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「根尾昂に威圧されました」ドラゴンズ伝説のスカウトも驚いた18歳のオーラ

「根尾昂に威圧されました」ドラゴンズ伝説のスカウトも驚いた18歳のオーラ
論説室コラム

「根尾昂に威圧されました」ドラゴンズ伝説のスカウトも驚いた18歳のオーラ

 2019年2月8日(金) 10:10
北辻 利寿
北辻 利寿

「地下鉄で優先席に座ると時々居心地が悪いんだよなあ」
今年の亥年で7回目の年男を迎えたかつての名スカウトは苦笑いしながらこう話した。
名古屋の市営地下鉄は車両によって、あるメガネ会社の広告ポスターが掲示されている。その中の写真ではかつて自らがスカウトしたプロ野球選手が微笑んでいる。
「何だかじっと見つめられているような気がして」落ち着かないそうだ。
ポスターの中にいるのは中日ドラゴンズで1980年代に“抑えの切り札”として活躍した牛島和彦さん。イメージキャラクターだ。そして愛おしそうにこの話を語るのはドラゴンズスカウトだった法元英明さん。今年84歳になる。
そんな法元さんが最近初めてあった時に大いに驚かされた野球選手、それがルーキー根尾昂選手だと言う。

沖縄キャンプ熱く燃える

ドラゴンズの沖縄キャンプは、かつて経験のないほどの事態を迎えている。
肉離れのため2軍でキャンプをスタートした根尾選手の毎日の動きはもちろん、松坂大輔投手が披露した背番号「18」のユニホーム姿、与田剛新監督の厳しい視線と明快なスピーチ、その与田監督と交遊があり米メジャーでも大活躍した野茂英雄さんのキャンプ訪問など、テレビでは全国ニュースで紹介され、新聞でも大きく紙面を飾る。全国から大勢のファンがつめかけている。それも連日である。
こんなに注目を集めることはドラゴンズにとって相当長い間なかったことと記憶する。
「見られる」そして「注目される」ということはプロの選手にとって、間違いなく大きな刺激になる。選手たちには好影響と拝察する。

法元スカウトと歴代竜戦士たち

「伝説のスカウト」法元英明さん

法元英明さんは1956年(昭和31年)にドラゴンズに入団し、外野手そして一時期は投手として活躍した。
法元さんの実力は現役時代ももちろんだが、引退後のスカウトとして大きく開花した。三沢淳、田尾安志、都裕次郎、小松辰雄、牛島和彦そして井上一樹らドラゴンズ球団史のページを飾った沢山の選手たちの入団にスカウトとして関わった。
著書『ドラマは球場の外にある』(ぴあ・2017年)にはそんな選手たちとの入団前後のエピソードが綴られている。法元さんの根底にあるのは、それぞれの選手に対する「愛情」である。選手だけではく「愛情」は選手の家族にまで注がれる。それはとても深く、かつ選手の入団後も退団後もずっと続いている。

牛島投手に寄り添った思い出

1986年(昭和61年)に牛島選手が当時ロッテ・オリオンズだった落合博満選手とのトレードが決まり、大変なショックを受けた時は「一緒に野球を辞めてやる」とまで宣言して、その気持ちに寄り添った。
ポスターの中の牛島さんは、法元さんにとって特別なひとりである。ポスターの微笑を見る度に「俺が獲った選手だ」と思い出は走馬灯のように巡り、何となく居心地が悪くなるのだと言う。
そんな数えきれないほどのプロ野球選手を見続けた84歳の名スカウトが、去年の秋に出会ったひとりの高校生に強烈な印象を受けた。それが根尾昂選手だった。

根尾選手の恐るべき魅力

ドラゴンズが2018年ドラフト会議において1位指名で獲得した根尾選手、入団交渉が行われた名古屋市内のホテルに法元さんも出かけた。大阪桐蔭高校の関係者からお誘いがあったためで、そこで根尾選手と初めて対面した。
「威圧された」
法元さんは初対面の印象をこのひと言でふり返る。
「威圧された。向こうは18歳なのに」。
これが根尾選手の持っている空気感だった。
驚きは続く。周囲がトレーニングについて指示しても、とにかく自分の気が済まないと納得しない選手だと言う。与田監督も驚いていたと法元さん。
「朝5時からトレーニングをやっているらしい」と興奮気味に語ってくれた。
その根尾選手も沖縄の空の下、真新しい背番号「7」を背にシーズンに向けて練習を続けている。

根尾選手はいつ1軍に?

ファンの熱狂の中でも根尾選手はいつも通りの表情だ。そこに浮ついた空気は感じられない。名スカウトだった法元さんが感心した“空気感”を漂わせながら。
6年連続Bクラスのドラゴンズ。かつて2004年に落合博満新監督は「補強は一切しない。今の戦力が10%ずつ力をアップすれば勝てる」と宣言し、有言実行で優勝した。しかしその前年は2位、さらにその前は3位と地力あるチーム状態でもあった。
長年Bクラスが続くチームが上昇するためには、通常ではない「よほどの覚悟」が必要である。もちろん選手たちの猛練習、しかしそれと共にチーム変革の起爆剤として背番号「7」は欠かせない。1軍への合流が本当に待ち遠しい。ただこの段階で無理は禁物、開幕までまだまだ時間はある。

「とにかくチーム内でのケアを厚く」と法元さんはまるで自らがスカウトした選手のように根尾選手を思いやる。竜愛の人である。ファンのひとりとしても、この“名スカウト”と同じ思いで、ルーキー根尾昂選手の順調な歩みを心から願っている。

【CBCテレビ論説室長・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。

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