夏の必需品「ハンディファン」が突然”爆発” リチウムイオン電池による火災事故で死者も
パソコン、スマホから電気自動車まで。今や生活に欠かせない「リチウムイオン電池」。しかし、小型で出力も大きい一方、実は危険性も。特に夏に多いのが“電池の爆発事故”です。
ハンディファンの爆発事故は5年で45件
年々暑くなり続け、今や命の危険もある日本の夏。もはや携帯型扇風機ハンディファンを手放せないという人も。しかし、ハンディファンの爆発事故は、過去5年で45件も発生。ケガをした人も出ています。
工業製品などの安全性を調べる国の機関「NITE」の実験では、マネキンが首にかけたハンディファンが、胸元で爆発する映像が。発火の原因は、中のリチウムイオン電池です。リチウムイオン電池に強い力が加わると、発火の恐れがあるそうです。
(NITE安全広報課・清水与也さん)
「携帯扇風機の事故が発生した理由は、落下などの強い衝撃が加わった後に充電したことによって、爆発したもの。中にリチウムイオン電池が入っていて、その電池の構造を破壊してしまうと、発火するリスクが発生する」
名古屋市消防局の協力で、リチウムイオン電池のバッテリーに油圧ジャッキで力を加え、変形させていく実験をしました。変形させていくと、メシっという音がなり、その後、ドカンと大きな音をたてて爆発。バッテリーが変形したことで、内部がショートして爆発しました。
炎天下の車内は60度に 置き忘れたモバイルバッテリーが発火
リチウムイオン電池は、多くの人がスマホの充電などに持ち歩いているモバイルバッテリーの中にも使われています。夏に、モバイルバッテリーを炎天下に停めた車に置き忘れると、とても危険です。
NITEの実験映像を見ると、夏の車内は60度にまで温度が上昇。そのまま3時間経過すると、バッテリーが膨れ上がり、激しく煙が噴き出します。そして、次の瞬間、バッテリーが爆発。燃えやすい物があれば、車全体が火災になりかねません。
(NITE安全広報課・清水与也さん)
「リチウムイオン電池全般に言えることですが、基本的には落下などの衝撃に弱く、外の気温が高くなる熱にも弱い」
爆発事故は増えていて、枕元で充電する時や、カバンの中でも起こっています。2024年8月には、電車の車内でも発生。南海電鉄の車内で男子中学生が背負っていたリュックサック内のモバイルバッテリーが発火しました。誤って可燃ゴミに混ざっていたモバイルバッテリーが発火したこともあります。
事故はリチウムイオン電池の工場でも。2024年6月に、韓国・ソウル郊外の工場で起きた火災では、死者23人、重軽傷者8人の大きな事故になりました。防犯カメラの記録映像を見ると、1つのバッテリーから出火し、消火器でも全く消せず、爆発的に火が広がったことが分かります。2021年、中国でもリチウムイオン電池のリサイクル工場で大爆発が発生。1人が死亡しています。
“過充電”にも注意 わずか7分で白い煙が
小さくて軽い一方、出力が大きく充電も早いリチウムイオン電池ですが、不良品の場合は「過充電」になる恐れも。過充電になると、発火する可能性があります。
名古屋市消防局による過充電の実験を見てみます。リチウム電池が100%になった後も充電し続け、1分後に表面温度を測ると、実験開始からわずか1分で47度に。そして、7分経つと、90度を超えました。ここで急激な変化が起こり、白い煙が出てきます。これは、中で発生したガスが外に出ている状態。白く見えるのは可燃性のガスです。やがて、爆発しました。
今や社会を支えるリチウムイオン電池。より軽く、高出力で安いものが増える中、そもそも取り扱いに注意が必要な“危険物”であることも改めて知る必要があります。
CBCテレビ『チャント!』8月6日放送より