ジェネリック医薬品を取り巻く新制度がスタート、患者の負担どうなるの?
日本の医薬品は大まかに分類すると「先発医薬品」と「後発医薬品」の2つになる。「先発医薬品」は、新たに開発、承認、そして商品化されたもので“新薬”とも呼ばれる。一方、それと同じ有効成分を持ち、同じ効果・効能、同じ使用方法、しかし値段が安い、それが「後発医薬品」で、別名「ジェネリック医薬品」である。
ジェネリック医薬品とは?
「ジェネリック(generic)」とは英語で「一般的な」という意味で、もともと薬は開発したメーカーによって、様々な商品名が付けられている。しかし、そうした商品名でなく薬の有効成分を“一般名”として呼ぶため、「ジェネリック医薬品」と呼ばれるようになった。
新薬の知的財産権
「先発医薬品」の開発には、研究日数や費用など大変な労力がかかる。日本では、ルールとして、その開発経費は知的財産権の特許として、20年から25年にわたって保護される。その保護期間が終わった後に、ノウハウを使って作られるのが「後発医薬品」すなわち「ジェネリック医薬品」となる。その「ジェネリック医薬品」を取り巻く制度が、2024年(令和6年)10月から大きく変わる。厚生労働省のホームページで紹介されている。
今回の新ルールとは?
新たな制度では「ジェネリック医薬品」が作られているのに、それを使わず、あくまでも「先発医薬品」を使いたい患者は、それについて特別料金の負担を負うことになる。負担は、その差額の4分の1、「ジェネリック医薬品」の使用を促進することが狙いである。具体的に例を挙げると、「先発医薬品」の価格が1錠あたり100円、同じ有効成分を持つ「ジャネリック医薬品」が1錠あたり60円の場合、その差額40円の4分の1にあたる10円が、患者の新たな負担になる。上乗せして薬代を支払うことになる。
保険制度を守るため
平均寿命が延びて“高齢社会”と呼ばれて久しい日本、医療費はますます増え続けている。それによって、財政の危機に直面している健康保険組合も多い。そこでお値打ちな「ジェネリック医薬品」をさらに多く使ってもらうことで、国民すべてをカバーする保険制度を守ろうというのが、厚生労働省の目的である。同じ成分、同じ効果・効能、同じ使用方法ならば「ジェネリック医薬品」を使用してほしいということである。
具体的にはどうなる?
新制度では、院外処方の処方箋に「患者希望」という欄ができる。「ジェネリック医薬品」ではなく、もともとの「先発医薬品」を希望する場合は、医薬品ごとに患者がチェックを入れて、その負担額を加えた薬代を院外薬局で支払うことになる。ただし例外もある。入院している患者、医師や薬剤師が「先発医薬品を使う必要があると判断した」患者、そして、まだ「ジェネリック医薬品」の入手が困難、こうした場合は負担が免除される。
品不足は大丈夫か?
「ジェネリック医薬品」の使用を促進する反面で、新型コロナ禍からの医薬品不足は続いている。さらに、2020年(令和2年)に、製品に睡眠導入剤の成分が入っていたことから、大手メーカーの操業停止などがあり「ジェネリック医薬品」自体も品薄になる事態もあった。今や、国内で処方される医薬品の8割を占める「ジェネリック医薬品」もこうした品不足という現状を抱えている。促進しながらも応えられないという場面が来ることも想定されるため、新制度が順調にスタートできるか、心配する声も出ているそうだ。
医薬品は自らの健康に直結するだけに、信頼感を持って使用したい。もし疑問に思うことがあったら、医師や看護師に問いかけて、説明を求めて、納得して使用することも必要であろう。
【東西南北論説風(525) by CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】