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“根尾昂”を活かせなかった監督~検証・与田ドラゴンズ3年の光と影(前)

“根尾昂”を活かせなかった監督~検証・与田ドラゴンズ3年の光と影(前)
論説室コラム

“根尾昂”を活かせなかった監督~検証・与田ドラゴンズ3年の光と影(前)

 2021年10月19日(火) 11:10
北辻 利寿
北辻 利寿
「サンデードラゴンズ」より与田剛監督©CBCテレビ

「優勝をめざしたが、私の力が及ばずこのような成績。申し訳ない」
今シーズンで中日ドラゴンズのユニホームを脱ぐことが決まった与田剛監督は、本拠地バンテリンドームでの最終戦セレモニーでファンに対してこう語った。スタンドの一角で見つめながら、あらためて与田ドラゴンズの3年間に思いを馳せた。

ルーキー根尾昂を起用せず

勝負の世界に「もし」とか「たられば」を持ち込むことに批判を受けることは重々承知の上で、あえて言う。与田監督が、新監督として迎えた2019年ペナントレース、開幕戦から根尾昂選手をスタメン起用していたとしたら、何かが大きく変わったのではないだろうか、と。当時のチームは球団史上で最も長いBクラス低迷にあえいでいた。特に選手については思うような新陳代謝が進まず、応援するファンとしてもイライラ感が飽和状態を迎えていた。そんな中で就任した与田監督は、初仕事のドラフト会議で4球団が1位指名で競合した高校球界のスーパースター根尾昂選手の当たりくじを引き当てた。与田新監督とルーキー根尾、この2人にドラゴンズファンだけではなく、全国から熱い視線が注がれた。

チーム改革の“象徴”では?

「サンデードラゴンズ」より根尾昂選手©CBCテレビ

スタートラインで必要だったのは「チームはこれまでとは違う」「チームは変わったのだ」という力強いアピールだったはずだ。だからこそ、その“象徴”として与田監督は当然のように「開幕スタメン・根尾昂」を起用すると信じていた。根尾選手の現状から推測すれば、当時10試合ほどスタメンで起用しても思うようにヒットも出ず、2軍で鍛え直すことになったかもしれない。しかし、ひょっとしたら・・・。新監督のチーム改革への“根尾効果”は大きかったはずだ。結局、根尾選手は1年目のシーズン最終盤に1軍で2打席のみ出場、2年目も夏に1軍に昇格してプロ入り初ヒットを記録するも定着できず。3年目の2021年シーズンは開幕1軍を勝ち取り、プロ初ホームランをバンテリンドームでの満塁弾という劇的なシーンも披露したが、後半戦からは2軍での日々と本格的な開花はできなかった。「根尾昂」というブランドインパクトは、時の流れに追い越されつつある。

ドラフト指名で輝いた右腕

「サンデードラゴンズ」より石川昂弥選手©CBCテレビ

与田監督の3年間を語る上で「ドラフト会議」は欠かせないテーマである。根尾選手に続き、2年目には、こちらも高校球界のスター石川昂弥選手を、3球団競合の末に獲得した。石川選手については、直前まで投手を指名すると見られていた福岡ソフトバンクホークスが指名に参画、王貞治会長が「欲しかった」と悔しがったほどの打者であり、竜党としては“世界の王”からのお墨付きに大喜びだった。ドラフト3年目は、高校球界屈指の好投手である高橋宏斗選手を単独指名で獲得した。根尾、石川、そして高橋の3人は球団が運営する少年野球チーム「ドラゴンズジュニア」で活躍していただけに、竜党の喜びも大きかった。与田監督“右腕の力”は球団グッズにもなったほどだ。

若竜のチャンスは少なかった

バンテリンドーム ナゴヤ:現地観戦の様子

しかし、この3選手はじめ与田体制下で獲得した選手の中で、開花した若竜はいない。根尾選手はチャンスを与えられた方だろう。ドラゴンズの若手野手については、多くの野球評論家や他球団の指導者たちも「有望な選手が多い」と評価するが、1軍で活躍する機会は少ない。“将来の4番”と期待される石川昂弥選手も、ルーキー年に1軍に上がり初打席初ヒットをツーベースで飾って非凡さを見せたものの、いつのまにか1軍を離れ、2021年シーズンはずっと2軍。打撃センスが光る岡林勇希選手は、根尾選手と共に2021年開幕1軍に入ったが、わずか1打席で2軍に逆戻り、シーズン最終盤になってようやく1軍で打席の機会が増えた。この他、石垣雅海、石橋康太、そして郡司裕也といった打者たちも1軍での打席チャンスは少ない。後半戦から1軍に上がってきた伊藤康祐選手はスタメンわずか2試合の後は長くベンチを温めた。秋口には18歳ルーキー土田龍空選手がスタメンに抜擢されたが、こちらも先発は1試合だけで、まもなく2軍へ。アリエル・マルティネス捕手とジャリエル・ロドリゲス投手も“助っ人”という立場ながら育成選手出身。2020年に支配下登録された時は、アリエル24歳、ジャリエル23歳と“若手”だった。与田監督は「若い力に期待する」と折々発言してきたが、現実の采配は大きく乖離していた。

星野仙一監督の魅力に学べ

バンテリンドーム ナゴヤ:現地観戦の様子

長いシーズンを勝ち抜くためには、時としてチームに勢いをつけることが必要であり、その“起爆剤”として若い力は欠かせない。故・星野仙一さんは監督時代、若手起用が本当に上手かった。近藤真一投手、立浪和義選手、山本昌投手ら大胆に起用する瞬間もあれば、辛抱強く待つこともした。その星野監督の下、1990年の開幕ゲームで華々しいデビューを飾ったのが、剛球を売り物にしていた与田剛投手だった。その瞬間の記憶は、与田監督の脳裏に焼きついているはずだ。だからこそ、若手起用に期待した3年間だった。「波乗りが下手なサーファー」と、その采配を当コラムでも名づけたが、実は素晴らしい波は、この3年間、度々押し寄せていたはずだった。

2021年10月14日バンテリンドーム。かつてドラフト1位指名の時、大きな注目を集めた根尾選手も石川選手もベンチに姿はなく、前の試合に代打で出場し強烈な2ベースを放った石垣選手は、この試合、スタメンどころか代打での出番もなかった。与田ドラゴンズの3年間を象徴したような本拠地最終戦だった。                         

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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