凶悪犯罪に加担することも。「闇バイト」の広告に注意!
最近「闇バイト」に応募して加わったと思われる容疑者が次々と逮捕されています。SNSやネットの掲示板などで「短時間で高収入が得られる」などと呼びかけて、応募すると詐欺の受け子や出し子、強盗の実行犯などに加担させられてしまう「闇バイト」。10月29日放送の『CBCラジオ #プラス!』では、「闇バイト」について、アディーレ法律事務所弁護士の正木裕美先生が詳しく解説します。
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「闇バイト」ではどんな形で募集される場合が多いのでしょうか?
正木「基本的にはネット上で募集されることが多いです。SNSやブログだったり、顔が見えないところで募集されます。募集の文言で多いのは『簡単な仕事、短時間で高収入が得られて即金で払われる』というようなおいしい言葉です。
バイトとはいうものの、犯罪行為の実行者の募集、これが『闇バイト』です。凶悪な事件も多いです」
指示役と実行犯
指示する役、それを受ける実行犯、それぞれどんな罪になるのでしょうか?
正木「指示役は犯罪そのものを自分の手で起こすわけではないけれど、計画をして下っ端に命令をします。これは首謀者という扱いになり、自分で直接手は下さないが、犯罪全体に関して犯罪が成立します。
例えば『強盗をしろ』と命令をしただけで、その人に対して強盗が成立するという形になります。
実行犯、自ら手を下したものは、自分がやった行為そのものにだけ犯罪が成立する場合もあります。
例えば、詐欺でATMでお金を出させるのは窃盗罪という罪になります。詐欺ではなく、窃盗罪のみが成立するというケースもありますが、一部しか関与していなくても、重要な役割を担ったと評価されるものに関しては、犯罪全体について共犯として責任を問われることがあります。
強盗の場合、見張りとか運転手は直接殴ったり、家に入ったりはしない。でも、この人たちがいないと犯罪は成り立ちません。そうすると強盗の共犯という形で重い罪が下されるケースがあります」
知らないで通るか?
知らずに加担した場合も罪になるのでしょうか?
正木「“知らない”のレベルによります。ただ一般的には認められないケースの方が多いと思います。
まず犯罪が成立するには故意が必要となります。故意とは、自分のしている行為が犯罪だとわかった上で、それでもかまわないという気持ちでやることをいいます。
とはいえ、そのレベルは自分のやっていることが何罪にあたるかまで認識していることまでが必要ではなくて、自分のしていることは違法かもしれない、犯罪かもしれない、程度の認識でも認められる可能性があります。
なので、一般に「闇バイト」の場合、募集の方法をみると実績や経験が何も問われない、しかし、簡単な仕事で短時間ですごい高収入が稼げたり、すぐ払われるということをうたっている。その募集自体でもおかしくない?と疑われるようなきっかけがある。
また、応募した後でも、DMを使ったり、テレグラム、シグナルというような秘匿性の高いアプリに誘導されて具体的な内容をやりとりするわけです。仕事の内容を説明された時点で、おかしいと疑うようなきっかけは多々あります。
となると、裁判になった場合、犯罪ではないかと疑うきっかけがあると認められて、無罪獲得は難しいというのが一般的なケースです」
個人情報を渡すと…
『犯罪かもしれない』と気づいても断れない若者が多いようですが、その背景は何でしょうか?
正木「一番は個人情報です。応募すると最初にすごく丁寧な言葉で向こうが要求してくるのは、顔写真や免許証などの身分証です。ご家族実家などを含めて、名前住所などさまざまな情報を要求されます。
『バイトの応募は履歴書を出したりしますし、個人情報を要求されることはそれと一緒ですよ』と言われれば、そうかなと思いがちです。
ところが、本来面接では要求されないであろう、余分な情報まで多々渡してしまう。そうすると『家族を含めて危害を加える』と、直接脅されている方もいらっしゃいますし、握られているということで恐怖心を抱いて反抗ができない方もいます」
逃げ出せない心理
正木「あとは『闇バイト』がこれだけ浸透してくると、犯罪だと気付くのが現場に向かっている最中とか、なかなか気づくタイミングが遅くて、どう逃げたらいいかわからないというケースもあります。
また犯罪心理もあって、数人でやるので、罪の意識自体も薄くなりがちです。そういう中で自分だけがやめると言いにくいとか。
一緒に行動している人間がだれか知らないので、首謀者側なのか、『闇バイト』なのかすらわからない。ここで反抗すれば自分が殺されるかもしれないという恐怖感もあります」
一刻も早く助けを求める
自分や家族が関わったときはどうすればいいのでしょうか?
正木先生「一刻も早く助けを求める、これにつきます。
最近、『闇バイト』の使い捨てが進んでいます。事件も凶悪化しています。強盗致死罪は法定刑が無期懲役か死刑しかないという重大な形です。
そういうことを『闇バイト』にやらせるのです。使い捨てのコマになっています。
犯罪の素人も多く関与していますので、どこまでやったら犯罪になるのか、何をやったら捕まりやすいとか知らないので、とても捕まりやすいです。どの時点でも早く引き返すことで罪自体も軽くなります。一刻も早く抜けて欲しいです」
相談場所・連絡方法など
警察では、家族含めて確実に保護すると呼びかけていますので、ぜひX(旧Twitter)もご覧ください。
もし抜けたい、保護して欲しいという相談があれば、専用電話#9110、もしくは最寄りの警察署に連絡してご相談ください。
20歳未満の少年に関する困りごと、相談は誰でも相談ができるヤングテレフォンや少年相談窓口が各県警に設けられています。
緊急の場合は110番でもいいし、近くの交番に駆け込むのでも大丈夫ですので、すぐに助けを求めてください。
法的な心配は最寄りの弁護士も相談に乗ってくれますので法的なアドバイスを受けることもひとつの手にはなります。
最後に光山雄一朗アナウンサーは「“えっ?おかしい”と思った瞬間にすぐに引き返してください。絶対に犯罪に手を染めて欲しくありません」と強く呼びかけました。
(みず)