立浪ドラゴンズの苦闘50試合~5つの誤算と大いなる希望の光たち

立浪ドラゴンズの苦闘50試合~5つの誤算と大いなる希望の光たち

セ・パ交流戦が始まった中の週末、名古屋市内の百貨店からの依頼があって、ドラゴンズトークショーに臨んだ。演題は「立浪革命の中間報告~愛しのドラゴンズ!2023」とした。立浪和義監督が進めているのは“改革”ではなく“革命”と、シーズン前に出版した拙著にも書いた。ちょうど、今季50試合が終わったタイミングでもあったので、ここまでの戦いの総括と今後への展望を、ファンの立場として語った。

今季「5つの誤算」とは?

「サンデードラゴンズ」より田中幹也選手©CBCテレビ

直前に3連勝したこともあって、交流戦とはいえ“首位で迎える”少しだけ明るいトークショーだった。しかし、借金も2ケタあり、リーグ最下位付近に低迷という現実は厳しい。2023年シーズンの誤算を5つ挙げた。

① ジャリエル・ロドリゲス投手が予定通り来日しなかったこと。それも開幕2日前である。亡命報道もあったが、昨シーズンの最優秀中継ぎ投手が不在ということは、大きな痛手となった。

② 田中幹也選手の右肩脱臼での離脱。立浪監督は、自らが選んだドラフト6位ルーキーに「開幕スタメン2塁」での起用まで明言するなど、大きな期待をしていた。おそらく、この田中が今季のチーム作りのキーパーソンだったはずである。

「サンデードラゴンズ」より大野雄大投手©CBCテレビ

③ エース大野雄大投手の左ひじ手術。開幕直後にクリーニング手術のために離脱した。シーズンオフに治療を終えておけばと残念に思うが、少なくとも夏までエースは不在となった。

④ 助けにならない助っ人たち。アリスティデス・アキーノ選手はじめ、新たに加わった3人の外国人野手。この内、ソイロ・アルモンテ選手は“復帰”となるが、3人とも2軍にいる現状。立浪監督自らが選んだ選手たちだけに、これも大きな誤算だろう。

⑤ 若き萌芽を支えるはずの、中堅とベテラン選手の不調。芽吹いた若手と、既存の戦力がかみ合ってこその戦い。それがうまくいかない。あらためて長年の戦力低下を憂う。

監督理想のオーダー組めず

おそらく立浪監督は、昨季の最下位からの逆襲として思い描いてきた“理想のオーダー”を、今季一度も組めていないのではないだろうか。2022年は「将来のドラゴンズを担う若手を使う」と宣言して、チャンスを与え続けた。しかし最下位を受けての新たなシーズンは「今年は勝てる選手を使う。若手にチャンスを与えたのは去年まで」と語っていた。

それが、いつのまにか「若手にチャンスのパート2」になっている。特に、得点力を期待された新外国人選手は、ひとりも1軍のグラウンドにいない。誤算も多かったものの、「チーム作りの失敗」と言わざるを得ないだろう。

嬉しい誤算~若竜の台頭

「サンデードラゴンズ」より村松開人選手©CBCテレビ

しかし、そこには予期せぬ“嬉しい誤算”が姿を見せた。新外国人選手、そして、中堅やベテラン選手の不調から、若い選手が起用されるケースが激増した。開幕スタメンではなかった細川成也選手、この現役ドラフトでドラゴンズにやってきた24歳を代表格として、ルーキーの2人、福永裕基選手と村松開人選手は、課題の二遊間を守りながら、スタメン出場を続けている。

この3選手は、昨季まではいなかった新たな「プラス3」である。トップバッターとして躍動する岡林勇希選手と、4番の座を守り続ける石川昂弥選手、この入団4年目21歳の2人もしかりレギュラーだ。投げる方では、小笠原慎之介投手と高橋宏斗投手(※「高」
は「はしごだか」)、左右の2人がローテーションを守っている。

「勝てる選手を使う」方針の「勝てる選手」が、いつのまにかイコール「若手」となっているのが、立浪ドラゴンズの現在地である。実はそれは歓迎すべきこと。若い力は、時として大きく化ける。勢いがつくと、予想外の力を発揮する。その胎動は、私たちファンの耳にも確かに届いている。

歌詞になるオーダーを!

「サンデードラゴンズ」より立浪和義監督©CBCテレビ

今後の戦いについての願いは、どうか、この若きメンバーで、迷うことなく2023年シーズンを完走してほしい。打者は規定打席数を、投手は規定投球回数を、それぞれクリアしてもらいたい。そんな腹を括った起用を、ベンチには期待したい。

合わせて、これまでも当コラムで何度も書いてきたが、落ち着いたオーダーが見たい。開幕2戦目早々からスタメンが入れ替わるなど、いまだに「立浪ドラゴンズ2023年のスタンダード」を見せてもらっていない。打順も、そして、守備位置も、若い選手が多いだけに、ある程度は固定して戦ってほしい。応援歌『燃えよドラゴンズ!』、もし2023年バージョンが作られるとしても、現状では歌詞作りに迷ってしまうだろう。

劇的なサヨナラ勝ちがあれば、いきなり、1点も取れない惨敗もある。それでも、ペナントレースはまだ90試合以上もあり、戦いは続く。開幕時に立浪監督が選手に呼びかけたように「強い気持ちで」、チームがそれを忘れなければ、ファンは熱い応援を続けるはずである。                         
  
【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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