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寿命を左右する腎臓

寿命を左右する腎臓

サマリーSummary

ゲンキスチューデント:藤井サチ
ゲンキリサーチャー:ハマカーン
ドクター:東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 主任教授 医学博士 横尾隆
尿を作る臓器というイメージが強い「腎臓」ですが、実は一度悪くすると心筋梗塞や脳卒中など突然死につながるリスクが3倍になるといいます。さらに、腎臓は一度機能が失われると二度と再生しないため、早い段階で異常を見つけないと寿命を左右する危険もあるのだとか。そこで今回は、身体の司令塔・腎臓をリサーチ。その機能と大切さを専門医に教えてもらいました。

腎臓ってどんな器官?

腎臓は背中側に2つあり、大きさはそれぞれレモン1つ分ほど。1つの重さは120~150gで人体の中でも比較的小さな臓器ですが、多くの機能が備わっています。

<腎臓の機能の一例>
・赤血球を作る
赤血球は、血管内を流れ全身の細胞に酸素と栄養を供給しています。この赤血球の量を調整しているのが腎臓から出るエリスロポエチンというホルモン。例えば高地トレーニングでは、空気中の酸素が薄くなるため、少ない酸素をより効率良く体内に供給する必要がありますが、腎臓が一生懸命働いてホルモンを出す事により心肺機能が上がるのだそうです。

・尿を作る
腎臓は、糸球体という約100万個ものフィルターで血液をろ過。赤血球やたんぱく質を残した血液と水分・ミネラル・老廃物を含む尿のもとにわけています。この時できる尿のもとは、1日約1500L。さらに、膀胱へと至るまでに必要な水分などを再吸収し1日約1.5Lの尿に濃縮しているそうです。

・骨を強くする
腎臓には、カルシウムの吸収を促進するビタミンDを活性化させる作用があります。そのため、腎臓の機能が落ちるとカルシウムの吸収が悪くなり、骨粗しょう症などの病気につながってしまうそうです。

腎臓が寿命を左右する原因①「赤血球が作られなくなる」

腎臓の機能が落ちて赤血球を作るホルモンが分泌されなくなると、血液内の赤血球量が減ります。すると、運ばれる酸素の量も減り、立ちくらみやめまいなどの貧血症状が進行してしまうそうです。つまり、長引くめまいや貧血は、腎臓の機能が低下し赤血球が作られていないサイン。その状態が続くと、酸素を多く必要とする心臓の機能まで低下し心筋梗塞や脳卒中といった病気のリスクを上げてしまうそうです。

腎臓が寿命を左右する原因②「尿の異常」

腎臓は糸球体というフィルターで血液をろ過して尿を作っていますが、糸球体が傷つくと、ろ過機能が低下して尿にたんぱく質が出てしまうなどの異常が現れます。さらに進行して糸球体が潰れると、ろ過機能を失ってしまうそうです。

<糸球体が傷つく原因>
・糖尿病
血液中の過剰な糖分が糸球体の血管を傷つけてしまいろ過機能が低下します。
・高血圧
糸球体に流れ込む血液の勢いが強い事で血管を傷つけてしまいろ過機能が低下します。

<糸球体の異常>
・フィルターの網目が大きくなる⇒たんぱく尿
糸球体が傷つきフィルターの網目が大きく広がると、せき止められるはずのたんぱく質が尿から出てしまいます。これがいわゆる“たんぱく尿”という状態。用を足した時になかなか泡が消えない場合や、全身にむくみを感じる場合は、腎臓のフィルター機能が壊れはじめ、たんぱく質が出てきている可能性があるので注意が必要です。

・フィルターの網目が潰れる⇒腎不全
糖尿病や高血圧によるダメージが進むと、糸球体自体が潰れてろ過機能を失います。すると、余分な水分や老廃物の排出ができなくなり腎不全という末期状態になってしまうそうです。排出できなくなった老廃物が毒素になって身体を回ると、意識障害や生命を脅かす「尿毒症」になる危険も。また、毒素が脳に回れば認知機能を低下させ認知症のリスクを高めてしまうのだとか。そして、糸球体が潰れて水分やミネラルが排出できなくなると血管内の血液量が増加し、高血圧をさらに悪化させてしまう事もあるそうです。

腎臓が悪くなると腰痛が起こる!?

腎臓が悪くなると、尿の異常やむくみといった症状の他に腰痛が現れるのだとか。腎臓自体には痛みを感知する知覚神経はないものの、腎臓を覆う膜や尿管には痛みを感じる神経がたくさんあるため、腎臓が腫れると腰に痛みを引き起こすそうです。痛みを引き起こす原因として多いのは、腎盂炎と腎臓結石。「なんとなく腰がだるい」といった場合でも、左右どちらかの腰が痛い場合は、腎臓が腫れて炎症が起こっている可能性があるそうです。

慢性腎臓病(CKD)について

慢性腎臓病(CKD)とは、健康な人の60%以下まで腎臓の機能が落ちた状態、もしくは、たんぱく尿が出るなど腎臓の異常が3か月異常続く状態をいいます。慢性腎臓病を患っている人の数は8人に1人。その末期症状は、腎不全といって腎臓の持つ機能がほぼ失われた状態です。腎不全になると、本来腎臓が果たすべき血液のろ過を人工透析で補い、それを受け続ける必要があるそうです。

・人工透析とは?
人工透析とは、腎臓が果たすべき血液のろ過を人工腎臓や腹膜を利用して浄化する治療の事。現在の人工透析を受けている患者数は34万人以上ともいわれ増加傾向にあります。

~二度と再生しない腎臓が再生可能に!?腎臓を育てる再生医療~
先生によると、現在ヒトのiPS細胞から腎臓を作る再生医療の研究が進んでいるとの事。すでにラットやマウスによる動物実験では尿が排出されるまでは確認済み。2020年代に人での臨床試験を目指しているそうです。

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