中日 ドラフト2位指名梅津晃大投手の未来予想図
ドラフト会議の翌日、私は埼玉県川越市の東洋大学硬式野球部グラウンドにいた。中日2位指名の梅津晃大投手を取材するためだ。
恵まれた体にモデル並みのルックス。梅津には近未来のスターになることを予感させるオーラがあった。
日本通運や西部ガスで指揮を取った杉本泰彦監督は梅津について「私が今まで見た中で投手としてのポテンシャルは一番。中日には大塚(晶則)がいましたよね。彼より上です。うまく行けば、大谷翔平君のような真っ直ぐを投げられると思います」と賛辞を送った。
東洋大学150トリオのメンバーも梅津を高く評価する。ソフトバンク1位指名の甲斐野央が「角度のあるストレートが羨ましい」と言えば、DeNA1位指名の上茶谷大河は「オンとオフの切り替えがうまい。早く1軍で対戦したい」と闘志を燃やしていた。
そんな梅津とインタビュー。背筋を伸ばして椅子に腰掛け、1つ1つ真摯に答えてくれた。剛速球を投げ込む荒々しい姿とは全く違う、落ち着きと生真面目さがそこにはあった。
仙台育英高校時代は140キロ前後だった球速が東洋大学で153キロまで上がった梅津。その理由を聞いた。
偶然にも飛び出したレジェンド2人の言葉
「反骨心です。2年秋に調子を落として、メンバーから外れました。3年春も駄目。結局、半年間は戦力外でした。必ず見返してやると強く思って、トレーニングに励みました。すると、秋には150キロが出たんです。今思えば、あの期間が僕の野球人生にとって大きなものでした」。
反骨心。この言葉はかつて岩瀬仁紀が発していた。15年連続50試合登板ができた秘訣について「反骨心です。僕はずっと勤続疲労で怪我をすると言われていました。それを見返すつもりだった」と答えていた。
好きな言葉を尋ねると、梅津は少し間を置き、答えた。「やはり『お陰様で』という言葉です。野球を続けられているのも監督、コーチ、スタッフのお陰。そもそもピッチャーは野手に支えられて投げていますから、感謝の気持ちは大切にしています」。
感謝という言葉は荒木雅博がよく口にしていた。梅津はレジェンド2人と同じ感性を持っている。
10月中旬、母の明美さんが脳出血で倒れた。現在、仙台市内の病院に入院している。
「東都リーグ初勝利のボールを渡せたのですが、あまり意識はない状態でした。正直、辛いですが、今は全てを野球に繋げて考えています。母にプロでのウイングボールを渡せるように厳しい練習に取り組んで行きたいと思っています」。
母のためにも梅津は腕を振り続けなければならない。
底知れぬ潜在能力、秘める反骨心、謙虚な姿勢と母への思い。梅津は名古屋でいかに羽ばたくのか。未来予想図が楽しみでならない。
【CBCアナウンサー若狭敬一
CBCテレビ「サンデードラゴンズ(毎週日曜午後0時54分放送)」、CBCテレビ「スポーツLIVE High FIVE!!(毎週日曜午後1時24分放送)」、CBCラジオ「若狭敬一のスポ音(毎週土曜午後0時20分放送)」、CBCラジオ「ドラ魂キング」(毎週金曜午後6時放送)ほか、テレビやラジオのスポーツ中継などを担当】