「あんかけスパゲティ」は名古屋人限定でピンと来るご当地ネーミング(!?)~大竹敏之のシン・名古屋めし

「あんかけスパゲティ」は名古屋人限定でピンと来るご当地ネーミング(!?)~大竹敏之のシン・名古屋めし

あんかけ=あんこのスパ?他県の人は誤解しまくり

CBCテレビ:画像『デララバ』

あんかけスパゲティは、他地域の人が最もイメージしにくい名古屋めし。中華料理や和食のあんを思い浮かべて「スパゲティに合うはずない!」と敬遠したり、某文化人が「あんこがのっている」とトンデモ発言をしたり(それは喫茶マウンテンだよ!)と誤解も豪快! 世界一のカレーチェーン・ココイチの壱番屋のあんかけスパチェーン「パスタ・デ・ココ」をして、「愛知県を一歩出ると、皆さん食べたことがないのでなかなか受け入れてもらえない」と県外では店舗数がなかなか伸びません。未体験の人には、「あんかけ」と「スパゲティ」が水と油のように結びつかないのです。

このあんかけスパゲティというネーミング、実は元祖である「スパゲッティ・ハウス ヨコイ」が言い出したものではありません(ヨコイの表記は「ッ」が入る「スパゲッティ」)。スーパーでおなじみの同社のレトルトソースの商品名は「ヨコイソース」。名古屋めしがメジャーになった今でこそ、ヨコイもあんかけスパゲッティというワードを積極的に使うようになっていますが、この呼び方は長らく“俗称”だったのです。

「昭和34年創業で、オリジナルソースのヨコイのスパゲッティ=『ヨコスパ』として親しまれてきたので、祖父はその呼び方に愛着があったのだと思います。店頭で『あんかけスパゲッティ』とうたうようになったのは、2005年の愛知万博の頃から。県外からの観光客の方が増え、共通した呼び方があった方が名古屋名物として認知してもらいやすいだろう、と考えたからです」とヨコイの3代目にあたる横井慎也さん。

レトルトソースのパッケージには、現在は裏面に「あんかけスパゲッティ」の記述が。これも愛知万博からしばらくたってから明記するようになったそうです。

生みの親は「からめ亭」店主

CBCテレビ:画像『デララバ』

この「あんかけスパゲティ」という名前の生みの親こそ、「からめ亭」(本店は名古屋市名東区)創業者の志智均さんです。志智さんは学生時代に通っていたスパゲティ店の味に惚れ込み、研究を重ねて1979年に「ソーレ本山」を開業(その後、「ソール本山」「からめ亭本店」に店名変更)。とろみが強くピリッとスパイシーなソースに太麺をからめるスタイルは、当時名古屋に数多く出現していたヨコイのインスパイア系ともいえるものでしたが、圧力鍋を使って素材のうま味を凝縮する独自のソースを開発し、オリジナリティを確立します。その評判がメディアの目にも止まり、『ズームイン!!朝!』(日本テレビ系列)の取材があったのが1992年のこと。その際にソースの特徴をわかりやすく伝えようと発したのが「あんかけみたいなものですよ」というひと言でした。

この呼び方は食べ慣れている名古屋人にとってはピンと来る“言い得て妙”な表現だったため、やがて同様のソースを使ったスパゲティの総称として広まります。反面、他の地域ではほぼ見られないもののため、冒頭のような誤解にもつながってしまう、悩ましさもはらんでいます。それでもやはり、この料理の他に類のない個性を言い表していて、未食の人には想像がつかないという極北感も含めて飛び抜けた言語センスによるネーミングと評価したいと思います。

食べ歩き、食べ比べして真の名物に!

CBCテレビ:画像『デララバ』

自身の提唱した呼び名が、今や名古屋名物として広まっていることに対して「それはうれしいですよ」という志智さん。ですが、こうも続けます。「呼び方が同じだからと言って、どれも同じでは本当の名物とはいえません。我々は互いに切磋琢磨してそれぞれのおいしさを追求しないといけないし、お客さんもいろんな店の味を食べ歩いて、それぞれの違いを知ってもらいたいですね」

ひと口にあんかけスパゲティといっても、もちろんそれぞれの店が工夫を凝らし、自分たちだけの味をつくり上げています。いろんな店の味を食べ歩き、食べ比べ、ひとりひとりが“推しあんかけスパゲティ”を持つようになれば、名古屋めしとしての存在感もいっそう高まるんじゃないでしょうか。

※記事内容は配信時点の情報になります。

#名古屋めしデララバ

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