“放置自転車天国ナゴヤ“対策に毎年9億円の税金…驚きの「取り締まりビジネス」も誕生
名古屋は放置自転車の数が全国ワースト1です。行政が取り締まりに力を入れても状況が改善しない中、一石を投じる驚きの新ビジネスも登場。“放置自転車天国”名古屋の現状を取材しました。
放置台数が全国ワーストの名古屋市 チェーンロックも切断して撤去
名古屋の繁華街では、放置禁止区域の路上に自転車がズラリ。「放置自転車の多い自治体」(2021年度)で、名古屋市は5718台で1位。2位の大阪市は2552台、3位の札幌市は1575台、4位の横浜市は1471台、5位の神戸市は1345台と、名古屋市の数字が突出しています。
ワースト1の不名誉な記録が続く中、名古屋市は、歩道の安全や街の景観を守るため、駅周辺に多くの駐輪場を作りました。また、民間の委託業者が、路上に自転車を止めないように注意をしています。
放置自転車は、条例に基づき、見つけ次第強制撤去となるのが基本です。チェーンロックをしていても、回収業者はチェーンを切断して撤去します。撤去された自転車は、市内に15か所にある専用の保管スペースへ。所有者が引き取るには、3500円の引き取り手数料が必要です。名古屋市では、この業務などの放置自転車対策に年間約9億円もの税金が使われています。
一般市民が不正駐輪をロック 新たな取り締まりビジネスも
一方、民間営業の駐車場や駐輪場など、「私有地」にある放置自転車については、行政は取り締まることができません。
こうした中、名古屋市東区のIT企業「サイバーG」が、私有地の放置自転車対策の新しいビジネスに乗り出しました。
認定を受けた一般市民が、契約を結んだ私有地や駐輪場を見廻り、勝手に止められた放置自転車があれば、鍵をかけて動かなくします。その上で、取りに来た所有者に対し罰金を請求するという仕組みです。
(サイバーG・奥田雄一社長)
「(一般市民が)スキマ時間で、自分のタイミングで不正駐輪をロックして、副収入を得られる」
普段は一般企業で事務員として勤務しているAさん(20代)は、会社員の傍ら、スキマ時間を見つけて、放置自転車の“パトロール”を行っています。
Aさんがいつも取り締まりをしている場所は、WEBで予約する駐輪場。この日も、バイクが止まっているのを見付け、スマホでこの車両が正規に止められているのかどうか確認します。調べた結果、止まっていたバイクは問題なし。しかし、横のフェンスに立て掛けてあった自転車は、予約をしていない不正駐輪でした。
Aさんは、手提げカバンからサイバーGの赤いチェーンを取り出し、逃げられないようにフェンスと車体を固定。これで、取り締まりが完了です。1回あたり600円の報酬になるそうです。さらに別の場所でも、違法駐輪のバイクを発見してロック。今月、22台目の取り締まりです。※6日時点
(副業で取り締まりをするAさん)
「最初は大丈夫かなと思ったけれど。成果が上がれば収入が増えるという楽しみもある」
所有者がロックを解除するためには、警告札のQRコードから、罰金(損害賠償金)を会社に支払わなければなりません。金額は、自転車の場合1日約5000円。バイクの場合は3万円です。
(サイバーGを導入している駐輪場業者)
「導入して良かったなというのが正直な感想。駐輪スペースに置かれてしまうと、その場所が実質使えなくなってしまうし、(止められない契約者に)返金することになる。商品があるのに勝手に使っているのは、万引きされるのと同じような感覚」
専門家の見解は“グレー” 「法的には問題ありと言わざるを得ない」
しかし一方で、自転車ユーザーからは、懸念する声も出ています。
(10代)
意図としては悪くないと思うけど、ちょっとやりすぎかな。もっと違うやり方がある気がする」
(70代)
「それって合法ですか?難しい問題ですよね」
行政でも警察でもない一般市民による取り締まり、他人の自転車をロックする行為には、法的な問題はないのか。法律の専門家に聞きました。
(セントラル法律事務所・柴垣直哉弁護士)
「残念ながら、ちょっと法的には問題ありと言わざるを得ない。勝手にロックをかける行為は、自転車を運用できなくさせてしまう側面がある。所有者以外の人が、そこまで財物の効用を失わせてしまって、財産権の侵害にならないのか」
また、罰金の請求も、合法かどうかはグレーだといいます。
(セントラル法律事務所・柴垣直哉弁護士)
「勝手にロックをかけられて、一方的に罰金額を提示されて。お金を請求できるかどうか、法的には怪しい」
(サイバーG・奥田雄一社長)
「不正者が損害賠償金(罰金)を払うことで、“即時”ロックを解除できる仕組みにより、法律はクリアできていると考えている。クレームはゼロではないが、世の中から不正駐輪がなくなることを目指して、これからも展開していきたい」
合法かどうか、さまざまな見解もある新しい取り締まりビジネス。しかし、その背景には、自転車を利用する側の非常識があることは言うまでもありません。
CBCテレビ「チャント!」8月19日放送より