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「和食展」で発見!名古屋めしの中にある和食らしさ~大竹敏之のシン・名古屋めし

「和食展」で発見!名古屋めしの中にある和食らしさ~大竹敏之のシン・名古屋めし
CBCテレビ:画像『デララバ』

愛知県は全国屈指の「軟水県」!

特別展「和食 ~日本の自然、人々の知恵~」は豊田市博物館で2025年4月6日(日)まで開催

豊田市博物館で開催中の特別展「和食 ~日本の自然、人々の知恵~」(以下「和食展」)。2020年春に東京・国立科学博物館で予定されながらコロナ禍で中止になった幻の企画展が2023年秋から晴れて開催の運びとなり、東京を皮切りに全国を巡回中です。

東京での最初の開催予定時から待ち望んでいた筆者は、先日6年越しに念願かなって同展に足を運ぶことができました。筆者の着目したポイントは、「和食」の特徴を深掘りする展示の中に名古屋めしとの共通点を見つけ出すこと。「名古屋めしは和食の特徴を分かりやすく表現した食文化である」という持論の裏づけを得られないかと考えたのです。

「都道府県ごとの水道水(原水)の平均硬度」(「和食展」展示パネル)。愛知県は国内でも屈指の軟水地域であることが分かる。

入場すると、求めていたものが早々にありました! 「都道府県ごとの水道水(原水)の平均硬度」というパネル展示です。水はミネラル分の含有量によって硬水と軟水に分けられ、日本は世界でもとりわけ硬度が低い柔らかな軟水が多い土地柄です。この軟水の長所がだしを取るのに適していること。ミネラルが少ない分、だしの抽出が邪魔されず、昆布やカツオといっただしの素材のうまみ成分がよく出るのです。パネル展示では、水道水の硬度によって47都道府県が色分けされています。そして、愛知県は国内でも最も硬度が低い軟水の地域と表示されているのです(!)。愛知県と同レベルの軟水県は山形県、宮城県、広島県のみ。京都をはじめ関西は水がよいのでだしがよく出るというイメージがありますが、実はだしを引き出す水のポテンシャルは愛知県の方が上。水が柔らかくだしがよく出る日本の中でも、愛知県は特にしっかりだしのうま味を引き出せる地域といえるのです。

続く展示でも、「和食に欠かせない『だし』」「だしの正体はうまみ成分を抽出したもの」「うま味は、甘味、酸味、塩味、苦味に続く5番目の基本味で、1908年、池田菊苗博士が発見して名付けた」(趣旨要約)とあり、だし、うま味は和食の根幹を成す特色であると紹介されています。筆者は先の持論の中で、名古屋めしの最大の和食らしさはうま味の濃さ、とくり返し主張しています。味が濃い、といわれる名古屋めしですが、濃いのはあくまでうま味です。うま味重視の名古屋めしの源は、うまみ成分の濃い豆味噌や溜まり醤油といった調味料にあるというのが筆者のこれまでの論の核でした。しかし、名古屋の食のうま味の濃さは水のおかげでもあることが明らかになり、持論をより強化することができたのです。

軟水だから発展した名古屋のお茶・喫茶文化(!?)

愛知県が軟水県であることは、お茶、喫茶店文化のバックボーンにもなっているのではないかと感じます。だしのうま味と同様に、軟水はお茶の味わいもより引き出します。さらにコーヒーを淹れると甘みがよく出るといわれます。水のおかげでお茶やコーヒーがおいしく飲めることが、名古屋の茶の湯や喫茶店文化の発展にもつながっているのではないでしょうか。

また、和食展の公式ガイドブックには、MFPCA(食の遺産と文化のフランス委員会)委員長ジャン=ロベール・ピット氏の言葉として「日本人は(中略)新しい味を生み出し、それを生み出す才覚にもたけています」とも記されています。カレーやラーメンなど外来の食文化を旺盛に取り込み国民食にまで発展させていることをふまえての言葉です。この特徴は味噌カツ、ひつまぶし、小倉トーストなど意外性のあるかけ合わせにも大胆にチャレンジし、地域固有の料理を生み出している名古屋めしにも相通じます。

和食展ではこの他にも、クックパッドに集まるビッグデータを分析した「都道府県別 食べたい・作りたい 人気検索ワードTOP5」、「教えて!あなたにとっての『和食』アンケート~これって和食?Yes or No!~」(対象はカレーライス、ラーメン、コロッケ、焼き餃子、照り焼きバーガー、あんぱんなど12メニュー)など、現代の食意識をすくい上げる展示や参加型企画もあり、和食を自分たちにとって身近な話題として考え、親しめる内容となっています。

和食を深く知ろうとしたら名古屋めしをより深く理解できていた「和食展」。豊田市博物館での会期は2025年4月6日(日)まで。食に関心のある人、食の仕事にかかわる人なら見逃せません!

※記事内容は配信時点の情報です

#名古屋めしデララバ

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