残念な結果だった。
今年のプロ野球オールスターゲーム、ファン投票の結果が発表された。12球団で唯一、中日ドラゴンズからは1人も選ばれなかった。

首位打者も最多勝も選ばれず

今季のドラゴンズは現在リーグ5位、しかし個々の選手は成績を残している。
ファン投票結果が発表された6月24日16時の時点で、高橋周平選手が「首位打者」、柳裕也投手は「最多勝利」、大島洋平選手は「盗塁王」、そしてジョエリー・ロドリゲス投手は「最多ホールド」。さらにその夜に横浜DeNAベイスターズの山崎康晃投手に抜かれたが、鈴木博志投手も「セーブ王」だった。5冠のドラゴンズ選手たちが誰も選ばれなかった残念な現実・・・。高橋選手は三塁手の3位、柳投手は先発の9位だった。

なぜファン投票に弱いのか？

もともとドラゴンズは、ファン投票に強いチームではない印象がある。勝っても負けても贔屓チームを応援したり、組織票を駆使したり、他の球団にありがちなファン体質が伝統的にないためかもしれない。だから爆発的な票が入ることはこれまでもあまりなかった。
ドラゴンズファンの「基礎票」に加え、そのシーズンで全国のプロ野球ファンからも熱い思いを受けるドラゴンズ選手に送られる「浮動票」が上積みされて、ファン投票1位に選ばれてきたと分析する。
過去20年間に目を向けてみると、延べ13人のドラゴンズ選手がファン投票1位だった。この内の最多選出は2人、岩瀬仁紀投手と井端弘和内野手でそれぞれ3回ファン投票で選ばれている。それに福留孝介選手（現・阪神タイガース）が選出2回で続く。いずれも「基礎票」に加え「浮動票」も獲得できる“チームの顔”だった。
2018年シーズンは、ドラゴンズブルーのユニホームを着て、けがからの復活を遂げた松坂大輔投手の1位選出が記憶に新しい。これも全国のファンからの後押しだろう。

与田と川上・強烈なオールスター戦

ファン投票1位に選ばれた竜戦士の内、強烈な印象を残した投手が2人いる。
まず現在ドラゴンズを監督として率いる与田剛さん。ルーキーだった1990年（平成2年）、抑え投手だったにもかかわらず投手部門の1位で選ばれた。当時は現在のように先発、中継ぎ、抑えと3部門に分かれてはいなかったが見事ファン投票1位。与田投手は第2戦にパ・リーグのファン投票1位だった近鉄バファローズの野茂英雄投手と先発対決を果たした。
もうひとりは川上憲伸さん。こちらもルーキーイヤーの1998年にファン投票1位で出場。第1戦が本拠地ナゴヤドームだったこともあり先発し、3イニングを無失点に抑えて見事その試合のMVPを獲得した。新人投手がMVPに選ばれたのは史上初という快挙だった。

ドラゴンズに足りないアピール力

今回ファン投票で選ばれた選手たちの顔ぶれを見ると、やはり贔屓チームのファンだけからの支持ではなく、プロ野球ファン全体からのエールを受けているようだ。残している成績では存分にアピールできているドラゴンズ選手がファン投票で選ばれないのは、やはり何かが足りないのだろう。
けがのためにシーズン早々の4月上旬から試合に出場していない福岡ソフトバンクホークスの柳田悠岐選手は外野手部門の3位で選ばれているのだ。
ドラゴンズ選手たちには、シーズン後半戦に向けてより一層グラウンドでのプレーでアピールし続けてほしい。そしてそんな選手たちのアピールをしっかり後押ししてコーディネートするよう球団にも期待したい。

ファンへの熱い気持ちを形に！

ナゴヤドームに名古屋市営地下鉄の駅から向かう地下通路は、シーズン中に「ドラゴンズ・ロード」へと姿を変える。通路の両側に選手たちの大きなパネル写真が掲示され球場へ向かうファンを迎えている。かつて「選手ひとりひとりが写真にサインしてほしい」と拙著の中で提言しそれは実現したのだが、実際に掲示されたのはプリントされたサインだった。それを知ったキー局の報道幹部は「直筆でなければね～」と感想を述べたが、筆者が提言した真意もまさに同じである。2軍の本拠地であるナゴヤ球場でさえ、観客席への通路に掛けられている選手の写真パネルには直筆のサインが書かれている。根尾昂選手ら若竜の応援に訪れる熱心な竜党が、それを嬉しそうにスマホなどで撮影している。ならば「ドラゴンズ・ロード」のパネルにも「ホームランを打つよ！」「全力プレーを見に来てね！」「オールスターで1票よろしく！」などそれぞれのメッセージと共に直筆でサインをすることは可能なのでは？選手も首脳陣もパネルに登場する全員が、である。それはひとつの形でしかないのだが、ファンとの向き合いにとって象徴的な姿勢になるように思う。

頼むぞ！周平そして柳

今回のファン投票では残念だったが、今シーズンの活躍がめざましい高橋周平選手は選手間投票でオールスターゲームに出場決定、柳裕也投手も監督推薦で選ばれると信じている。竜戦士には是非、その活躍を全国のファンに見せつけてアピールしてほしい。そして来季こそ、1人でも2人でもファン投票で球宴に選ばれてほしい。
もちろん私たちドラゴンズファンも気合を入れて応援しなければ！

【CBCテレビ論説室長・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ！ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲　 愛しのドラゴンズ！2』（ともに、ゆいぽおと刊）ほか。