同じバナナなのに味が違う?知られざる熟成加工の世界

10月1日放送のCBCラジオ『北野誠のズバリ』の「松岡亜矢子の地元に聞いちゃうぞ」コーナーでは、世界でもトップレベルの熟成加工技術を持つ株式会社タナカバナナ(三重県伊賀市)の取締役・長井健さんに話を伺いました。青いバナナしか輸入できない理由や、熟成加工によって味が変わる秘密など、知られざるバナナの世界を紹介します。
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この記事をradiko(ラジコ)で聴く調理用バナナとは?
最近、CBCラジオ近くのローソンストア100に「調理用バナナ」と書かれた大きな房のバナナが売られ始めているのを発見した松岡。
生食用ではなく火を通して食べるというこのバナナに興味を持ち、調べたところ、三重県伊賀市にある日本有数のバナナ加工会社・株式会社タナカバナナの存在を知りました。
長井さんによると、調理用バナナは、東南アジアや中南米、アフリカの一部で食べる習慣がある比較的甘くないバナナ。私たちが生食で食べているバナナとは異なり、蒸したり揚げたり焼いたりして、お芋のような感覚で食べるものです。
もち米とバナナを一緒に練って、ちまきのようなおやつとして食べるなど、むしろ調理して食べる地域の方が多いということです。
柿の渋抜き技術を応用
日本へのバナナ輸入は明治時代に台湾から始まりました。1960年以降はフィリピンからも解禁され、現在はメキシコ、ペルー、コロンビア、エクアドルという赤道に近い国々から、99.9パーセントを輸入に頼っています。
タナカバナナは明治初期に伊賀で生花店として創業。当初は三重や奈良の特産品である渋柿の渋抜き加工を主に行なっていました。
この渋抜き加工の技術がバナナの熟成加工に応用できることがわかり、バナナの熟成加工会社として成り立っていったのです。
なぜ青いバナナを輸入?
日本の法律では、青いバナナしか輸入できないという決まりがあります。黄色く熟したバナナは甘い香りで虫を引き寄せるため、植物検疫上、青い状態でしか輸入できません。そのため日本で熟成加工を行なう必要があります。
実は、北海道から本州の気候では、バナナを放置しても適切に熟成しません。黄色くはなるものの、甘くはならないそうです。
そこで、現地の気候を模した「室」(むろ)と呼ばれる施設の中で、温度と湿度を管理しながら、青いバナナのデンプン質を糖に変えるという熟成加工が必要になるのです。
同じブランドでも味が変わる
松岡が「熟成加工によって味が変わるんですか」と質問すると、長井さんは「非常にいい質問」と前置きして教えてくれました。
長井さん「加工屋さんの温度設定や加工の方法によって、ぱっと見は一緒に見えますが、味は非常に変わってきます」
同じブランドのバナナでも、仕上がりが変わってくるそうです。
長井さん「バナナはどれも一緒でしょっていう方も多いんですけれども、いろんなブランドのバナナを食べ比べて、こういう特徴があるんだと気づいていただけたら、熟成加工を生業にしている会社としては嬉しいです」
フルーツ会社の多くは自社で熟成加工せず、取引先の加工会社に依頼しているため、同じブランドでも加工会社によって味に違いが出てきます。業界の人たちは、バナナの首の部分を見るだけで加工方法がわかるそうです。
タナカバナナが生み出した革新
昭和のバナナは量り売りが主流でしたが、今は3~5本が袋詰めされて販売されています。実はこのパックバナナの販売を始めたのもタナカバナナだということです。
最近では少量でも食べたいという消費者ニーズに応えるために、コンビニなどで1本だけ袋に入った「スティックバナナ」が販売されています。この開発もタナカバナナによるものです。
タナカバナナは、バナナジュース店も運営しています。用途に合わせた熟成加工技術によって、バナナジュース用に最適化したバナナを作っているほか、今後はミックスジュース用のバナナの熟成加工も確立していきたいということです。
長井さん「生食の専門、バナナジュースの専門、ミックスジュースの専門、それぞれに一番おいしい状況の熟成加工を極めていきたいです」
品種で味の違いはありますが、それを加工によってバナナジュース用に最適化するという発想は、まさに加工会社ならではの技術力の証です。
バナナ選びの豆知識
最後に、バナナ選びの知識も教えてもらいました。
標高の高いところで作られている「ハイランドバナナ」は、一般的に甘みが強い傾向があります。一方、低地栽培の「ローランドバナナ」は糖度はそこまで高くなく、さっぱりとした味わいだということです。
バナナの加工会社は表に出てくることはあまりなく、ラベルにも書いていない完全な裏方の仕事です。しかし、こうした技術の進歩と挑戦があって、私たちはおいしいバナナを食べることができているのです。
(minto)
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