立浪竜3年目も“負け越し”で前半戦を折り返し、勝てない理由とファンの切歯扼腕
3年目のシーズンこそと信じていた、立浪ドラゴンズの逆襲を。しかし、オールスターゲーム前までの成績は、90試合を戦って38勝46敗6分、借金8(成績は7月21日現在)。2年連続の最下位チームは、残念ながら2024年の今季も5位と、未だ浮上できていない。立浪和義監督としても、3年連続の前半戦負け越しである。(敬称略)
投打の深刻な問題点は?
打撃と防御率などシーズン成績表を見ると、ドラゴンズの投打の現状が浮き彫りになる。規定打席に達しているリーグ20選手の中に、ドラゴンズからは細川成也ただひとりしかいない。いかに打線の顔ぶれが毎試合めまぐるしく変わっているかの表れである。
同じように、規定投球回数に達している投手の中には、小笠原慎之介だけが防御率9位で入っている。打線も先発ローテーションも、継続して活躍する選手が少なく、ベンチはそのやり繰りに苦闘している。一方で、リリーフ陣だけは、セーブとホールドポイント(HP)でリーグのトップクラスに名を連ねている。
中田の活躍は物足りない
打線における誤算、真っ先に名前が浮かぶのは中田翔である。讀賣ジャイアンツとの契約を自ら放棄してまでして、竜の仲間入りをした。ペナントレース開幕から4番に座り、開幕戦ではいきなりの同点ホームラン。チームにとって4月快進撃の象徴でもあった。
しかし、自打球を脚に当てるアクシデントや腰の不調などによって、2軍での調整が続き、今季ここまで、打率.216、4本塁打、打点20である。期待の主軸の離脱によって、チーム作りは大きく方向転換を迫られた。前半戦最後の巨人3連戦で、タイムリー2ベース、そして本拠地での初ホームランも披露したが、まだまだこれでは物足りない。
どうした?新リーダー岡林
もうひとり、岡林勇希の不調も大きかった。オープン戦で右肩に違和感を訴えて、開幕に間に合わなかった。4月後半に1軍に合流してスタメン起用の機会が増えたが、その打撃は一向に上向いてこない。立浪監督1年目の2022年には最多安打のタイトルを取り、2023年は全試合に出場して、前シーズンを上回る163本の安打を記録した。背番号も「60」から「1」に変わって、まさにチームリーダーとして歩み出した今季だった。
打順における1番の岡林と4番の中田、この構想が崩れたことによって“日替わり打線”が際立つようになった。同時に守備のポジションも毎試合のように入れ替えが生じた。チームの総得点は211点、リーグ最下位である。この日替わり打線を見るにつけ、今季もキャンプからのチーム作りの失敗と言わざるを得ない。
開幕ローテーションも崩れた
先発投手陣にも誤算が生じた。開幕投手をつとめた柳裕也が、2度にわたって2軍での再調整を余儀なくされていることに加え、肘の手術から復帰して早々に勝ち星を挙げた大野雄大も、その後は調子が上がってこない。小笠原慎之介は、毎試合長いイニングを投げて試合を作っているものの、打線の援護に恵まれず負け越している。ベテランの涌井秀章も体調面での不安が生じている。こんなことなら、昨秋のドラフト会議でもっと多く即戦力候補の先発投手を獲得しておけば良かったのに、とファンとしては思ってしまう。
唯一、開幕には間に合わなかったものの4年目の高橋宏斗(※「高」は「はしごだか」)が先発ローテーションの軸となっている。ここまで7勝1敗。7月19日の12奪三振をスタンドで観戦したが「打たせてたまるか」という気迫が伝わってくる、素晴らしい投球だった。
頼みの綱は鉄壁のリリーフ陣
明るい光は、リリーフ陣である。ライデル・マルティネスは、両リーグでも断トツの29セーブを挙げている。その安定感は年々増している。さらにライデルにつなぐ2投手、2年目の松山晋也は29ホールドポイント、清水達也は25ホールドポイントと、リーグ1位と3位に名を連ねる。
この3人が終盤の7回、8回、そして9回を投げるのだから、ドラゴンズは6回までリードを保てば、勝つ確率は大いに上がるのである。他球団が羨むリリーフ陣、しかしそれを有しながらもチームは5位に低迷して、彼らの投球回数だけが増えていく。シーズン後半戦に向けて、3投手はじめリリーフ陣の蓄積してくる疲れが心配である。
まずは打線を落ち着かせて!
ペナントレースは残り53試合、すでにシーズン日程の6割が終わった。ここまでの問題点を真摯に検証して、まずはこれからの浮上をめざさなければならない。前半戦の総括から見えてくる方向性、それは「先制点を取って、試合を主導して、リリーフ陣で締める」という戦い方だろう。そのためにも、これまで当コラムで何度も提言してきたことだが、打順と守備位置を落ち着かせてほしい。先発投手には長いイニングを期待したい。当たり前のことなのだが、その“当たり前ができていない”から、現状の成績なのである。
前半戦最後の讀賣ジャイアンツとの3連戦も、バンテリンドームには連日満員のファンが詰めかけた。しかし、決して立浪竜3年目の戦いぶりに満足しているファンばかりではない。声援以上にため息も多い。満員御礼のスタンドに甘えることなく、勝っても負けても竜党が納得できる、そんなドラゴンズ野球を後半戦こそ見せてほしい。それが上位浮上への道と信じたい。
【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】
※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲 愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。