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解説者・岩瀬仁紀の「シャープなコメント」vs 中日・吉見一起投手の「静かに燃える野心」

解説者・岩瀬仁紀の「シャープなコメント」vs 中日・吉見一起投手の「静かに燃える野心」

「とある妄想しがちなファンのドラゴンズ見聞録」
CBCテレビ「サンデードラゴンズ」(毎週日曜日午後12時54分から東海エリアで生放送)1月27日放送を見たコラム」

“無四球”完封勝利にみる吉見投手の真価

吉見一起投手の2018年シーズンで印象強い試合の一つに、
「8月10日ヤクルト戦の“無四球”完封勝利」がある。
それは吉見投手の復活の手応えを強く感じたとともに、真価が顕在化するような試合であったからだ。

「完封よりも”無四球” (での勝利)がチームとしてもなかったのでできてよかった」

とヒーローインタビューで語っていたとおり、無四球勝利は今のドラゴンズ、そして今の吉見投手の投球で「フォアボールを使うことなしに完封勝利ができる」ということを、選手たち全員に結果をもって証明したのだ。

同時に、試合後のコメントで「このチームはフォアボールが多すぎる」
と自身にも改めて言い聞かせるように発していた。これは昨季セリーグ与四死球数ワーストとなった投手陣にはいっそう強く突きつけられたものだろう。

矛盾するようなことを言うが、フォアボールは試合をつくる中で必要となるときもある。ストライクから外れるのを覚悟でギリギリを狙って、結果的にボールになって、それが4つ目のボールであったときフォアボールとなる。塁を1つ与えてしまう行為だが、長打を避けたり一発に警戒したりと戦略的にそれを選ぶこともあるだろう。

同じフォアボールでも意図なく外れていったそれは、試合の中で組み立てたストーリーを分断し、どんどんと制御不能なバッドエンドに陥ってしまう。ゲームを俯瞰的に見る能力のある吉見選手ならより克明にそれを感じるのではないか。先発ローテの軸となる吉見投手の一つのボール/ストライクに対する思想が現れていたように感じたのだ。

この試合はまさに、球数も少なく失点にいたっては0で理想通りに制御できたことを模範のように示したのだ。

抜群の制球力がもたらす、試合をコントロールするチカラ

吉見投手のストロングポイントの一つは、針の穴を通すような制球力だ。
番組でも低めの制球力によってチームトップのゴロアウト率を誇ることを紹介された。

その抜群の制球力を勝利に結びつけているのは、試合をコントロールするチカラだ。どんな状態のときでもその日に投げられるボールでどうやってアウトを重ねていくかを思考し、答えを出していく。その計算立てに欠かせないのが高精度のコントロールだ。

吉見投手は、今日は調子が良くなかったと言いながらも勝利することが度々ある。その日投げられるボールをバッターとの間の空間で、どのように演出していくのかを経験とセンスで描き出していく。そしてその演出がばっちりと決まったとき、その美しい時間にほれぼれするのだ。

そしてその経験とセンスは衰えることはなく、これからも積み重ねられる。

解説者デビューした岩瀬仁紀氏の「ローテーションの軸を守ってほしいですし、やっぱり2ケタを勝てる力はまだ持っているので、もう一度2ケタを勝って、自分の中でさらなる自信を深めてほしい。」とのコメントはそういう面での実績を信頼してのことだろう。

精神面をリスペクトする後輩に結果で応えよ!

自主トレには、柳裕也投手、石川翔投手、清水達也投手の後輩ピッチャー3人がそれぞれに参加を志願した。3投手ともこれからのドラゴンズを担ってほしい将来有望な投手である。

「プロ意識の高さを勉強したい」柳投手
「すごい考えを持っているし精神面でも色々盗みたい」石川投手
「オフシーズンはどういう取り組みをどう考えてしているか知りたい」清水投手

間近で感じる吉見投手のトレーニングからそれぞれに学んだことがあるだろう。吉見投手が「言葉で説明するのが難しい」と話すように、結果を求めるために重ねられる練習は簡単に言語化できないプロフェッショナルなものだ。その練習と結果を出す姿が重なってはじめて後輩たちに実感として練習の意図は浮かび上がる。そのためにも吉見投手は負けられない。結果を出せば後輩投手たちにも波及的に影響し、チームを強くすることにも繋がっていくのだ。

「結果出せられなかったら今年で」岩瀬氏が吉見投手に求めるものとは

岩瀬氏の先発投手の構想に笠原祥太郎投手、柳裕也投手、小笠原慎之介投手の若手3選手。
そして吉見一起投手、大野雄大投手、松坂大輔投手、山井大介投手というベテラン選手があげられていた。

「ベテランなのでしっかり結果を出してもらわないといけないピッチャーなんですが、結果出せられなかったら今年でっていう感じですかね」

あくまで冷静な表情で語られたその言葉は重い。しかし同じ面持ちで吉見投手には結果が出せる力が十分にあると語られている。その言葉は優しさではないはずだ。ケガから復活してきた今、貪欲に勝利を求めるしかないというシンプルな思いを吉見投手に伝えたかったのだろう。

2019年の公約「5完投」から読む吉見投手の熱い闘志

そして発破をかけられた吉見投手は「5完投2完封」を公約にあげた。私が気になったのは5完投の部分だ。
完投勝利の数は勝利数に直結する。それは当たり前の話しだが、2008年~2012年の二ケタ勝利を続けていた頃は相手投手も成績のよい投手とあたることが多く完投しないと勝てない状況にあったと思う。つまり対戦チームの軸となる投手を相手にうち勝ってきた証しだと思う。

試合当日にはご飯を食べずハングリーな状態で闘争心をかき立てるという熱い男の吉見投手。
改めて「5完投」を公約といて掲げた裏には、岩瀬氏の厳しい見立てを圧倒するほどの

”軸となって俺が結果で引っ張ってやるぞ!”

というメラメラとした気持ちが込められているのではないかと深読みしている。
緊迫した試合で投げ勝つその姿を2019年シーズンに沢山見られることを期待せざるを得ない。
息も飲めず見守るような試合を、吉見投手のキレキレのコントロールでねじ伏せて我々を痺れさせてほしい!

(ドラゴンズ妄想文筆家 澤村桃)

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