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奈良・興福寺の阿修羅像が「美少年」と呼ばれる理由

奈良・興福寺の阿修羅像が「美少年」と呼ばれる理由

毎週木曜日の『ドラ魂キング』では、CBCの佐藤楠大アナウンサーが仏像に関するトピックを紹介します。5月1日の放送で紹介したのは、奈良県奈良市の興福寺にある阿修羅像。3つの顔と6本の腕を持つ、教科書にも掲載されるほど有名な仏像です。

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阿修羅はスーパースター

阿修羅像は興福寺国宝館で見ることができます。
奈良県の観光ホームページでは、興福寺国宝館を「仏像界のスターが集結する国宝仏の宝庫」と謳っています。

その中でも阿修羅像はスーパースターと呼べる存在。約1300年前の奈良時代、西暦734年に作られたそうです。

スラッとしたシルエットで高さは153.4センチで、平均的な仏像のサイズだとか。

野球で例えると

阿修羅像の顔は3つありますが、その位置は正面にひとつと、左右の耳の部分にひとつづつ。

また6本の腕のうち、2本は胸の前で合掌していますが、他の4本の位置をスポーツアナウンサーらしく説明する佐藤。

佐藤「2本の腕は、野球で例えると肩よりも手の位置が上でオーバースロー。残り二本の腕はサイドスロー。肩と手の位置が同じぐらいの高さです」

オーバースローの方は肘を肩の高さまで上げて、掌を上に向けていて、何かを支えているようにも見えます。

阿修羅は、ヒンドゥー教の元となるバラモン教では、武装して神々と対立する鬼神でしたが、仏教に取り入れられることで、荒々しいイメージか優しく変わり、仏を守護する戦闘神になったそうです。

漆独特の作り方

この阿修羅像は「脱活乾漆作り」という製法でできているそうです。
粘土の原型に麻布と漆を何層か塗り固め、乾燥させた後に、元の粘土をかき出して、中が空洞の張り子状になっているそう。

153センチの高さのわりに、重さは約15キロ程度という阿修羅像。当然強度はなく、1700年代に持ち運んだ際に腕が壊れてしまったそうで、明治時代に修復したとのことです。

この脆さゆえか、奈良時代以降「脱活乾漆作り」で作られた仏像はほぼなく、その面でも阿修羅像はレアだという佐藤。

佐藤「阿修羅像はお顔が非常に美しいんですよ。『美少年』なんて言われたりする。漆を何度も重ねることで細かい表現が可能。それ故に美しい顔の表現が成立するというわけです」

漆は粘着性が非常に高く、乾燥するまでにテコ入れができるため、理想の表現に向けて整えることができるそうです。

三つの顔の表情

美少年の3つの顔は、こどもの成長過程を描いたという説もあるとか。
佐藤独自の解釈で3つの顔を解説していきました。

向かって右側の顔は、目、鼻、口のパーツがキュッと真ん中に集まっていて、下唇を噛んで駄々をこねてるようなやんちゃな雰囲気。

佐藤「おもちゃ買ってよ、みたいなムッとしてる顔なんです。そんな幼い表情が向かって右の顔です」

向かって左の顔は少し成長して、瞳は何かを訴えかけているような困り顔。全体として悩みを抱えているような表情だとか。これを「思春期」と説明する佐藤。

正面の顔は青年期。顔のパーツそれぞれの間隔も空いて、優しさが溢れていて、涙袋の辺りがぷっくりしてるので優しい印象を与えるそうです。

佐藤「1300年前に作られた艶やかな肌の美少年、阿修羅像。皆さんの解釈で表情を見ていただきたい。3つの顔をじっくり眺めるだけでも楽しいと思います」
(尾関)
 

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