豆味噌だからこそ生まれた味噌おでん 店でも家でもひと手間でよりおいしく~大竹敏之のシン・名古屋めし
居酒屋と家庭で2タイプあり
寒い時季にぴったりのおでん。実はタネ(具)や味つけに地域差があり、全国で広く食べられているのは濃い口醤油のいわゆる関東煮。対して関西風は薄口醤油に昆布ダシ。おでんダネも東京のちくわぶ、関西の牛すじ、京都の生麩、愛知の角麩や赤棒など、特定の地域でしか見られないものが少なくありません。
そしてもちろん、名古屋、愛知ではおでんといえば味噌おでん。コンビニのおでんでも小袋入りの味噌がついてくる、というのはおなじみの名古屋あるあるです。
味噌おでんは大きく2種類に分けられ、味噌のダシで煮込むタイプと、関東煮または関西風に調味味噌をつけるタイプがあります。前者は主に居酒屋で、後者は家庭で作られます。
手間いらずで屋台の飲み屋にうってつけ
居酒屋の味噌おでんは店によっては「どて」とも呼ばれ、両者の違いはモツが入っているかどうかで概ね同じもの。味噌はもちろんこの地域特有の豆味噌がベースで、煮込んでも風味が落ちず、むしろコクが出てよりおいしくなる豆味噌だからこそ生まれた料理といえます。
味噌のダシをはった鍋に、串に刺したタネを放り込んでおけばよく、しかもお客が鍋から直接取ることもでき、店にとっては仕込みをしておけば後は手間いらず。そのため、もともとは屋台で重宝されたメニューでした。
具によって調理時間を変えるこだわりの店も
しかし、中にはこんな手間をかける店も。
「仕込みの段階で味噌の味がつくまで下煮しておき、いったん寝かしてより味をしみ込ませます。注文が入った時点で、あらためてどての鍋に入れて温めます。具ごとに下煮の時間も仕上げの時間も変える。具によって一番おいしくなるタイミングが違うので、調理の手間もそれぞれ変えているんです」
こう語るのは「どて金」(名古屋市中区)の店長・松田幸大さん。この調理法は、メニューの種類が多いから行き着いたものだといいます。
「どてがメインのお店は、回転が早いので鍋に入れっぱなしでも煮詰まったり煮崩れたりしないのでいいのですが、うちは串焼きなどもあって注文が分散するので、ずっと煮込んだままだと大根なんかはとけてしまう。専門店じゃないからこそ考えついたやり方なんです」(松田さん)
タネは定番のとんモツ、たまご、大根、赤棒などの他、ロールキャベツなどの変わり種や、冬なら牡蠣、春ならたけのこといった季節物も。これらももちろん、それぞれの具に応じて、下煮、仕上げの時間を調整します。
家庭ではなかなかここまでの手間はかけられませんが、味噌おでんを簡単においしくできるコツを教えてもらいました。
「チューブ入りの調味味噌を使うお家が多いと思うのですが、これをダシでのばすんです。これだけでよりおいしくなりますよ」(松田さん)
名古屋人にはド定番の味噌おでんですが、店選びでも家庭での調理法でも、ちょっとだけこだわるとワンランク上のおいしさに出会えそうです。
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#名古屋めしデララバ