中日ドラゴンズが進むべき道は?MLBと広島カープに見るOPSの重要性
「日米野球、楽しみですね」
声の主は中日の広島担当の鈴木義広スコアラー。秋季キャンプ中のナゴヤ球場。目の前では若手が打撃練習に励んでいた。
「メジャーはフライを打つ意識が強い。いわゆるフライボール革命。ゴロは長打が少ないし、併殺のリスクがある。ゴロのヒットより長打を打って、そこに四球が絡めば、得点力は上がります。昨今、日米ともにOPSが順位とリンクしています」
OPS(On-base plus slugging)とは出塁率と長打率を足した指標。2018年のOPSは広島(780)、ヤクルト(749)、巨人(728)、DeNA(722)、中日(705)、阪神(691)。見事に最終順位とマッチしている。
MLBのOPSは1位レッドソックス(ア・リーグ東地区優勝)、2位ヤンキース(ア・リーグワイルドカード首位)、3位ドジャース(ナ・リーグ西地区優勝)、4位インディアンス(ア・リーグ中地区優勝)、5位アスレチックス(ア・リーグワイルドカード2位)。上位5球団は全てプレーオフに進出している。
なぜ広島はOPSが高いのか。鈴木スコアラーはキャンプにヒントがあるという。
「フリー打撃のケージは4つ。ティー打撃も4箇所。広島の選手は振りまくります。止まったボールを打つ置きティーでライナーを打つメニューもあります。バックスピンをかけるのが目的。やはりゴロよりフライという意識です」
浮き彫りになった広島と中日の差
今年からナゴヤドームはトラックマンを導入。鈴木スコアラーは様々なデータを分析した。
「打球角度が高く、ゴロ率が最も低いのが広島。さらに、平均スイングスピードがリーグトップ。速いスイングでフライを打ちますから、長打が増えます。すると、相手投手は警戒し、四球が増え、出塁率が上がる。一方、中日はゴロ率が最も高く、スイングスピードは最低でした」
中日はチーム打率2位と健闘したが、得点は4位。長打も少なく、四球も少なく、足もない。ヒットが出ても各駅停車。中々、点に結びつかなかった。
10月、鈴木スコアラーはチェン・ウエイン(現マイアミ・マーリンズ)と再会した。
「驚きました。チェンが『打たれた日はボールが低めに集まっていた』と言ったんです。日本は低めに投げることが良いとされています。もちろん、メジャーも少し前はボールを低めに集め、ゴロを打たせる投手が主流でしたが、最近は打者がそれに対応。あえて低めを狙って、打ち上げる選手が増えたらしいのです」
チェンはフライボール革命への対応策を明言。
「高めの速いストレート、大きく曲がるカーブ、奥行きを使うチェンジアップ。これからはこの3つが鍵」
一歩先を行くMLBと広島。もちろん、タイプにもよるが、野手はゴロからフライへの切り替え、投手は低め至上主義を疑う時期ではないだろうか。
目の前では若手が一心不乱にバットを振っていた。しかし、思う。練習の意義は感じているのか。闇雲にこなしていないか。そもそもそれは進むべき道なのか。
それらが全て杞憂であることを来年証明して欲しい。
【CBCアナウンサー若狭敬一
CBCテレビ「サンデードラゴンズ(毎週日曜午後0時54分放送)」、CBCテレビ「スポーツLIVE High FIVE!!(毎週日曜午後1時24分放送)」、CBCラジオ「若狭敬一のスポ音(毎週土曜午後0時20分放送)」、CBCラジオ「ドラ魂キング」(毎週金曜午後6時放送)ほか、テレビやラジオのスポーツ中継などを担当】