ドラゴンズ根尾昂の夢と希望と現実―落合英二二軍監督が明かした一軍再昇格を果たせなかった衝撃の理由

【サンドラを観られなかった全国のドラ友と共有したい番組のコト】
CBCテレビ「サンデードラゴンズ」(毎週日曜日12時54分から東海エリアで生放送)をみたコラム
このコラム(?)は「サンドラ」を観られなかった全国のドラ友に話したい!との思いから番組の内容を綴る、竜党のみなさんに向けた、竜党による、竜党のためのコラム(?)である。
井上竜1年目のBクラスが決まり、シーズン最終局面を迎えて選手の個人タイトルに注目が集まっている中、筆者は気になって仕方がない選手がいる。5月に一軍登録を抹消となってから、再昇格を果たさないままシーズンを終えようとしている竜の至宝―。根尾昂投手である。9月28日の放送回で共有したいトピックスは、まさに根尾投手の一年間に密着した特集企画。根尾投手は今、何を考えているのか―。なぜ再昇格を果たせなかったのか―。根尾投手本人の想いと彼を見守る周囲の声から紐解く。
投手転向4年目。二軍暮らしが長引く原因を自己分析

シーズンの残り試合も少なく静かな秋が訪れようとしている中で、根尾投手の姿はナゴヤ球場にあった。
根尾投手:今日もちゃんとこっちでやることがあったんで、それをやっぱり一個一個潰していくっていうか。ほんと、悔しい気持ちはもちろんありましたけど、そこを潰していくことしかないかなと思ってやっていました
プロ野球選手として7年の時が過ぎ去ろうとしている。投手転向4年目。異例の配置転換を経験した25歳は今、正念場を迎えているのかもしれない。二軍暮らしが長く続き、なぜ出場機会を掴めないでいるのか―。一軍の戦力になれていない現状をしっかりと自己分析していた。
根尾投手:ベンチから見ていて・・・なんて言うんですかね。僕がマウンド上がって安心感というか、信頼度というか。そういうところがやっぱり1試合で崩れちゃうんで。そこをやっぱりいかに(好不調の)波を少なくできるかっていうのはもちろんそうですし。内容というか、内容の質だったりとか。同じアウトでもやっぱり完全アウトの方がリリーバーにとっては評価も上がりますし。フォアボール1個にしてもやっぱり出し方もそうですし。どういうバッターにどういう場面で出してるかっていうのはもちろんありますし。そういうところが必要というか、求められてるところだと思うんで。その課題があって下に落ちてきてるわけなんで。(一軍で投げられない原因は)そこかなと思います
このインタビューの4日後、新潟で行なわれた二軍の試合。奇しくも二軍でくすぶっている原因を象徴するかのような投球を展開してしまう。2ストライクに追い込んでからのデッドボールを皮切りにヒットとフォアボールを与え崩れた。1イニングを被安打2、与四球2、与死球1、失点3。内容が良かったとは到底言えなかった。
根尾昂にあらためて訊く、少年時代に描いたプロ野球選手以外の選択肢

根尾投手は岐阜県飛騨市出身。中学3年ながら最速146キロを叩き出し、『飛騨の怪童』として名を馳せた。内申点はオール5。スキーの全国大会で優勝。そして両親は医者。無限の可能性に満ちた中学生が選んだ進学先は野球の名門・大阪桐蔭高校だった。学業でも優秀な成績をおさめていた根尾投手は「医者にもなれたのではないか」といった巷の声について次のように否定した。
根尾投手:医者にもなりたかったんじゃないか、みたいなめっちゃ言われるんですけど。僕は昔から野球とか陸上とかスキーとかやらしてもらっていて、そっちにしか気がいってなかったんで。高校を決めるってなった時にお医者さんになるなんて思ったこともないし、プロ野球選手になりたいなっていうのと、そこで活躍しようと。親には及ばないけどというところはあったので
あの日決意を固めた少年は甲子園のスターの階段を駆け上がる。投打の二刀流でチームの春夏連覇に貢献。華々しく決して色褪せることのない過去である。
根尾投手:あの頃に戻りたいか?ないっすね。辛いんで(笑)。多分分かると思う。どちらかと言うと戻りたくない
立浪前監督に問う、異例の配置転換の是非

栄光の裏にあった血のにじむ努力。4球団競合の末に飛び込んだドラゴンズという未来では異例の配置転換が待っていた。ショート、外野、ふたたびショート。そしてピッチャーと何でもそつなくこなす紛れもない才能。あふれんばかりの可能性の中で立浪和義前監督が決断したのは「投手・根尾」だった。全国区、スター性、ファンの期待も高い根尾昂にこの決断を下した当時の心境と現在の思いについて立浪前監督は今年2月のインタビューできっぱりと言い切った。
立浪前監督:投手転向の決断に不安はなかったか?そういう不安とかっていうよりも、なんとかピッチャーで成功させてあげないといけないな。また成功してほしいなっていう、もうその思いしかなかったですね。その決断は今も間違っていないと思ってます
落合二軍監督が明かした、根尾が一軍に上がれないワケ

コンバートからはや4年。新たな背番号をつけた根尾投手は中継ぎとして活路を見出そうとしていた。開幕を二軍で迎えた根尾投手にようやく一軍から声がかかったのは4月末。今季初登板は5月3日、マツダスタジアムでの広島東洋カープ戦。1イニングを無失点に抑え、ストレートの最速は150キロだった。その後2試合で無失点投球を続けて迎えた同20日の横浜DeNAベイスターズ戦は先発・大野雄大投手が打ち込まれ火消しの役割を託されると、このピンチを見事に無失点で凌いでみせた。すると次のイニングもマウンドへ。今年ファームで一度も経験をしていないイニングまたぎだった。結果は2本のアーチを浴びるなど5失点。こうして二軍降格が決まったのだが、“今季初のイニングまたぎ”について根尾投手は決していいわけを口にすることはなかった。
根尾投手:一軍に上がった時に「ロングもいけるよね」っていうのはずっと言われていましたし。僕自身も「いける」って話もさせてもらっていたので。いつ来るかなっていうのはずっと思っていたんですけど。自信?ありましたね
「今の立ち位置にさえいられなくなる」―。これは登録抹消の際に井上一樹監督が残した言葉である。そんな中で根尾投手には“なりたいもの”が見えていた。
根尾投手:「こういう風にしていきたい」というのはもちろんあるので。それは(今は)言えないですけど、それをやっぱり突き詰めていく時間かなと思います
ファームで“目指すべき姿”を追求する日々は過ぎ、ついに一軍に呼ばれることは無かった。一軍のリリーフ陣も決して盤石とはいえない状況でありながら、なぜ根尾投手に声が掛からないのか―。もしくは一軍に推薦されないのか―。その理由を落合英二二軍監督が明かした。
落合二軍監督:一軍に上がった時には良い形で、良い投げ方でやってきましたけど、やっぱり一軍でやられて帰ってくると精神面も傷ついて帰ってくるので、あの春先の投げ方をしておけば、夏でも秋でも一軍は全然近づいていたんですけど、祖父江が辞めたので、あのポジションを根尾が補うべきだと。そこで頑張ってセットアッパーになっていくっていうのが、僕の思いはそういう思いです
捕手陣が口を揃える、根尾の向上心

落合二軍監督は「春先の投げ方をしておけば」と根尾投手に対して歯がゆい思いを吐露。根尾投手自身も克服しなければならない課題を口にする。
根尾投手:一軍で投げたい気持ちはもちろんありますし。二軍でなんて言うんですかね・・・やっぱり、ずっと同じじゃないんで。常に良くなっていたいっていうところで、課題ももちろんありますし。そこをやっぱりちゃんとやること決めてというか、毎日ちゃんとクリアして、何かこう良くなって一日終れるようにっていうのは、一軍に行っても変わらないことだと思うんですけど。その(一軍に)呼ばれるまでというか、ちゃんと抑える準備をするだけかなと。本当に悔しい気持ちはもちろんありましたけど、そこを潰していく事しかないかなと思ってやっています
ファームではチームトップの登板数(42試合、3勝3敗、40イニング1/3、与四球27、奪三振32、防御率2.68)。マウンドへ向かうシチュエーションは様々。一軍からは声が掛からないが決して腐ることなく準備を続けている。間近でボールを受け続けるキャッチャー陣は口を揃えた。
石橋康太選手:(根尾投手から)弱音を聞いたこと?いや、常に前を向いてレベルアップしてこうっていう風に思ってる選手なので
木下拓哉選手:一緒にやっている僕らは彼が1番一生懸命なのを知ってるんで。(投手転向直後は)ちょっと訳の分からないままシーズン途中にピッチャーになって、何も考えずに腕を振れていたと思うんで。それはやっぱり本職になったら考えることも増えて、思い通りにはいってないと思いますけど。ヘボくなったとかそんなんは全然思わないですし。まあよく練習もしていますしね。本当に一球一球考えを持ちながら投げてるのも伝わるんで。なんとかその頭で考えている事と投げるボールが一致すれば間違いなく戦力になると思います
野手の経験を強みに、投手として活躍を誓う

プロ入り当初はショートのレギュラーを目指し泥だらけになりながら猛練習に励んでいた。その経験は投手に転向した現状においてどれだけの価値があるのか―。根尾投手は自信に満ちた表情で言い切ってみせた。
根尾投手:今振り返ると打者目線というか、そういった所っていうのは他のピッチャー陣よりは長けているところだと思うので。そこはすごく有利だなと思いますね。まあ、やっぱり野手として1年目からバリバリやれてっていうのが、やっぱり皆さんからの期待だったと思うので、そこに応えられなかったっていうところに関しては、自分としてはもうピッチャーでその分の期待というのを応えられるようにというか・・・そこしかないので
前例の無いプロ野球選手、根尾昂。投手としてどうなりたいのか―。
根尾投手:(今明かすことは)ちょっときついっすね(苦笑)。今言いたいんですけど。ここまで出ているんですけど、恥ずかしいっすね。一軍に行ってからがスタートライン。そこにまず立てるように
根尾投手の中には確実にある“プロ野球選手として目指すべき姿”―。それを叶えることができるのは他の誰でも無い、根尾選手自身である。
黄金期のエース・吉見一起氏の提言。根尾投手の課題は“走者を背負ってからの精度”
この日のスタジオ解説は現・侍ジャパンの投手コーチで連覇を果たしたドラゴンズ黄金期のエース・吉見一起さん。根尾投手のこれまでの歩みの苦労を慮りつつ、投手として覚醒するために克服すべき条件を提言されました。
吉見氏:(プロ入りから)いろんなポジションをして大変だと思うんですけど、能力があるからゆえできたと思うんですよね。期待値が高いがゆえになかなか結果出せてないので、悔しい思いがあるんじゃないかなと思いますね。今後の課題?投手というところでいくとやっぱりランナーを背負ってからの精度ですよね、一つ一つの。そこで崩れてしまうので継続性がない。そこを何とか向上できればチャンスは十分あるんじゃないかと思います。(投球の組み立てとなる)球種はストレートが軸になると思うんですけど、それに付け加えて一つ、自信を持って投げられるボール、変化球が一つ欲しいですね
イチ視聴者(筆者)の番組感想まとめ。名伯楽・落合二軍監督が嘆き、期待を寄せることしかできない根尾投手の現状に復活の兆しは!?
今週のサンドラを観た感想・・・。根尾投手の一年間に密着した企画によって筆者のモヤモヤした気持ちが少しだけ晴れた気がします。今シーズンの根尾投手は開幕を二軍で迎えたものの、ファームで無失点投球を続けて満を持して一軍昇格を果たしました。一軍昇格後も3試合連続で無失点投球。4試合目にまさかの大炎上で二軍降格となったのは仕方がないと思いつつも、すぐに再昇格を果たしてくれるものと期待していたのですが、ついに叶うことなくシーズンが終了。なぜ?という疑問を抱いたままなのでしたが、落合二軍監督が明かした「春先の投げ方ができなくなった」という衝撃の事実に納得。根尾投手は良いときの状態に戻せないほど問題は深刻だったわけです。
落合二軍監督のインタビュー映像で筆者が気になったのは、「春先の投げ方ができなくなった」根尾投手に改善策はあるのか―、という点。落合二軍監督は苦悩を吐露するかのような口ぶりで明かし、奮起を期待する言葉で締めくくっていました。根尾投手は9月のファームの登板でも四死球が絡んで崩れており、5月末の登録抹消から約4カ月が経過しても改善の兆しが見えていない様子。今は取り組むべき課題とひたむきに向き合うことでしか現状を打破できないのかもしれません。イチファンとして唯一の救いは根尾投手の中に自身が目指すべきプロ野球選手像が思い描けていること。理想や目標があれば希望を失わずに前に進むことができるはず。ドラゴンズの根尾昂が飛躍できることを祈り、応援することは2026年も、その先も、永遠に変わりません!!
(このコラムを書いたのは・・・サンドラ視聴歴約30年の40代竜党)