中日OB・川上憲伸、北京五輪負け投手。帰国のつらさを吐露
ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が開催中の3月14日、CBCラジオ『若狭敬一のスポ音』では、元中日ドラゴンズ投手で野球解説者の川上憲伸さんに、国際大会の代表チームに参加する難しさについて聞きました。川上さん自身が日本代表で出場した2008年の北京オリンピックを振ります。聞き手は若狭敬一アナウンサーです。
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まず北京オリンピック3位決定戦の裏側について。
日本はアメリカとの3位決定戦で、4対4の同点から川上さんは和田毅さんの後、二番手で投げています。
この日は投げない予定だったのに一体何があったのでしょうか?
川上「なんとなく、ブルペンで、僕ひとりキャッチャー相手にキャッチボールしてたんですね」
「ちょっとキャッチャー座らせてみないか」という話になったそうです。しかし川上さんは、遊びのキャッチボールだし、ましてオリンピックの大舞台。固辞したそうですが…。
「一応座らせて」とベンチからの指示。なんとなくやっていたら、「ワンアウトです」とか「ランナー一塁です」とか試合経過を知らせに来る人が現れたんだとか。
プロ野球では、ブルペンで次に登板するかもしれないピッチャーに対しては、心の準備やタイミングのために、試合状況を伝える人がいます。
ゲートが開く
そもそもこの日は投げる予定のなかった川上さん、キャッチャーを座らせても軽くキャッチボールを続けました。
試合状況を伝える人に対しても、「いらないので大丈夫ですよ」と断ったそうです。
川上「そしたら電話がかかって来て、『憲伸、もしダブルプレーになったら次のイニング行けるか?』になっちゃったんですよ」
「ちょっと待ってください」と言おうとした瞬間にダブルプレーになったそうです。
川上「お馬さんのゲートが開いたような感じです。ゲートが開いてぱっかぱっかと走ってった。走りながら『え?俺は何をやってんだ?』と思ってました」
心身ともにボロボロ
川上「僕を信頼してくれたのは嬉しかったんですけど(笑)」
アドレナリンは出ていたものの、やはり準備不足と疲労は大きく、4対8で日本は負け。川上さんは負け投手になってしまいました。
川上「当時、岩瀬(仁紀)さんが叩かれて『僕は国に帰れない』と言ってたけど僕も怖かったですよ。メダルも取れないし、僕は負け投手ですからね」
シーズン中とは違う使われ方をされた岩瀬さんは、北京オリンピックで10失点となり世論の空気は戦犯扱い。殺害予告が球団に届いているとも言われていました。
当時のドラゴンズの落合博満監督から「北京オリンピックで心身ともにボロボロになった中日ドラゴンズの選手を守らなければいけない」という発言もありました。
若狭「あの時は岩瀬さんのやられ方が強烈だったのでそっちを覚えてるんですが、川上さんも最後は負け投手。ドラゴンズの大エースと守護神がボロボロになって帰って来たのがものすごく心痛かった」
投げてしまう
北京オリンピックでの登板は川上さんが5回と最多です。
川上「でもリリーフは他にもいたんです。上原(浩治)とか藤川(球児)とか。マー君(田中将大)もいたんじゃない?」
若狭「川上、岩瀬、田中将大、涌井(秀章)、成瀬(善久)、ダルビッシュ(有)、上原、和田、藤川、杉内(俊哉)。錚々たるメンバーです」
川上さんは北京で疲れすぎて、帰国後のシーズン後半はなかなか復活できなかったそう。
川上「国を背負ってるとやっちゃうんですよ。シーズン中の自分たちのチームの試合だったら絶対断るところでも投げちゃうんですよ」
そもそも周りの選手たちもやる気満々。厳しい登板を打診されても、国を背負うと断る気にもならないとか。
勝った側、負けた側
若狭「岩瀬さんはどうでしたか?」
川上「僕自身もヤバいと思ったんで、岩瀬さんのことを気にする余裕がなかったです」
若狭「そんなにくるんだ」
ちなみに当時の監督は星野仙一さん。最後のミーティングで、「一生懸命戦ったんだから、胸を張って堂々と日本に帰ろう」と語ったそうです。
川上「勝ち負けはつくもんだからしょうがないと思いましたが、心の傷は深かった。ウ~ンという感じで悩んでました。それぐらい代表のユニフォームを着て戦うのは難しいと感じます」
若狭「前回2023年のWBCで日本が大谷(翔平)投手の三振で優勝を決めましたが、相手側には必ず敗者がいて、そっちも国を背負っている。そう思いを馳せるとすごいものがあります」
川上「だから面白いんだと思うんですけどね」
北京オリンピックの苦い思いを吐露する川上さんでした。
(尾関)
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