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キャンプイン!ドラゴンズファンもエールを送るカープ長野久義選手の野球意地道

キャンプイン!ドラゴンズファンもエールを送るカープ長野久義選手の野球意地道
論説室コラム

キャンプイン!ドラゴンズファンもエールを送るカープ長野久義選手の野球意地道

 2019年2月1日(金) 10:10
北辻 利寿
北辻 利寿

プロ野球は12球団一斉にキャンプイン。いよいよ球春到来である。
新生・中日ドラゴンズも沖縄の北谷町と読谷村にある2つの球場で2019年シーズンへスタートを切った。ファンにとっては待ちに待った楽しみな季節である。

ドラゴンズどの選手が好きですか?

プロ野球どこのチームのファンも同じだと思うが、ご贔屓チームでどの選手が好きかと会話をする。ドラゴンズファンも同じである。自分は誰々が好きと即答する人も多いが、一方で個々の選手を選ばず「全員」と答えるファンもいる。どちらかと言えば私は後者なのだが、それだけに他球団のユニホームを着ている選手は、以前ドラゴンズに所属していたからと言ってそれほど応援はしない。ましてドラゴンズにゆかりがない他球団の選手なんて。しかし今季は少し変化がある。広島東洋カープの長野久義選手がとても気になる。

長野選手のジャイアンツ愛

讀賣ジャイアンツに広島カープからFA移籍した丸佳浩選手の人的補償として、カープが長野久義選手を指名したニュースは衝撃だった。
28人のプロテクト選手から漏れていたため、FA制度のルールに沿った指名である。しかしそれが長野選手だったことは、他球団のファンとしても驚いた。
真っ先に思い出すのは、長野選手がジャイアンツに入団した経緯である。長野選手は日本大学4年時の2006年(平成18年)にドラフト会議で北海道日本ハムファイターズに指名されるも入団を拒否、社会人のホンダに進む。その2年後の2008年には千葉ロッテマリーンズの指名をまたも拒否してホンダに残留。いずれも「ジャイアンツに入りたい」ためだった。
翌2009年にジャイアンツから1位指名を受けて、三度目の正直で念願の巨人入りを果たした。初志貫徹である。

とにかく巨人に入団したい選手たち

ジャイアンツに入りたいという思いから、ドラフトで指名されながらも他球団に入団しなかった選手としては、真っ先に“空白の一日”騒動で知られる江川卓投手が浮かぶ。
その後、元木大介選手、内海哲也投手、そして記憶に新しい菅野智之投手ら有力選手が続いた。
2度にわたって他球団の指名を拒否した長野選手のジャイアンツへの思いの強さは、高校そして大学それぞれの卒業時に巨人入りをめざした江川投手を思い出させる。そんなジャイアンツ愛にあふれた選手がチームを去る。プロ野球がルールに沿って運営されていて、契約社会である以上、これはやむを得ないことである。同時に、原辰徳氏を三度目の監督に迎えて改革を進めるジャイアンツのチーム戦略からも、計算の範疇であったはずだ。
それに対してコメントはしないが、長野選手に対しては言いたいことがある。愛するジャイアンツを去りカープへの移籍が決まってからの言動は、とにかく見事だった。

長野の優しさとプライドに拍手!

移籍発表直後の「3連覇の強い広島に選んでいただけ選手冥利に尽きる。ジャイアンツと対戦することを楽しみにしている」というコメントは、一般的な大人の対応だなと思った。感心したのは背番号を決める際のカープ球団とのやり取りである。
長野選手はジャイアンツでは「7」を付けていた。カープからは「5」と、丸選手が付けていて空き番号となった「9」の2つを提示されたそうだ。
長野選手は「9番は将来、野間(峻祥)が一人前になった時に付けたらいい」こう語り、背番号「5」を選んだそうだ。この時点で、新しいチームメイトとなる後輩外野手への思いやりを口にできる長野選手。ジャイアンツを去る淋しさはそんな簡単には癒えないはずだが、その姿勢に野球人・長野の優しさとプライドを見た。
1月23日、マツダスタジアムで行われた入団会見での晴れやかな笑顔も実に清々しいものだった。

思い出す小林繁と西本聖の熱投

今季の開幕戦、広島カープの相手はジャイアンツ。背番号「5」の赤いユニホームを着た長野選手はいきなり古巣と対戦する。
長年のプロ野球ファンとしては、今回の長野選手を、かつて思いを遂げてジャイアンツ入りした江川投手の“交換相手”として巨人から阪神タイガースに移籍していった故・小林繁投手を思い出す。移籍した年の小林投手は22勝で最多勝のタイトルを獲得し沢村賞も受賞、古巣ジャイアンツには8連勝した。ドラゴンズファンとしてはもうひとり、中尾孝義捕手とのトレードで巨人から中日に移籍し、平成最初の年だった1989年にいきなり20勝をあげた西本聖投手が懐かしい。そのシーズンにジャイアンツからは3つの完投を含む5勝2敗。2人の活躍の源には古巣ジャイアンツへの意地があったと拝察する。

勝負の世界では世話になった相手に勝つことを「恩返し」という。長野選手の恩返しを名古屋の地からもしっかり見つめたい。
しかし開幕シリーズの次のカードはナゴヤドームでのドラゴンズ戦となる。
今季の長野選手に「意地を見せて」とエールは送ったが、ドラゴンズ戦だけはどうかお手柔らかにと願いたい。

【CBCテレビ論説室長・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。

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