「認知症」進行を抑えられる病気に?…認知症治療も新たな時代!早期発見のポイント【医学博士 小野賢二郎】
サマリーSummary
ドクター:金沢大学 医薬保健研究域 脳神経内科学 教授 医学博士 小野賢二郎
身近な健康問題とその改善法を、様々なテーマで紹介する番組『健康カプセル!ゲンキの時間』。
メインMCに石丸幹二さん、サブMCは坂下千里子さんです。
ドクターは、金沢大学 医薬保健研究域 脳神経内科学 教授 医学博士 小野賢二郎先生です。
今回のテーマは「〜患者のリアルな声から学ぶ〜認知症 早期発見のポイント」
今年から認知症に関する法律が新たに施行されたそうです。それが、認知症患者の尊厳を保ち希望を持って暮らせる社会を目指すための法律、通称「認知症基本法」。そして、認知症治療も新たな時代を迎え、早く対策をとれば進行を抑える事のできる病気になってきているそうです。だからこそ早期発見が大切なのだとか。そこで今回は、認知症を早期発見するポイントを専門医に教えてもらいました。
認知症の基礎知識
<「認知症」とはどんな病気?>
認知症は、後天的な脳の器質的な障害によって知的機能が低下。それにより記憶障害や見当識障害が出てくるそうです。見当識障害とは今がいつか、ここがどこかわからなくなる状態の事。さらに進行すると、幻覚・妄想・徘徊などの症状が出て、介護が困難な状態になる事もあるそうです。
<「アルツハイマー型認知症」とは?>
認知症の約7割を占めるのが「アルツハイマー型認知症」。アルツハイマー型認知症は、脳内にアミロイドβなどのたんぱく質が溜まって脳の神経細胞がダメージを受け、脳の中でも記憶を司る海馬などが萎縮する事で発症すると考えられているそうです。
<「アルツハイマー型認知症」の原因は?>
アルツハイマー型認知症の原因の1つが「アミロイドβ」。アミロイドβは脳内に徐々に溜まっていき、時間が経つと線維化してガチガチになってしまうのだとか。そのため、早期発見・早期対処が大切だそうです。
<認知症は何科で診てもらえばいい?>
先生によると、認知症を診てもらう場合は、精神神経科・脳神経内科・老年科・脳神経外科などを受診すると良いとの事。病院によっては、もの忘れ外来・認知症外来という専門外来を独自に設けている病院もあるそうです。
認知機能の低下を測定する「認知機能テスト(MMSE)」
認知症治療で大切なのは、なるべく早い段階で認知症の初期症状を見分ける事だそうです。その方法の1つが、認知機能の低下を測定するMMSEと呼ばれる認知機能テスト。認知機能テスト(MMSE)は、記憶力・計算力・言語能力などを調べ、認知機能の低下を客観的に数値化する事ができるそうです。
<認知機能テストの一例>
▼3つの言葉を言ってください。「桜・猫・電車」
▼先ほどの3つの言葉を覚えておいてください
▼100から7を順番に引いてください
▼先ほど覚えた3つの言葉を言ってください
テストは30点満点で27点以下は軽度認知症の疑いあり。23点以下だと認知症の疑いありとなるそうです。
認知症を早期発見するポイント
<早期発見のポイント(1)時間・日にち・曜日がずれる>
「時間・日にち・曜日がずれる」のは認知症の初期症状。他にも「車を停めた場所などが分からなくなる」「思った言葉がなかなか出てこない」といった特徴があるそうです。今まで出来ていた事がおぼつかなくなったら歳のせいにせず、専門病院を受診しましょう。
<早期発見のポイント(2)ニオイを感じににくくなった>
ニオイは、鼻の奥にある嗅神経から大脳に伝わります。嗅神経は海馬と繋がっているため、海馬が萎縮するとニオイが大脳に届きにくくなり、「ニオイを感じにくい」という症状が出る事もあるのだとか。そのため、認知機能の低下と併せてニオイを感じにくくなったという方は注意が必要だそうです。
<早期発見のポイント(3)身近な人がちょっとした変化を気にかける>
外出頻度が減ってきた、同じごはんばかり食べるようになったなど、身近な人がちょっとした変化を気にかける事が早期発見につながるそうです。
<早期発見のポイント(4)物忘れと認知症の違いを見分ける>
認知症と物忘れの違いを見分けるのも早期発見のポイント。例えば、話した内容の一部を忘れてしまうのは「物忘れ」。話した内容の全てを覚えていない場合は、認知症の可能性があるそうです。
離れた家族の認知症を早期発見するポイント
認知症の初期症状、特にアルツハイマー型認知症では、「つい最近の記憶を失くす」という特徴があるそうです。そのため、家族が離れて暮らしている場合は、電話でちょっと長めに話をした後に「10分前に話したこと覚えている?」と聞くのも早期発見のポイント。他にも、これまで当たり前に出来ていた事が出来なくなる場合もあるので「ちゃんと買い物に行けている?」「掃除や料理はできている?」など、日常生活の事を聞くのもオススメだそうです。
認知症予防に効果あり「緑茶」驚きの効果!
先生によると、緑茶に含まれるポリフェノールには、アミロイドβの蓄積を抑える効果が期待できるとの事。実際、緑茶を毎日飲む人は、飲まない人と比べると「5年後の認知機能の低下を3分の1に抑えられた」というデータもあるそうです。
「認知症治療」の最前線
<超音波療法「LIPUS(リープス)」>
「LIPUS」と呼ばれる治療法は、脳に超音波をあて血管内に一酸化窒素(NO)を発生させ、血管拡張・血流改善を促すそうです。血管の状態が良くなる事でアミロイドβの蓄積も軽減。認知機能低下の抑制効果が期待されているのだとか。軽度の認知症の方に効果的とされ2026年の保険適用を目指しているそうです。LIPUSを受けるためには、アミロイドβが溜まっている事、認知機能テストが20点以上である事などが条件になります。治験は現在、全国18施設で受けられるそうなので、気になる方は施設にお問い合わせ下さい。
<認知症の最新治療薬レカネマブ>
昨年承認された認知症の最新治療薬が「レカネマブ」。これまで認知症の治療薬は対処療法的なものしかありませんでした。しかし、レカネマブが登場した事でアミロイドβに直接働きかけ、進行を抑えるという新たな可能性が生まれたのだとか。さらに、レカネマブによってアミロイドβの毒性が抑えられ、免疫で処理できるようになる事も分かっているそうです。ただし、投与には認知機能テスト22点以上、脳内にアミロイドβが溜まっている事が分かっているなどの条件をクリアする必要があるとの事。先生によると、近いうちに全国の都道府県で投与が可能になると思われるそうです。
<気になったら病院へ行きましょう>
先生によると、最近では認知症と診断された後も色々な治療の選択肢があるそうです。また、生活習慣や運動など発症前に認知症を予防する事も大切との事。認知症は明確な境界線はなく徐々に進行する病気です。歳のせいにせず、気になったら病院を受診してみてください。
(2024年4月21日(日)放送 CBCテレビ『健康カプセル!ゲンキの時間』より)