鉄板は1枚だけ、調理経験ゼロから復活…常連に支えられる老舗食堂「八百勇」
ドライブしていると時々目にする、入るのにちょっと勇気がいりそうなクセの強い飲食店、通称“クセツヨ食堂”。チェーン店や行列店とはまた違う、“個性的すぎる魅力”が満載です。
今回は三重県桑名市にある「八百勇(やおゆう)」を取材しました。
客のほぼ全員が注文!80年続く名物「ネギ焼き」

旧東海道の宿場町「桑名宿(くわなじゅく)」があった街道沿いにある、創業80年のクセツヨ食堂「八百勇」。創業以来、80年間不動の人気を誇る「八百勇ネギ焼き」は、客のほぼ全員が注文する看板メニューです。

粗めに切ったネギを生地の上にたっぷりのせ、紅ショウガと天かすをまぶして、しょう油を染み込ませ、焼き色が付いたら食べ頃になります。
(お客さん)
「ネギの切り方が大きめ。大きめに切ってあるからシャキシャキしておいしい」
「八百勇ネギ焼き」に並ぶ勢いの人気メニューが、熱々の鉄板で焼いたフワッフワの「玉子焼き」です。
(お客さん)
「玉子としょう油ちょっとがいい」
頬張ったお客さんも、味に大満足で笑顔を見せていました。
鉄板はたった1枚!1時間待ちも当たり前の理由

そんな人気メニューを鉄板に向かって一人で焼いてるのが、店主の鈴木江里さん(61歳)です。
(店主・鈴木江里さん)
「趣味で筋トレをやっています!30分休憩あればジム行きます!」
“クセツヨポイント”その1は、趣味が「毎日の筋トレ」だというパワフル店主。
実はこの店、小さな鉄板が1枚あるのみ。そのため、すべての焼き物メニューを江里さんがたった一人で調理しています。

“クセツヨ”ポイントその2は、気長に待てる客しか来ないこと。
店内にある16席すべてが埋まったとしても、鉄板は一枚だけ。小さな鉄板一つで調理しなければならないため、常連客は江里さんの負担になる鉄板メニューを避け、まずはおでんで一杯。1時間ほど経って、ようやくお好み焼きを注文します。
“クセツヨ”ポイントその3は、江里さんの手が空いたのを見計らって注文するのが、常連たちのマナーです。
「もう復活しないと思われていた店」3代目が暖簾を継ぐ決断

さらに、週3回通う年季の入った常連客ともなると、待ち時間の過ごし方もひと味違います。お好み焼きの待ち時間に、お店の“のれん”を引っかけるアタッチメント付きの「のれん掛け」をDIYで作成。
“クセツヨ”ポイントその4は、常連客が、店の駐車場案内の看板設置など、待ち時間を利用して店のメンテナンスまでしていることです。
(店主・鈴木江里さん)
「(DIYをする常連客・すーさんは)週に3回くらい来ます。きのうも来たし、きょうも来る!」

こんなに繁盛しているのに、なぜ小さな鉄板一つにこだわっているのか伺いました。
(店主・鈴木江里さん)
「私が働き始めたのは、3年前なんです。もう復活しないと思われていた店」
いまから80年前に、江里さんの祖母が始めた「八百勇」。2代目で、江里さんの伯母にあたる鈴子さんは、店の名物おばあちゃんとして91歳まで店に立っていました。
鈴子さんが店を離れてから亡くなるまでの3年間、「八百勇」は店を閉じていましたが、その後、江里さんが暖簾を引き継ぎ、店を復活させたのです。
レシピのない「ネギ焼き」を記憶だけを頼りに復活!

江里さんが調理経験ゼロにもかかわらず、「八百勇」復活を決断したと聞き、先代の頃から通う常連客でDIY好きのすーさんは…。
(すーさん)
「この人は何を言っとるのかなと思った。冗談で言ってると思った。けっこう本気だった」
「八百勇」は80年前から小さな鉄板一枚で調理してきたため、レシピは祖母と2代目の鈴子さんの頭の中にしかありません。看板メニューである「八百勇ネギ焼き」を復活できなければ、常連客に顔向けできません。
(店主・鈴木江里さん)
「八百勇は、根強いファンがいる店。常連客が全部知っている。味を変えてはいけない」
復活にこぎつける助けになったのが、週末にホール担当で手伝ってくれる妹・ひろみさん。記憶を頼りに試行錯誤して、「八百勇ネギ焼き」を復活させました。祖母の代から続く鉄板一枚の町の小さなお好み焼き屋さんを、江里さんがその姿をそのまま残したことで、長年通ったかつての常連客たちが戻ってきたのです。
次なる展開として、3年前に受け継いだ江里さんが考案した新メニューが、しょう油の香ばしい香り漂う「牛すじ焼そば」と、しょう油ダレとホタテの相性抜群の「くわな焼き」です。
(店主・鈴木江里さん)
「(Q桑名名物ハマグリは使わない?)やってみたけどマズかった!マズくはないけど…売るほどのものじゃない。準備が大変」
新メニューも加わって新たな客層も広がり、きょうも「八百勇」は満席です。
CBCテレビ「チャント!」2026年3月26日放送より




