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根尾昂ついに投手に本格転向へ!立浪ドラゴンズ夢の“起爆剤”その行方

根尾昂ついに投手に本格転向へ!立浪ドラゴンズ夢の“起爆剤”その行方

新たなステージが始まる。中日ドラゴンズの根尾昂選手が、リーグ戦の再開に合わせて投手に転向することになった。その行方には賛否両論の声が飛び交い、球界の注目を集めている。

沖縄のプルペンで投げた!

「サンデードラゴンズ」より根尾昂選手(C)CBCテレビ

その具体的な一歩は、沖縄での春季キャンプだった。その日のことをはっきりと記憶している。2022年2月23日、天候は雨。この日からキャンプ取材のために1軍キャンプ地の北谷町に入ったのだが、球場の東側にあるブルペン周辺が騒がしかった。雨でグラウンドが使えないこともあり、根尾昂、石川昂弥、岡林勇希そして鵜飼航丞の4人の若手野手がブルペンに入って投げたのだった。スローイング練習も兼ねての投球練習だったが、記録した球速こそ145キロの岡林“投手”に1キロ負けたものの、根尾“投手”が投げた球は、およそ野手とは思えない力強いものだった。立浪和義監督はブルペンの後ろに立って、じっと見守っていた。

「外野手1本」立浪新監督の決断

「サンデードラゴンズ」より根尾昂選手(C)CBCテレビ

4年目を迎えた根尾選手にとって、新監督を迎えた2022年シーズンは“紆余曲折”の日々となった。言葉がしっくりこないのならば“波乱万丈”か。春季キャンプの時点では、これまでの3年間と同じ「内野手」登録。しかし開幕前に「外野手」登録に変更された。外野手での起用は、秋季キャンプの時点で、就任早々の立浪監督が明言していた。

「外野手1本。打てればスタメンで使う。ポジションはライト」

しかし、開幕スタメンに根尾選手の名前はなかった。ライトに入ったのは1つ後輩の岡林選手で、いきなり3安打の活躍。根尾選手の出番は、本拠地バンテリンドームに帰っての最初の試合まで待たなければならなかった。

ショートに戻った2軍戦

「サンデードラゴンズ」より根尾昂選手(C)CBCテレビ

開幕から1か月ほどたった4月21日、ナゴヤ球場では福岡ソフトバンクホークスを迎えてウエスタン・リーグの2軍戦があった。たまたまスタンドで観戦したが、ゲーム前の練習で、ゲームに出場するために1軍から来ていた根尾選手がライトではなくショートのポジションについたことに驚いた。実は試合前に、ナゴヤ球場を訪れた立浪監督から「ショート転向」を言われたことを後で知った。もともとプロ入りの時に「ショート1本」と宣言してドラゴンズに入団した根尾選手。いよいよかと思ったものの、その後、開幕スタメンでショートだった京田陽太選手が2軍落ちした後も、「ショート根尾」はなかなか実現しなかった。外野手としては、その強肩を披露していた根尾選手。立浪監督の談話から「ショートの守備がまだまだ」という理由が浮かび上がっていた。

ファン注目の“二刀流”

根尾“投手”の初登板は、5月21日のマツダスタジアムだった。すでに甲子園球場での2軍戦で投げていたが、1軍では初マウンドとなった。150キロの速球に広島のスタンドはどよめき、この時から「投手・根尾」をめぐって、野球ファンをはじめ、数々の評論家や解説者、さらにタレントにいたるまで、賛否両論さまざまな意見が飛び交った。その数の多さは、「根尾昂」という野球選手の注目度をあらためて示すものだった。そんな中での立浪監督の言葉が強烈に印象に残っている。

「心配しなくても、僕が一番よく見ている。そっとしておいてほしい」

「根尾昂」とドラゴンズの現在地

「サンデードラゴンズ」より立浪和義監督(C)CBCテレビ

その立浪監督は、交流戦を終えてリーグ戦が再開する6月17日から、根尾選手の登録を「投手」に変更することを明らかにした。根尾選手にとっては2022年、「内野手」「外野手」そして「投手」、3つのポジション登録を経験することになる。これは根尾昂という“素材”が、それだけの才能を持っていることの証し、と同時に「どれも秀でたものがない」という厳しい現状をも表している。ただ、これだけは言える。ドラゴンズというチームがようやく本腰を入れて「根尾昂」と向かい合っているのだと。2018年のドラフト会議で与田剛監督が根尾選手をクジで引き当てた瞬間の興奮、讀賣ジャイアンツまでもが欲しがった“甲子園のスーパースター”がやって来る。しかし、それからの日々でチームはその存在を持て余しできたとも言える。最初の沖縄キャンプでは「ケガをさせてはいけない」。デビューは「しっかり力をつけてから」。そのポジションも内野なのか外野なのか中途半端。3年の歳月があっという間に流れた。立浪監督は本気で考えているのだろう、根尾昂を何とかしたい、いや、しなければならないと。

ある人は孫のように愛おしみ、ある人は息子のようにエールを送る。イケメンコンテストでも上位に選ばれる。野球人「根尾昂」の存在は、やはり今のドラゴンズにとって特別なものなのだろう。ドラゴンズには2つの永久欠番がある。「10」番の服部受弘と「15」番の西沢道夫。いずれも投手としても野手としても活躍した“二刀流”の選手だった。投手として歩みだす根尾昂の名前が、将来ドラゴンズ球団史にどう残っていくのか。今は立浪監督の決断を信じて、静かにそして楽しみに見守りたい。
                                  
【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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