開幕投手は高橋宏斗に決定!ドラゴンズ次なる課題は「先発ローテの確立」

井上一樹新監督を迎えた中日ドラゴンズ、2025年ペナントレースの初陣マウンドには、5年目の髙橋宏斗(※「高」は「はしごだか」)が立つことになった。ファンとしても納得の決定である。(敬称略)
相手チームが嫌がる投手

開幕投手を高橋宏斗に決めた理由について、井上監督は「押しも押されもせぬウチのエース」「立ち振る舞い、ボールの威力、昨年の実績」などを挙げたが、次のひと言が最も腑に落ちた。
「相手チームに嫌だなと思わせる投手」
まさにそこだろう。開幕投手が自身だと発表された日、高橋宏斗は開幕戦の相手でもある横浜DeNAベイスターズとのオープン戦に先発した。4イニングを2安打無失点という投球内容ももちろんだが、マウンドでの所作は安心して見ていられる安定ぶりだった。
開幕戦は特別なゲーム

開幕戦を「重要なオンリー1」のゲームと考えるか、「143分の1」のゲームと考えるか。結果論として負けた場合は、心情的に後者を選んでしまうが、やはり開幕戦は特別な試合であろう。ましてや、チームを初めて率いる新監督にとっては、極めて重要なはずだ。井上新監督が高橋宏斗に対し「オレの監督としてのスタートはお前で行かせてもらう」と話したと言う談話が紹介されたが、まさに正直な気持ちの吐露だろう。
落合監督、衝撃の開幕投手
2004年(平成16年)の開幕ゲームで、その年からドラゴンズを率いた落合博満新監督は、過去3年間登板のなかった川崎憲次郎投手を開幕投手に指名して、周りのあっと驚かせた。肩の故障を抱えていた川崎投手は5点のリードを許してマウンドを降りたが、チームは大逆転勝利をおさめて、一気に勢いに乗った。
「何をしてくるか分からない」という落合采配の、ある意味“不気味さ”を他球団に植え付けて、同時に大切な1勝を手にした開幕戦だった。そのシーズン、リーグ優勝を果たした貴重な“初めの一歩”だった。やはり、開幕戦は大切なのである。ドラゴンズの開幕投手が白星を記録したのは、2016年の大野雄大までさかのぼる。背番号「19」には、9年ぶりの先発投手勝利を期待したい。
続くは新助っ人マラー投手

開幕投手が決まったことで、ドラゴンズ投手陣の次なる大きな注目は、先発ローテーションの顔ぶれに移った。開幕2戦目以降の先発投手である。正直なところ、開幕が3週間後に迫った現時点、まだそれが見えてこない。候補の数は多い、しかし、勝ち星を計算できる投手となると今シーズンはなかなか指を折ることができない。高橋宏斗に次いで開幕投手の候補に名前が挙がった新外国人の左腕、カイル・マラーがその2番目に名前が浮かぶ。さて、それに続くのは誰か?
先発ローテの候補は多い

ベテランでは、21年目を迎えた涌井秀章、ここまでエースとしてけん引してきた大野雄大、そして、安定感が増している松葉貴大がいる。さらに、選手会長を後輩に譲って今季こそ復活を期す柳裕也、3年目の正念場となる仲地礼亜、そろそろ潜在能力を発揮してほしい梅津晃大、新しい背番号「29」を背負った松木平優太、そして、日本の野球にも慣れてきたウンベルト・メヒア。ドラフト2位の左腕・吉田聖弥も先発候補であろう。
しかし、誰に何勝を期待できるのか、ファンとしても予想が悩ましい。開幕ローテーションの確立は、3月23日まで続くオープン戦における大きな課題であり、今季は特に1試合とても無駄にできない、投手力を見極める大切な場となる。
金丸夢斗への“夢”

先発投手について夢を語るならば、3人の名前を挙げたい。まずは、4球団競合の末に入団したドラフト1位の金丸夢斗。春季キャンプで投球を見た10人が10人とも「別格の素晴らしさ」と絶賛した逸材である。腰のコンディションを大切に調整が続いているが、焦らず出てきてほしい。1年前のドラフト1位の草加勝も、右ひじトミー・ジョン手術からの復活が期待される。そして、福岡ソフトバンクホークスから獲得した育成選手の三浦瑞樹も「支配下登録あり」を予感させる。この3投手が加われば、先発陣の選択肢は一気に増えよう。
「投手王国」と言われたドラゴンズ、実はそれは“過去の話”である。それくらいの危機感を持って臨まなければならないシーズンなのだ。初めて1軍の投手陣を預かる山井大介と浅尾拓也、両コーチ、そして長く竜投手陣を指導する大塚晶文コーチの手腕に期待すると共に、井上新監督の慧眼にも注目して、開幕ローテーションの陣立てを見守りたい。
【CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】
※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲 愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。CBCラジオ『ドラ魂キング』『#プラス!』出演中。