お年玉はキャッシュレス希望が4割!お正月の伝統行事にも大きな変化
「お年玉」って不思議だ。袋の中にはコインではなく紙幣が入っているのに「お年“玉”」?そんなことを思ったこともある、昭和時代の幼少期には想像もできなかったことが、今、「お年玉」に起きようとしている。
4割がキャッシュレス希望

株式会社インテージが、全国の15歳から79歳の男女5,000人を対象に行った「お年玉」に関する調査結果を発表した。それによると20歳以下を対象に「お年玉をスマホのキャッシュレス決済でもらいたい」と答えた人が、38.5%だった。これは前年よりも8ポイントも増えて、この調査が行われてきた過去12年間で最高の数字だった。およそ4割が、現金ではなくキャッシュレス決済での「お年玉」を希望しているとは・・・。
ルーツは金銭を与えること
「お年玉」は、子どもたちにとって、お正月の最大の楽しみでもある。そのルーツはアジアの国々にあったとされ、新年に子どもたちに金銭を与えることが風習だった。特に中国では“お守り”として、貨幣を持たせたと言う。ただし、日本では、正月三が日を終えて鏡開きの時に、鏡餅を切り分けて手渡していたものが「お年玉」の習慣、もともとは貨幣ではなく餅だった。
日本での「お年玉」の歴史
「お年玉」という名前の由来は、鏡餅によって“新年の魂が子どもたちにも分け与えられる”という願いから「御年(おんとし)の魂」=「御年魂(おとしだま)」と呼ばれるようになったようだ。このように、もともとは神様からもらうものだったのだが、実際には、その家の“家長”である祖父母や親から、子どもに渡していた。核家族化も進み、一家で餅つきをする習慣も減っていき、手軽に用意しやすい「現金」にしようと変化したのが、高度成長期を迎えた昭和30年代だったと記録されている。
もともとは“手渡し”
餅と現金の間には、おもちゃ(玩具)を「お年玉」として渡していた時期もあったそうだが、いずれにしても「お年玉」は、年始の挨拶の際に“手渡しする”そして“手渡しされる”ものだった。それが、スマホでのPayPayなどQRコード決済が便利な時代になり、伝統行事である「お年玉」まで拡がりつつある。
9割が「現金で手渡ししたい」

実は、大きなギャップもある。今回の調査では「お年玉」をあげる側に、どのように渡すかを尋ねたところ、9割以上が「現金を手渡しする」と回答した。「自分の子どもに現金を手渡し」が90.7%、「孫に現金を手渡し」が91.1%、「親戚の子どもに現金を手渡し」が93.5%、その理由については「現金の方がありがたみが伝わる」「対面の方が反応や感動が大きい」という回答だった。渡す側が世代的に、スマホでのキャッシュレス決済に慣れていないことも大きな理由のようだ。しかし、キャッシュレス決済を求める声は、年々増えていく傾向であることは間違いない。
「お年玉」にも物価高の影
今回の調査では、「お年玉」の予算総額にも時代が映し出された。2024年(令和6年)1月に渡す「お年玉」の総額は2万5,099円、2025年(令和7年)は2万4,775円だったが、今回は2万4,039円と、2年連続で減り続けている。「物価高や円安がお年玉に影響する」と答えたひとが4割以上もいることから、「お年玉」を渡す側の財布事情も厳しくなっているようだ。
キャッシュレス決済、そして、長引く物価高。お正月の伝統行事にも、時代の移り変わりが大きく影響している。しかし、たとえ年に一度でも、大切な人とは顔を合わせて挨拶することは、忘れないようにしたいと願う。いよいよ新しい年が近づいてきた。
【東西南北論説風(656) by CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】



