マグネット土産にカップル南京錠、ヨーロッパで目撃した日本を越えるブーム熱

日本でも知られているものに海外で出合うと、親しみと共に新鮮な驚きもある。日本よりも熱いじゃないか。2025年(令和7年)初夏、ヨーロッパの街で見つけた2つの“流行りもの”風景である。
マグネットは“旅の思い出”

旅先の土産として、マグネットの飾りが登場したのはいつの頃からだろうか。もともとは米国で、自動車の車体に貼っていたものが始まりという説もあるが、日本全国の観光地では、今や必ず土産店の一角を占めている。先日も飛騨路を訪れた時、名物「さるぼぼ」のマグネットを見つけた。こうしたマグネット土産、買って帰って自宅では、多くは冷蔵庫の扉などに飾るようだ。その種類は増えている。乗り物や動物はもちろん、観光名所の風景をそのままマグネットにしたもの、さらに一般公開されている有名な仏像などが登場する古式ゆかしき品物もある。インターネット上では、自らのマグネットコレクションを披露している方も多い。
圧倒的な人気の土産品

今回ヨーロッパでの驚きは、土産店で売られているマグネットの数や種類が、半端ない多さだったことだ。例えば、イタリアのローマで見たマグネットたち。コロッセオ、サンピエトロ大聖堂、トレビの泉、さらにこうした名所複数の集合体もある。有名な「最後の晩餐」風景や、イタリア生まれの人気キャラクターであるピノキオもあった。ジュネーブのレマン湖畔では、名物の大噴水の写真をマグネットにしたものが露店に並ぶ。パリのセーヌ河畔では、ローマ同様に観光名所の数々、エッフェル塔、凱旋門、ノートルダム大聖堂などのマグネットが売られていた。とにかく驚きの数とバリエーションだった。
マグネットは万国共通

マグネット土産の魅力は、その大きさとお手頃な値段であろう。手のひらに収まるサイズで軽くかさばらない。日本円にしておよそ400円から500円ほど、まとめて買うとさらに安くなる店もある。何よりも、日本全国47都道府県で共通の品物どころか、「万国共通」というところが強い。どこにでもあるからだ。集め始めると、コレクションとしては楽しい一品と言えるのだろう。買う人が多くなれば、売る側も品数を増やす。マグネット土産で“旅の思い出”を持ち帰る人が、世界中に多いことを体感した。しかし、これだけの種類があると、どれを選ぶか、本当に迷ってしまうだろう。
永遠の愛を誓う鍵

もうひとつ出合った“熱”は、観光名所のフェンスや橋の欄干に、カップルが南京錠をかける、いわゆる“儀式めいた”行為である。「ハートロック」とか「愛の南京錠」とか、その名称は様々だが、日本でもそんな錠がかけられている場所が数々ある。筆者が暮らす愛知県では、知多半島にある野間埼灯台(野間灯台)。愛知県の公式観光ガイドでも「恋人たちが訪れて南京錠をモニュメントにかける“聖地”」と紹介されている。
パリでも各所に南京錠

カップルの手による南京錠は、ヨーロッパ発祥と言われるだけに「こんなところにも?」と驚く発見があった。ローマ市内の古代遺跡「フォロ・ロマーノ」では、ローマ時代の旧跡を眺める柵に沢山の南京錠がかかっていた。パリでは、セーヌ川の橋の欄干、そして、“所狭し”と圧倒的な数の鍵がかけられていたのが、モンマルトルの丘にあるサクレ・クール寺院の前だった。パリの街を一望できる観光スポットだが、柵に並ぶ南京錠は、柵の間を埋め尽くして壁のようにしてしまうくらいの数だった。その近くでは、路上に南京錠を並べて販売する風景もあった。
かける場所にはご用心
ある意味、とてもロマンチックな儀式でもあるが、一方で、施設によっては南京錠をかけることを許可していないところもある。撤去には予算もかかるため苦慮している自治体が、日本にも海外にもあることは、記しておかねばならないだろう。南京錠をかける側にも、場所をわきまえる配慮は必要だろう。
マグネット土産の数に圧倒され、カップル南京錠に微笑んだヨーロッパの旅。そこには思い出を大切にする心、絆を確認したい愛の風景があった。日本も異国も、人の営みというものは同じであり、そして続いていくのだろう。そんな発見もまた“旅の土産”である。
【東西南北論説風(596) by CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】