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なぜ「時効」はあるのか?

なぜ「時効」はあるのか?

犯人が逮捕され連日報道されている名古屋市西区主婦殺害事件。1992年市内のアパートで当時32歳の主婦が殺害された事件ですが、先月31日被疑者の女が出頭したことで、およそ26年未解決であった事件に終止符が打たれようとしています。殺人罪については15年前の刑法改正で時効が撤廃されており、これがなければ犯人が逮捕されることはありませんでした。11月11日放送の『CBCラジオ #プラス!』では、光山雄一朗アナウンサーが「時効」について、アディーレ法律事務所弁護士の正木裕美先生に尋ねます。

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裁判できない!

そもそも「時効」とは何でしょうか?

正木「一定期間の経過によって法的責任が問われなくなるものです。民事にも刑事にもあります。今回問題になっているのは、刑事事件における時効、公訴時効というものです。

日本では検察官が刑事裁判にかけて処罰を求めていくという制度になりますが、犯罪が行なわれてから一定期間が過ぎることによって、検察官が裁判にかけられなくなる期間のことを公訴時効と言います。

時効成立後にわかった事件は、裁判にできないために処罰ができないとなります」

コストの問題

「時効」が設けられている理由は何でしょうか?

正木「法律的にはいろいろな見解があります。長時間、時間が経つと社会的な影響が小さくなる、被害者の処罰感情が薄れて処罰の必要性が乏しくなっていく。長い時間が経つことによって刑事裁判に必要な証拠が見つからなくなっていく、または劣化していくということによって、刑事裁判にしても立証していくだけの証拠を集めるのが難しくなるという状況があります。

そのような証拠によって起訴をすることで冤罪のリスクもあがるということで、無制限なものを制限した方がいいのでは、という見解があります。

あとは捜査、裁判のコストです。ずっと何十年、何百年、時効がないということは捜査を続けなければならない。新しい事件は増えてくると考えると捜査のコストが膨大になっていくので、一定期間で区切りをつける必要があるなど、さまざまな理由から時効が必要と考えられてきました」

時効が撤廃

「時効」が設けられているものはどのような件でしょうか?

正木「長いものだと時効が30年ですが、不同意猥褻等致死や不同意性交等致死罪など、人が亡くなるようなものです。一方、軽いものでいうと時効が3年で、盗撮、公然わいせつ、住居侵入、暴行、脅迫というものがあります」

今回のケース、殺人罪については時効が撤廃されているということですが。

正木「もともと殺人罪には25年という時効がありました。しかし、殺人事件被害者のご遺族から一定期間が経過したからといって、罪に問えなくなる、逃げ得になるのは納得がいかない、時効を廃止して欲しいという訴えがありました。

2008年、2009年には被害者ご遺族の会が公訴時効の廃止を要望したという状況があり、法務省が調査を行なって改正に至ったという経緯がありました。

ただ対象がすべての時効がなくなったわけではなくて、人を死亡させた罪のうちに法定刑の上限に死刑があるものに限定して公訴時効がなくなりました。これが2010年4月27日でした。

この時点で時効になっていなかった、殺人、強盗殺人、強盗致死のような重い事件に関しては時効がなくなりました。一方、その前日までに時効が完成したものに関してはその時効で罪が問えなくなると線引きされました」

逮捕は増えるか

今後、過去の事件での逮捕は増えていくのでしょうか?

正木「増えて欲しいという期待はあります。少なくとも科学技術は大きく進歩しています。昔は採れなかった証拠が今だから採取できるようになっていることがありますので、さらに科学技術が進歩することを考えると、逮捕の事例が増える可能性は十分あると思います。

ただ科学技術が進歩したから全部の時効をなくすのがいいのか、重大事件に限った方がいいのかは、改めて我々国民が共通認識としてどうするのが正しいのか、議論する必要があると思います」
(みず)
 

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