ち味はなんといっても伝家の宝刀チェンジアップ。サンドラで計測したストレートとチェンジアップの球速差はなんと24.7キロ!その緩急差でハッターは翻弄されてしまう。ただ現状に満足する笠原ではない。さらなる進化を遂げるため、今シーズンのテーマを次のように述べた。
『チェンジアップをいかに最後までとっておくか。最大の武器であるチェンジアップを多用せず、相手打者を打ち取るためにはどうすべきか』
解説者の井端弘和さんも打者目線で笠原の取り組まなければならない課題を挙げた。
『(笠原とは)1回だけの勝負なら打つのは至難のピッチャーだが、2周り目、3周り目になった時、投球に変化を与えないといけない』
対戦相手もチェンジアップを意識する中、他の球種で抑えられたら投球の幅も拡がり、相手も混乱しよう。チェンジアップとストレートだけでは長いシーズンは戦い抜けない。笠原は課題克服に向け、新たな武器を磨き始める。
カットボールとカーブ、ふたつの変化球だ。
特にカーブはストライクが入れば打ち取れる球種。そしてその効果ははっきりと表れた。
3月9日の千葉ロッテ戦。課題としていたカットボールとカーブが制球よく決まる。結果、6回をノーヒットに抑える好投を見せた。また一週間後の16日、楽天戦でも3回を被安打1、奪三振5、無失点と文句のいい様のないピッチングを披露。まさに与田監督が頭に描き続けた、キャンプからしっかり準備ができ、一年間ローテを任せる安定したスターターとして見事成長を果たしたのだ。
目を細めながら、笠原の成長にこう答えた。
『投げるたびに安定感が出てきた。(笠原を)将来の柱にしていかなければならない』
笠原自身も投げてみて、長いイニングも大丈夫だと確信したようだ。
『開幕は特別意識せず、オープン戦で結果を残し、ローテーションに入ることが第一の目標』
と、謙虚に答える笠原だが、期待は日増しに高まる。
この日のゲストで12年連続開幕投手を務めたレジェンド・山田久志さんはそんな笠原にエールを送る。
『今年の笠原は他球団から徹底的にマークされる。そこをかいくぐって成績を残せればたいしたものだ!』
開幕ダッシュこそ昇竜復活のカギ
くどいようだが、開幕戦は143試合中の1試合。だがスタートを好ダッシュできればチームに勢いが生まれる。そして自信もついていく。
忘れられないのが1999年時の開幕から破竹の11連勝。いまだにその記録は破られていない驚異的なる記録。その年はリーグ優勝を遂げただけに、やはり気持ちよく開幕には勝利を飾ってもらい、6年連続Bクラスという負のオーラを初戦に振り払ってもらいたいと願う。
笠原が先陣を切れば、負けるものかと同期の柳が意地を見せる。若手が結果を残せば吉見、山井らベテラン陣も置いていかれるものかと力を発揮しよう。すべてが好転すればドラゴンズ投手陣も明るい日差しが必ずや射してくる。
多くの野球解説者がドラゴンズを最下位に予想している。面白いじゃないか!秋に目に物見せてやろう。まさに今年のチームスローガンである昇竜復活だ!3月29日開幕戦まで2週間を切った。やり残すことなく調整を続け、いざ敵地横浜へ!がんばれドラゴンズ!燃えよドラゴンズ!
(ドラゴンズライター 竹内茂喜)