QRコード切符への切り替えが進む!英国で誕生した鉄道切符200年の歩み

QRコード切符への切り替えが進む!英国で誕生した鉄道切符200年の歩み CBCテレビ:画像「自動改札機」

沖縄のモノレール「ゆいレール」に那覇空港駅から乗車した時のことである。切符を買って自動改札機に向かったのだが、その切符は機械の中を通すのではなく、画面にタッチするものだった。そこにはQRコードが印字されていた。JR東日本をはじめとする首都圏の鉄道8社が、現在の磁気式の切符を、2026年度以降にQRコード式に切り替えると発表した。そのニュースに、かつて「ゆいレール」で体験したことを思い出した。

英国生まれの鉄道切符

鉄道に乗車する時には切符が求められる。その歴史は、19世紀前半の英国にさかのぼる。英国は“鉄道発祥の地”である。記録によると、最初の頃は紙に1枚1枚、行先や発車時刻などを手で書いたものを切符として使用していたそうだ。しかし、当然これにはとんでもなく時間がかかった。そこで、トーマス・エドモンソンという駅長が考えたのが、切符を印刷することだった。あらかじめ発着する駅の名前や運賃などを木版を使ってボール紙に印刷し、それを乗客に販売した。これが鉄道切符の原形となり、エドモンソン駅長は「鉄道きっぷの父」と呼ばれるようになった。

日本では明治時代から

日本で鉄道切符が登場したのは、明治維新の1872年(明治5年)のことである。「汽笛一声(いっせい)新橋を はや我(わが)汽車は離れたり」。日本初の鉄道が、東京の新橋と神奈川の横浜の間で開通した。文明開化の象徴だった。鉄道の技術は、英国から伝えられたもので、同時に切符システムも導入されたのである。切符の印刷機も輸入された。こうして日本の鉄道でも、切符が歩み始めた。

改札で切符に鋏(はさみ)を入れた

CBCテレビ:画像『写真AC』より「昔の切符」

今でこそほとんどの駅が自動改札機だが、明治から昭和の時代にかけて、駅の改札にはそれぞれ鋏を手にした駅員さんが立っていた。分厚い紙の切符を窓口で購入して、改札を通る時に鋏を入れてもらう。目的の駅に着くと、切符を駅員に渡して改札を出た。この改札鋏の切り口は、駅によって形が違っていた。丸形、三角型、階段型、それらを組み合わせたものなど、切り口によってどの駅から乗ったのかが分かるようになっていた。こうして不正使用を防いでいた。

日本生まれ「自動改札機」

改札の駅員は、自動改札機の登場と広がりによって次第に姿を消した。この自動改札機を世界で初めて開発したのは、実は日本である。最初の大阪万博の3年前、1967年(昭和42年)に開業した大阪の北千里駅には、定期券も利用できる世界初の本格的な「自動改札機」10台がお目見えした。開発したのは立石電機株式会社、現在の「オムロン株式会社」である。改札機に「切符を通す」システムがあり、切符には磁気が使われた。駅員のいる改札を抜けるのには「1分間に平均20人」だったが、一気に「1分間に80人」が通過できるようにスピードアップしたそうだ。

ICカードによる革命

切符にさらなる変革が訪れた。プラスチック製ICカードの登場である。2001年(平成13年)東京で「Suica(スイカ)」が導入された。これによって、切符を買って自動改札機の中を通すのではなく、機械にタッチして改札を通るようになった。現在は、このICカードの利用率が9割まで達している。普段使っているICカードが全国各地の鉄道でも使える互換性もあり、切符を利用する人の数はますます減ってきた。

時代はQRコードへ

CBCテレビ:画像『写真AC』より「ゆいレール・ホームの車両」

首都圏の鉄道8社が2024年5月、磁気の付いた切符から「QRコード」を改札機にかざすだけの切符に切り替えていくことを発表した。2026年度以降からの実施をめざす。QRコード切符用の改札機に置き換える費用はかかるものの、メリットは多い。改札機に切符が詰まるトラブルが少なくなる。磁気付きの切符は金属を含むのでリサイクルが大変だが、その手間がなくなる。スマホなどにQRコードを呼び込んでのチケットレス化も進む。2014年(平成26年)からすでにQRコード切符を導入済みの「ゆいレール」。沖縄は暖かい気候のため、汗で湿った切符が度々詰まるトラブルがあったが、その解消にも役立った。ICカードも使えるが、海外からの観光客が多い沖縄だけにQRコード切符の利用数も多い。

不正防止対策も万全

気になるのは不正使用である。QRコードだとそれをコピーして、複数の人間が使うという可能性はないのか。しかし、一度改札を通ったQRコードは「入場済み」という情報がセンターサーバーに届き、他の改札からは入場できなくなるシステムとのこと。不正防止対策も取られているという。

紙に1枚1枚、それも手書きだった鉄道切符も、次々と開発される技術によってめざましい進化を遂げてきた。これから増えていくであろうQRコード切符によって、人の移動はますますスピードアップしていくことになるのだろう。         

※「QRコード」は株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
          
【東西南北論説風(503)  by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

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