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豪雨を人工的にコントロールできるのか?選ばれた主役は「ドライアイス」

豪雨を人工的にコントロールできるのか?選ばれた主役は「ドライアイス」
イメージ画像:「記録的集中豪雨を降らせる積乱雲」(写真ACより)

この夏も異常気象が続いた。ヨーロッパは熱波に襲われ、「美しく青い」と言われたドナウ川が干上がった。ネパールで起きた大洪水では被害の全容すら分からない深刻な事態である。日本列島も各地で集中豪雨による災害が頻発した。

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“攻めの防災”をめざす

そんな豪雨対策へ、ひとつのプロジェクトが進められている。雨をもたらす積乱雲にドライアイスを撒くことによって、線状降水帯などを“人工的にコントロール”しようというもので、富山大学や千葉大学など複数の大学による共同研究である。富山大学・学術研究部の濱田篤准教授はこうコメントを寄せた。

「堤防の強化などが“守りの防災”ならば、これは“攻めの防災”です」

ドライアイスで雲を発生

イメージ画像:「収穫間近の稲穂に打ち付ける豪雨」(写真ACより)

きっかけは、地球温暖化に伴う昨今の気象現象に、人の手が介入することで雨の量そのものを減らすことはできないかという考えだった。雲は、空気中の小さな氷の塊(かたまり)などがいわゆる“核”となって、そこに水蒸気などが付いて発生する。そんな積乱雲の中にドライアイス、“種”を撒くことで雲の“核”になってもらい、人工的に雲を発生させる。例えば、雨雲が上陸する前に海の上で雨を降らせて、その分、陸上で降る雨の量を減らして、集中豪雨のリスクを分散させようというものだ。

数値モデル実験で成果

研究チームは、2014年(平成26年)8月に、70人以上の死者、住宅4500棟以上の被害をもたらした「広島豪雨」をモデルに、スーパーコンピューターによって数値モデル実験を行った。その結果、ドライアイスを撒いた効果として、豪雨エリアの3時間雨量が、平均で11.5%、最も効果の大きかったところで32%も減少したことが判ったと言う。さらに、氷の粒を過剰に増やすことによって、水蒸気も多くの粒に分散し、雨粒も十分に成長できなかった。

フライト実験も実施

これを受けて、現場での実証実験も行った。2026年(令和8年)1月、富山湾の上空にプロペラ機を飛ばして、およそ30キログラムのドライアイスを、上空3000メートルの高さから数回にわたって散布した。初の実証実験だったため、いきなり雨の量を減らすことではなく、計画通りに飛行機を飛ばし、積乱雲に近づいてドライアイスを撒くことで、コンピューターでのシミュレーションとの整合性を確かめる目的だった。その結果、ドライアイスが“核”となった新たな雲列が発生したことも確認できた。

雲の位置を把握する重要性

イメージ画像:「市街地の先の積乱雲」(写真ACより)

今後の課題として、濱田准教授が挙げたのは、雲の位置の把握である。積乱雲はわずか数分の間で、急速に発達したり衰弱したりする。積乱雲ができ始めてから雨が降るまでの時間は、一般的に数十分程度だそうだ。積乱雲が発生してから飛行機をフライトしたのでは、現場に着くころには雨が降り始めてしまう。「今この瞬間の雲の様子」という言葉を濱田准教授は使ったが、飛行機の移動速度やドライアイスを撒く範囲などと合わせて、さらなる分析と研究が続けられる。

千葉豪雨についても実験へ

イメージ画像:「深刻さを増しているゲリラ豪雨」(写真ACより)

今回の研究は、内閣府が進める研究開発事業の支援を受けている。そこでは年々深刻さを増している豪雨のコントロール目標を2050年としている。研究チームは、8月のお盆に発生した千葉豪雨についても、再現実験を行う準備を進めている。そんな同じ8月には、実証実験が行われた富山県など北陸地方でも、「線状降水帯」による大雨によって、大きな被害が出た。おひざ元での豪雨被害に負けることなく、研究チームには“攻めの防災”へまい進してほしいと願う。

「異常気象」という言葉の「異常」が、今や「日常」に替わりつつある。地球環境の変化と向き合う人間の知恵の結集が、今こそ強く求められる。夏が終わっても、ウクライナ、そしてイランなど中東での戦火は続く。国家同士で争っている時間的な余裕はない。地球温暖化こそが向き合う相手であるはずだ。

【東西南北論説風(716)  by CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】

<参考資料>
線状降水帯による集中豪雨を人為的に分散 ―雲への種まき「シーディング」の数値実験―
(国立大学法人東北大学/国立大学法人千葉大学/学校法人法政大学/国立大学法人富山大学/国立大学法人京都大学)

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