CBC web | 中部日本放送株式会社 / CBCテレビ / CBCラジオ

ファン感涙!ドラゴンズ吉見一起投手が引退マウンドで語った“愛”

ファン感涙!ドラゴンズ吉見一起投手が引退マウンドで語った“愛”
論説室コラム

ファン感涙!ドラゴンズ吉見一起投手が引退マウンドで語った“愛”

 2020年11月10日(火) 11:15
北辻 利寿
北辻 利寿
「サンデードラゴンズ」より吉見一起投手©CBCテレビ

「妻なしで今の僕はありません」
こんなにストレートに妻への感謝の言葉を伝えることができることを、心からうらやましく思った。中日ドラゴンズの吉見一起投手の引退セレモニーは沢山の“愛”にあふれていた。

「19」への惜別に沢山のファン

ナゴヤドームの観戦風景©CBCテレビ

引退試合はドラゴンズの本拠地ナゴヤドームでのシーズン最終戦に合わせて、2020年11月6日に行われた。現役15年間、通算90勝56敗、防御率2.94。タイトルは最多勝2回、最優秀防御率と最高勝率それぞれ1回。2010年と11年のドラゴンズ球団初のリーグ連覇を含め、落合博満監督に率いられた“黄金期”にエースとして活躍した。背番号「19」最後の雄姿を目に焼きつけようと、ナゴヤドームのナイターには、新型コロナウイルス対策での入場制限数ほぼいっぱいのファンが詰めかけた。
入場口では背番号「19」と写真が印刷されたA3サイズのプレートが配布された。ちょうど2年前の岩瀬仁紀、荒木雅博両選手の引退試合でも同じ背番号プレートが用意された。しかしこのプレート、両手で掲げると拍手ができない、拍手をするとプレートを持つことができない、おまけに新型コロナ対策で声を出すことは禁止されている。どうしたものかと今回も観客席で少々困った。

マウンドを清める姿に涙

「サンデードラゴンズ」©CBCテレビ

そんな迷いの最中にゲームは始まった。吉見投手は先発して打者ひとりのみと対戦した。先発の柱として活躍した吉見投手は、マウンドに上がると愛おしそうにプレートを撫でた。そして東京ヤクルトスワローズの山崎晃大朗選手に相対した。絶妙のコントロールで木下拓哉捕手がミットを構えたところに、正確に投げ込んで空振り三振を奪った瞬間、ドームは大歓声に包まれた。
ゲームは中断、両チームから花束が贈られた。ドラゴンズからは吉見投手の背中を追いかけてきたと語るエース大野雄大投手、そして「誰だろうか?」と思っていたヤクルト側からは森岡良介コーチだった。2002年ドラフト1巡目でドラゴンズに入団した森岡コーチ。1984年生まれで吉見投手とは同い年、そしてかつての同僚。粋な人選だった。
そして吉見投手は花束を抱えながら、再びマウンドに戻ってしゃがみ込み、プレートを手で清めたのだった。本人万感の“別れの儀式”を目の当たりにして目頭が熱くなった。

黄金期を語った吉見投手の“言葉”

ナゴヤドーム106ビジョン©CBCテレビ

試合は延長戦にもつれこみ、ゲームセットは午後10時近かった。それでも沢山のファンが観客席で待っていた。
シーズン終了のセレモニーに続き、いよいよ背番号「19」の引退セレモニーが始まった。巨大スクリーン106ビジョンに吉見投手活躍の歩みが映し出される。強かった落合ドラゴンズ時代をあらためて思い出すと共に、それをエースとして支えた吉見投手の存在を懐かしい映像で再確認した。
花束のプレゼンターは岩瀬仁紀さん。竜の「投手王国」を支えた両雄を大歓声が讃える。そして吉見投手の挨拶。語る“言葉”に魅力がある吉見投手だけにとても楽しみだったが、とても素晴らしいものだった。
それは「感謝」のオンパレードだった。プロ野球の厳しさを教えてくれた落合(博満)さん、この世界で生きる道を示してくれた森(繁和)さん、打たれても俺の責任だから低く投げてこいとリードしてくれた谷繁(元信)さん、具体的に3人の名前と理由を挙げた上で、同僚の選手、トレーナー、トレーニングコーチそしてブルペンキャッチャーまで感謝を述べた。そして・・・。

妻へのストレートな思いに震えた

「サンデードラゴンズ」©CBCテレビ

「そして何より妻と出会えたこと。妻なしで今の僕は間違いなくありません」
こう続いた挨拶を観客席で取材メモに書きつけながら、我ながらとても興奮していた。
「わがままな僕、自分勝手な僕、常に僕を優先して支えてくれました」
妻には自分以上に苦労があったと、最も時間を割いて奥様への感謝の言葉を語った吉見投手。1万7000人近い観客や関係者の前で堂々と妻への“感謝”と“愛”を語ることができる潔さそして強き思い。再び目頭が熱くなった。
3人の息子さんから花束をもらって思わず愛息を抱きしめる吉見投手の姿にまたしても感涙。吉見一起らしい“言葉”があふれていた挨拶の締めのひと言はこれだった。
「野球の神様 ありがとう」
力強い声がナゴヤドームに響き渡って、感動のセレモニーは幕を閉じた。

一夜明けて、前夜の余韻に浸りながら通っているスポーツジムに出かけた。入口のシューズロッカー、最上段のためいつもは選ぶことがない扉に思わず手を伸ばす自分がいた。
ロッカーキー番号はもちろん「No.19」だった。

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

 前の記事

次の記事