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赤字でも価値は高い?非営利社会福祉法人特有の事業承継

赤字でも価値は高い?非営利社会福祉法人特有の事業承継

昨今、少子高齢化により中小企業や小規模事業者の後継者難が大きな経営課題の一つとなっています。「人生100年時代」と言われているこの時代だからこそ、元気なうちに資産の管理や、のスムーズな承継について考えていく必要性が高まっているのです。CBCラジオ『北野誠のズバリ』「シサンのシュウカツにズバリ」では、事業承継と資産承継について専門家をゲストに学んでいきます。7月23日の放送では、「非営利法人の承継支援」について北野誠と松岡亜矢子が三井住友トラストグループ 株式会社経営承継支援 植田駿一郎さんに伺いました。

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非営利法人のM&A

今回は、非営利法人の承継支援について。

北野「非営利法人と聞くと、あまりM&Aって感じがしませんけど。どんな内容ですか?」

植田「売り手さんは、九州地方で「介護事業」をされていまして、法人格で言うと社会福祉法人となります。年間売上は1億円ほど、従業員さんは20名弱です」

M&Aの理由は何だったのでしょうか?

植田「理事長や役員の高齢化に加えて、業績も低迷していたため、最初は畳もうと考えていたそうですが、弊社からの手紙を見ていただいてM&Aを選択していただきました」

買い手は比較的スムーズに見つかり、同じく地元の介護事業者で、売上は20億円ほどで、こちらは営利法人でした。
以前から社会福祉法人が欲しいと思っていたそうです。

社会福祉法人特有の承継事情とは

実は社会福祉法人の1/3が赤字と言われており、従業員の高齢化も含めて承継問題については課題がある状況でした。

植田「ただ一方で、社会福祉法人の新規設立は所轄庁の許可が必要で、事業内容や規模によって 手続きも変わり、且つ手続きも煩雑。新規設立のハードルは高いと言われているため、「譲り受ける」という方法はとても効率的なんです」

北野「譲り受けるってことなら、事業をそのまま引き継げるってことだから効率的ですよね」

実際、国も社会福祉法人の承継を後押ししており、社会福祉法人業界でもM&Aが注目されているという背景があるそうです。

社会福祉法人はM&Aという扱いになるんでしょうか?

植田「厳密にいうと、M&Aとはちょっと違います。社会福祉法人は営利を目的としていないため株式や出資持分という概念がなく、そもそも株式を売るという概念がありません。つまり『M&Aのような譲渡の対価=お金』はないということになります。
基本的には、役員退職金規定に沿ってお支払いするのみ、になります」

よく「会社にお金が残っているため、どうにかして抜ける(支払う)方法はないか」 という相談もありますが、社会福祉法人は、補助金などの公的資金で 運営されているため、公私混同は絶対にNGだと植田さんは強く言います。行政の監視も非常に厳しく、よからぬことは考えないようにしましょう。

今回の件はいわゆるM&Aとは少し違う部類になりますが、事業を承継させるという意味では広義のM&Aと解釈されます。

行政に確認しながら100枚以上の書類を作成

ちなみに、どんな承継の方法があるのでしょうか?

植田「役員交代・事業譲渡・合併の3つのパターンがあります。役員交代を行うケースが多いですね。今回の事例も役員交代という方法で承継を行いました」

植田さんによると、売り手企業側の役員と、買い手企業側の役員を総とっかえするイメージとのこと。言うのは簡単ですが、これが非常に大変な作業になります。

絶対にミスは許されないため、行政にも確認をしながら進める必要があり、植田さんが依頼を受けた今回でいうと30種類以上、書類の枚数でいうと100枚以上の書類を作成して顧客から署名捺印をもらう、という作業がありました。

大変なこともありましたが、行政の確認も経て、無事に理事長に退職金もお支払いし、役員交代の手続きを無事に完了することができました。

北野「それはよかったですね。植田さん、今回の事例のポイントは?」

植田「社会福祉法人は非営利法人であり、公私混同は絶対にNGです。業績や財務内容が厳しくても参入障壁が高いので、承継させる可能性は高いといえます。ただし、営利法人と違い、行政への確認や書類の準備など、非常に専門的な知識と経験が求めれるので専門家に相談することが大切です」

通常の株式会社のようなM&Aとはいかないため、北野も「いま番組をお聞きの社会福祉法人の方でお悩みの方はぜひ一度問い合わせを」と呼びかけました。
(葉月智世)
 

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