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落合選手と会食中、突然目の前に現れた星野監督が?~沖縄キャンプ思い出秘話

落合選手と会食中、突然目の前に現れた星野監督が?~沖縄キャンプ思い出秘話
落合博満氏(C)CBCテレビ

プロ野球の春季キャンプが始まると、毎年必ず蘇ってくる記憶がある。もう40年近く経ったのに、鮮やかな思い出だ。登場する主役は2人、“三冠王3度”という看板と共にドラゴンズ入りした落合博満選手、そして新たに竜を率いることになった星野仙一監督である。

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三冠男が竜にやって来た

2年連続3度目の三冠王となった落合選手が、ロッテオリオンズ(現・千葉ロッテマリーンズ)からトレードでドラゴンズに入団した。獲得に向けて動いたのは、39歳でチームを任されたばかりの星野監督だった。

筆者は当時の上司である報道部長から、スポーツ担当ではなく、社会部的な報道記者として落合選手の“番記者”を命じられた。TBS系列『JNN報道特集』という番組で、落合選手の打撃術とユニホームを脱いだ時の“人間・落合”を紹介するためだった。

落合選手との個別会食

1987年(昭和62年)2月、ドラゴンズのキャンプ地・沖縄には、三冠王と新監督という注目の“大物2人”を追って、かつてない数の報道陣が訪れた。密着取材をするにあたって、落合選手と打ち合わせを兼ねて、会食することになった。筆者の他、先輩カメラマン、そして先輩スポーツアナウンサーが同席する。

落合選手から「しゃぶしゃぶが食べたい」というリクエストがあり、球団の宿舎ホテルにある日本料理店を予約して、夕食のテーブルを囲んだ。選手は球団が用意するレストラン会場で食事を取るのが原則だが、他所で食べても問題はなかった。

突然やって来た星野監督

オリオンビールで乾杯し、大皿で牛肉と野菜などが運ばれて、宴がスタートした時、日本料理店の入り口に、ジャージ姿の大柄な人物が現れた。その男性は、他のテーブルには見向きもせずに、一直線に店の最も奥にあった我々のテーブルに向かって来た。その人が誰かを認識した時の緊張感は、今なお覚えている。星野監督だった。

監督は笑顔を見せながら近づいて来た。しかし、その目は笑っていない。筆者の向かい側に座る落合選手の両肩に両手を添えて、こう言った。

「お前らばっかり、いいことしとるやないか」

牛肉の美味しそうな赤い色が、無色透明になってしまったような気がした。

落合は淡々と食べ続けた

決してルール違反をしたわけではない。しかし、新たにチームに加わったばかりの落合選手が、キャンプイン早々にメンバーと離れて、取材チームと会食する。これを新監督がどう受け止めたのだろうか。星野監督とは旧知の先輩アナが、密着取材のことを説明してくれた。それを聞いた星野監督は「ふーん」という表情を見せて、「ほどほどにしとけよ」と言い残して、すぐに店を出て行った。当の落合選手は星野監督に笑いかけた後は、緊張している私たちをしり目に、黙々と牛肉を鍋に入れて、食べ続けていた。

すべてを把握する監督

それにしても、なぜ星野監督は、落合選手と私たちが、ホテル内の日本料理店で夕食を共にしていることを知っていたのだろう。気持ちが落ち着いてから考えてみた。落合選手は伝えていない。もちろん私たちも。そうなると、情報ルートはただひとつ、確認したわけではないが、ホテル関係者からの一報しかないだろう。

優秀なリーダーは「情報」を重要視する。新たな監督となった星野さんが、球場内はもちろんのこと、宿泊先のホテル内でも動きがあれば、すべて自分の耳に入れるようにしていたことは、想像に難くない。あらためて、星野仙一という監督の凄さに触れた思いだった。星野監督は、私たちにというよりも、むしろ落合博満という全国区のスター選手に、こう伝えたかったのだろう。「監督の自分は、ちゃんと選手の動きを把握しているんだぞ」と。

川上憲伸さんの考察

川上憲伸氏(C)CBCテレビ

最近、この思い出を、のちに星野そして落合両監督の下でエースとして活躍した、野球解説者の川上憲伸さんに話す機会があった。川上さんは「星野さんらしいや」と大笑いして、そして、こう続けたのだった。

「でも、落合さんも一緒でしたよ。落合さんも監督になってからの情報管理はすごかった」

90周年を迎えたドラゴンズの球団史に、名選手としても名将としても、その名を刻む2人、星野仙一と落合博満。沖縄キャンプのホテルで、“両雄”と同じ場に居合わせた緊張感は、今なお記憶から消えることはない。
                                                           
  
【東西南北論説風(666) by CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)ほか。

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