CBC web | 中部日本放送株式会社 / CBCテレビ / CBCラジオ

MENU

性行為で感染する?胃がんの原因「ピロリ菌」

性行為で感染する?胃がんの原因「ピロリ菌」

胃がんや胃潰瘍に関係することは広く知られている「ピロリ菌」。ある人とない人、なかったのに今はあると言われた人、どうして差が生まれるのでしょうか?5月2日放送のCBCラジオ『北野誠のズバリ』では、心療内科本郷赤門前クリニック院長で医学博士の吉田たかよし先生がリスナーの質問に回答します。

関連リンク

この記事をradiko(ラジコ)で聴く

初めて「ピロリ菌がいる」と言われた

まずは相談の内容を詳しく見てみましょう。

「先日人間ドックを受け、その結果が届きました。今回初めて胃にピロリ菌がいるという判定が出ました。60年生きてきて初めてです。珍しい菌ではなく、除菌の薬を飲めば取り除けるということで薬が処方されました。

ここでふと思いました。いったいどこから感染したのだろう?

実は数年前、嫁に同じ診断が出て、その時も嫁は薬を飲んで除菌していました。実は私たち夫婦、今でも夫婦の営みが普通にあります。これは超濃厚接触なわけで、これによって、ピロリ菌がうつることはないのか、嫁としながら少しもやもやします」(Aさん・59歳男性)

ピロリ菌はどうして感染する?

そもそもピロリ菌はどういう経緯で感染するのでしょうか?

吉田「中高年になるとピロリ菌で胃がんと胃潰瘍になる人が多いですが、ほとんどが5歳から幼少期に感染しています。

多いのは、水道が通っていない時代にピロリ菌がひそんでいる井戸水を飲んで感染したり、感染している親から口移しで食事を与えられ、こどもも感染したりするケースです。
6歳以上になると胃酸とか胃の粘膜のige抗体が発達してきて、ピロリ菌が胃に入ってきても、免疫力で撃退できるようになります。

だから5歳までは口移しはしない。同じスプーンやお箸を使うことも控えるべきだし、できれば同居している親、祖父母はピロリ菌検査をして、感染していたらこどもに移さないためにも除菌しておくことが望ましいです。

ちなみに虫歯菌も3歳まで感染しなければ、虫歯になりにくい体質になりますので、口移しは二重、三重にやってはいけないです」

性行為で感染する可能性

性行為で感染することはあるのでしょうか?

吉田「感染者とディープキスをすると、ピロリ菌が口の中に入ってくることはあります。
ただ、大人の場合は胃の粘膜のige 抗体も胃酸も強力になっていますので、通常は感染しないです。

しかし胃の状態によっては感染することもあり、具体的には胃潰瘍などで胃酸の分泌を抑える薬を飲んでいるとか、萎縮性胃炎で胃の粘膜の免疫力が低下している場合は、大人でもピロリ菌に感染することはあります。
大人になってからの感染率は年間0.3パーセントから0.5パーセント。少ないけどゼロではないです」

リスナーAさんが感染した可能性はありますか?

吉田「パートナーの方も除菌されているので、可能性は低いと思います。大人になってから感染する人がごくわずかなのに、人間ドックの検査で、以前はピロリ菌がいなかったのに新たな検査で感染している結果だったというケースは結構多いです。

これは検査の方法の問題です。ピロリ菌の検査方法はいろいろあります。信頼性の高いのは特殊な尿素を飲んでもらってその後、吐く息の成分を調べる、尿素呼気検査。これはとても正確で感度95%~98%で、除菌をするかどうかの判定にも使われます。

一方人間ドックでは、血液の抗体検査を行う場合が多いです。便利ですが感度は85%~90%で、間違って感染していないと判定されることも結構あります。おそらくご相談者はこの可能性が高いと思います」

日本人には胃がん患者が多い

そもそも「ピロリ菌」があると胃潰瘍とか胃がんになりやすいのでしょうか?

吉田「ピロリ菌が胃がんを起こすかどうかは、ピロリ菌の遺伝子で決まります。アフリカとインドなどの南アジアではピロリ菌の感染者がものすごく多いのに、胃がんになる人はとても少ないです。

なぜかというと、こういう地域ではピロリ菌がCagA 遺伝子を持たないか、持っていても胃がんを生み出しにくいタイプが多いからです。

一方、日本、韓国、中国、ピロリ菌が胃がんを生み出しやすいCagA遺伝子を持つタイプなので、胃がんになる人が突出して多いです」

胃がんの98%はピロリ菌が原因

吉田「毎年、全世界で100万人が胃がんを発症しますが、そのうち65万6000人、全世界の65%が日本、韓国、中国に集中しています。

日本の胃がんのうち98%がピロリ菌の感染に起因している。これは日本胃がん学会の調査です。だから、日本の胃がんのほとんどが、ピロリ菌の感染がなければ発症していない可能性が高いです」

最後にピロリ菌の除菌について語る吉田先生。

吉田「ぜひともおすすめしたいです。胃酸を抑える薬と2種類の抗生物質をセットで7日間飲んでいただくだけで、それで70~80%は除菌に成功します。

もし除菌できなかった場合は、少しだけ薬を変えてもう1回除菌を試みますが、それでも除菌できない場合は全体でも7、8%いますが、ぜひ除菌してください」
(みず)
 

この記事の画像を見る

オススメ関連コンテンツ

PAGE TOP