竜(ドラゴンズ)は秋の沖縄で爪を研ぐ・野手編~待ったなし3選手への熱き期待~
井上一樹新監督を迎えた中日ドラゴンズは、2年ぶりとなる沖縄県北谷町での秋季キャンプに入った。強化メンバーとして選ばれた22人の竜戦士が、3年連続最下位からの逆襲に向けて、野球漬けの日々を送る。長年の課題である得点力不足の解消なるか?3人にスポットを当てる。(敬称略)
鵜飼航丞~本塁打ゼロでは残念
ヒットは出るけれど点に結びつかない。“あと1本”が出ない。もどかしい思いが続くドラゴンズ打線だが、この選手がホームランを量産すれば、実は簡単に問題解決となる。鵜飼航丞である。地元出身の大砲候補も、すでにプロの世界で3シーズンを過ごした。59、41、そして12、これは鵜飼の3年間の1軍での出場試合数である。期待から失望へ、ベンチもファンも正直そんな思いである。
ホームランの数も、4本、3本と減り、2024年(令和6年)シーズンは、ついに1本も打てなかった。筆者がスタンドで観戦したゲームでも、せっかくのスタメン起用なのに、三振あり併殺打あり。勝負が決まった後にようやく2ベース。これでは当然、出番は減る。
ひたすら球を打ち続けろ
それでも、井上一樹新監督によって、沖縄での強化メンバーの中、わずか4人の外野手のひとりに選ばれたという意味は重い。かつて東京ドームの試合前に鵜飼の打撃練習を見て、心底楽しかった。打球は次々と左中間スタンドに飛び込む。ジャイアンツファンまでもが驚嘆の歓声を上げる風景は心地よしのひと言だった。
2軍監督だった井上監督も、その打球を見てきたのだろう。秋の沖縄、鵜飼にはただひたすらバットを振り続けてほしい。ボールを打ち続けてほしい。ただ、闇雲に打つのではなく、一球一球、頭の中で他球団の各投手を思い描きながら。井上監督は「選手が一皮むければ」と抱負を語ったが、鵜飼には手のひらの皮が毎日でもむける、そんな日々を送ってほしい。
石橋康太~ルーキーが追って来る
いつになったら、竜の正捕手の座についてくれるのだろうか。石橋康太にとって、プロでの6年間が過ぎた。ルーキー年で清水達也と“10代バッテリー”を組んで初のスタメン出場し、打撃でも活躍しての勝利、しかし、それから幾星霜を重ねた。2024年シーズンは、わずか11試合の出場にとどまった。大きな期待とは裏腹に、プロ入り6年間での1軍出場は合わせて104試合、あらためてその少なさに驚いてしまう。
竜のホームベースを守る捕手「次は石橋」と言われながらも、継続的に起用されない。あるOB評論家は「まだプロのレベルではない」と語る。打撃の良さは誰しも認めるところであり、課題はリード、キャッチング、そしてスローイングの守備面なのだろう。沖縄では、ひたすら投手の球を受け続けてほしい。朝昼晩、投手と語り合ってほしい。ドラフト4位で入団してくる石伊雄太捕手への期待の大きさは、石橋への物足りなさであることを肝に銘じて、信頼される正捕手になってほしい。
石川昂弥~もう「4番」に座ってほしい
石川昂弥にとっても、待ったなしの秋である。“将来の4番”と言われたのは、2019年(令和元年)ドラフト1位指名の時のことであり、その「将来」は5年経った今なお訪れていない。立浪和義監督の2年目だった2023年に121試合に出場して、ホームランも13本打ち、いよいよ覚醒かと思われたが、残念ながら翌シーズンは失速した。軽くスイングするだけで“飛ぶ”打球は、石川が持って生まれた才能であり、磨いてきた技術である。
笑顔封印で“恐い”打者へ
ドラフト会議では、福岡ソフトバンクホークスの王貞治会長が「欲しい」と認めたほどの打者。ここまで5年間の歩みが、まどろっこしくて仕方がない。どうしても優しい笑顔が浮かんできてしまう石川昂弥。秋の沖縄では、そんな笑顔を封印して“恐い打者”へと一皮むけることに期待したい。残念ながら、手首の不調で別メニューにもなったが、そんな状態すらお構いなく、バットを振り続けるような“乱暴な”一面も見てみたい気がする。背番号「25」がスタメン発表で4番目に場内アナウンスされ続けることが、井上ドラゴンズの生命線になるはずだ。
【CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】
※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲 愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。CBCラジオ『ドラ魂キング』『#プラス!』出演中。