球春キャンプイン!ドラゴンズ1軍と2軍の選手分けから考察する“立浪革命”
待ちに待った球春が到来。プロ野球12球団の春季キャンプがいよいよスタートする。立浪和義新監督を迎えた中日ドラゴンズも、恒例の沖縄県でシーズンに向けて加速する。
1軍にドラゴンズジュニア出身3選手
ドラゴンズは例年と同じように、1軍は北谷町そして2軍は読谷村でキャンプイン。球団が発表した1軍と2軍の振り分けには、全体として明るくそして新しい希望の光を感じる。それは明らかに“立浪イズム”を具現化したものだった。1軍でキャンプを迎える根尾昂選手、石川昂弥選手、そして高橋宏斗投手。3年連続ドラフト1位で獲得した甲子園のスターたち、何より3選手ともドラゴンズ運営の少年野球チーム「ドラゴンズジュニア」出身である。この3人が同時にバンテリンドームのグラウンドに立つ日を、多くの竜党は夢見る。まさにその夢への一歩。自らが高校時代に甲子園で春夏連覇を成し遂げた立浪監督だけに、有望な高卒トリオには大いなる期待があるはずだ。
期待のルーキーも1軍スタート
ルーキーからも3選手が1軍キャンプに抜擢された。ブライト健太選手、鵜飼航丞選手、そして石森大誠投手。ブライトと鵜飼の両外野手は「打てない打線」解消への“象徴”として、ドラフト会議で1位と2位指名された。6位指名の福元悠真選手を含めて大学生の外野手3人獲得は、86年目を迎えた球団史でも初めてのこと。周りからの期待と注目の高さに対して、まずはキャンプメンバー選択において応えた形だ。ブライト選手の身体能力の高さ、そして鵜飼選手のバットスイングの速さは、新人合同自主トレでも注目された。左腕の石森投手は、落合英二ヘッドコーチが現役時代に付けた背番号「26」を背負って、開幕1軍、「新人王」を目標に掲げる志高い投手である。
育成選手が新鮮な抜擢
最も驚き、最も新鮮だったのは、背番号「203」上田洸太朗投手と「206」松木平優太投手の1軍キャンプスタートだった。2投手とも3ケタの背番号が示すように“育成選手”である。育成選手、それも高卒で入団した2年目の春季キャンプを1軍で迎える。「秋のキャンプの成果」と落合ヘッドコーチは、その理由をあげた。上田投手は地元の野球名門校・享栄高校出身の左腕、そして松木平投手は大阪の精華高校出身の右腕、いずれも活きのいい投手である。本人たちにとって何よりの励みであろうが、2軍でキャンプをスタートする選手たちにも刺激十分であろう。頑張れば、明日は1軍への扉が開くのだから。
新庄ビッグボスとの共通点
ドラゴンズのキャンプ地から沖縄本島をさらに北へ。同じく新監督の新庄剛志“ビッグボス”に率いられる北海道日本ハムファイターズは、1軍と2軍の振り分け以上に、そのネーミングに注目が集まっている。1軍、2軍と呼ばず「BIG組」「BOSS組」と新庄監督は紹介した。キャンプ初日は監督自ら“2軍”の国頭村からスタートすると言う。ドラゴンズでも、2004年からチームを率いた落合博満監督が「1軍」「2軍」の呼び方をやめた時期があった。強いチームは、選手もフロントも球団スタッフも、もちろんファンも、一丸となってペナントをめざす。ドラゴンズは前年まで、キャンプでもシーズン途中でも、1軍と2軍の入れ替えが少なかった。ファンとして見ていてもキャンプでの振り分けがその後もずっと続く印象で、選手の間でも「北谷組」「読谷組」と呼び “あきらめ”の空気があったと聞く。立浪新監督はキャンプ中からも積極的な1軍2軍の行き来を明言している。チームは一丸。立浪と新庄、新たに指揮を取る2人の監督の思いは同じなのだろう。“形”は違えども、この2人の“発想”はやはり似ている。
新型コロナの感染拡大は、オミクロン株を中心にドラゴンズにもファイターズにも大きな影響を与えている。しかし、球春の光はそんな影を振り払ってくれると信じたい。キャンプ地である沖縄から発信される新生ドラゴンズの明るいニュースを心から待っている。
【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】
※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲 愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。